MANKAIカンパニーとの出会い、運命の出会い
夢より素敵な
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最推しが目の前にいる。
目の前で今日の紅茶を訊いている。
今すぐにでもTwitterを開いて叫びたい。
「今日のお勧めはアップルティーだそうだよ。」
「そうですか。」
好奇心に負けた。あの日手渡された名刺にあった番号に、一週間後、つい電話をかけてしまった。
『どなただったかな?』
『あっ、あのっ、先日劇場で名刺をいただいたっ、』
『あぁ、キミか。』
コミュ障、ここに極まれり。そんな電話だったと思う。それでも最推しは優しく語りかけてくれて、二回目の電話は向こうから三日後にかかってきた。表示された名前に携帯を落としかけるほどには驚いた。
だって、最推しからの電話だ。
それから更に一週間後、電話の回数で言えば計四回。ついにヌン茶に誘われた。
「キミは珈琲派だったかな?」
「いえ、紅茶好きです。」
珈琲はやっと最近ブラックが飲めるようになったお子ちゃま舌だ。お勧めだと言われたアップルティーのようなフレーバーティーは大好きで、特に銘柄などに明るいわけではないがコンビニに並んでいれば買ってしまう。
「それはよかった。ここはワタシのお気に入りの店でね。」
最推しはペラペラと喋ること喋ること。だが、話が上手くとても楽しい。こちらが相槌を打つタイミングも図られているようで、スムーズに話が進む。ただ、度々難解な詩を取り入れるため、頭にクエスチョンマークが浮かぶこともあるが。
(恋人相手でもこうなのかな?)
私もいい歳なので、こういった役者にだってファンに見せられない部分があることくらいは知っている。変わり者だが顔はいいので、それなりにモテるだろう。私は推しの恋愛事情には寛容な方だと思う。推しが幸せならそれでいい。私はただのオタク。
「聞いているかね?」
「あー、はい。」
「キミのことを考えると苦しくなるのだが、キミの声を聴かない日はもっと苦しくてね。」
(んん?)
話の内容がなんだかおかしい。初恋も済ませていないような子どもではないので、あまり勘違いをさせないでほしい。推しと結ばれるだなんて夢のような話は二次創作で充分だ。
「キミに会いたいと密くん・・・あぁ、寮の同室の者なのだが、彼に言うと会えばいいではないかと言うのだよ。」
「はぁ。」
「そんな簡単にいくものかとも思ったのだが、駄目元でも声をかけてみるものだね。キミはこうして応じてくれた。」
「まぁ。」
「・・・キミはどうだろうか?」
(どう、って。)
推しに会いたいと思うのはオタクだから。推しではなく、有栖川誉に会いたいと、私は考えただろうか?・・・考えた。毎日の家事の中、気を抜けば彼を想った。
「私は・・・、」
ストローから口離し、顔を上げると、満面の笑みを浮かべた最推し・・・有栖川誉がいた。
「初めてワタシの目を見てくれたね。」
その瞬間、顔に熱が集まるのを感じた。察しのいい私は、幸か不幸かわかってしまったから。最推し、有栖川誉・・・この男は愛を知らない。いや、愛情深い男ではあると思う。そうではなくて、恋愛というものの本質を理解していない。
(トラウマでもあるのだろうか?)
彼のそのトラウマは、のちに知ることになるのだが。
(有栖川誉、沼だなぁ。)
「・・・綺麗な瞳ですね。」
「ふむ?」
初めてまじまじと見た彼の瞳は、綺麗な赤い色をしていた。赤い瞳の意味は『激烈』。騒々しくはあるが、この男でも人を愛せば激しく求めたりもするのだろうか。そんないかがわしいことまで考えてしまった。
「・・・キミは赤い瞳の意味を知っているだろうか?」
あぁ、マズいな。彼の本業は詩人なのだった。先刻から散々披露していたではないか。
「その顔は知っている顔だね?」
「・・・そうですね。」
「ワタシは知りたいのだよ。」
「知りたい?」
「ワタシが、この瞳の色の意味の通りになにかに激しくなれるのか。」
「・・・、」
「・・・それがキミだと、ワタシは嬉しい。」
初恋も済ませていない子どもではない。なにも知らない振りをしていられるような歳でもない。私も、彼も。
気づけば私はテーブルに置かれた彼の手に自分の手を重ねていて、嵌められたな、なんて思っていた。それは彼にか、彼の同室の彼にかはわからないけれど。
20181118
目の前で今日の紅茶を訊いている。
今すぐにでもTwitterを開いて叫びたい。
「今日のお勧めはアップルティーだそうだよ。」
「そうですか。」
好奇心に負けた。あの日手渡された名刺にあった番号に、一週間後、つい電話をかけてしまった。
『どなただったかな?』
『あっ、あのっ、先日劇場で名刺をいただいたっ、』
『あぁ、キミか。』
コミュ障、ここに極まれり。そんな電話だったと思う。それでも最推しは優しく語りかけてくれて、二回目の電話は向こうから三日後にかかってきた。表示された名前に携帯を落としかけるほどには驚いた。
だって、最推しからの電話だ。
それから更に一週間後、電話の回数で言えば計四回。ついにヌン茶に誘われた。
「キミは珈琲派だったかな?」
「いえ、紅茶好きです。」
珈琲はやっと最近ブラックが飲めるようになったお子ちゃま舌だ。お勧めだと言われたアップルティーのようなフレーバーティーは大好きで、特に銘柄などに明るいわけではないがコンビニに並んでいれば買ってしまう。
「それはよかった。ここはワタシのお気に入りの店でね。」
最推しはペラペラと喋ること喋ること。だが、話が上手くとても楽しい。こちらが相槌を打つタイミングも図られているようで、スムーズに話が進む。ただ、度々難解な詩を取り入れるため、頭にクエスチョンマークが浮かぶこともあるが。
(恋人相手でもこうなのかな?)
私もいい歳なので、こういった役者にだってファンに見せられない部分があることくらいは知っている。変わり者だが顔はいいので、それなりにモテるだろう。私は推しの恋愛事情には寛容な方だと思う。推しが幸せならそれでいい。私はただのオタク。
「聞いているかね?」
「あー、はい。」
「キミのことを考えると苦しくなるのだが、キミの声を聴かない日はもっと苦しくてね。」
(んん?)
話の内容がなんだかおかしい。初恋も済ませていないような子どもではないので、あまり勘違いをさせないでほしい。推しと結ばれるだなんて夢のような話は二次創作で充分だ。
「キミに会いたいと密くん・・・あぁ、寮の同室の者なのだが、彼に言うと会えばいいではないかと言うのだよ。」
「はぁ。」
「そんな簡単にいくものかとも思ったのだが、駄目元でも声をかけてみるものだね。キミはこうして応じてくれた。」
「まぁ。」
「・・・キミはどうだろうか?」
(どう、って。)
推しに会いたいと思うのはオタクだから。推しではなく、有栖川誉に会いたいと、私は考えただろうか?・・・考えた。毎日の家事の中、気を抜けば彼を想った。
「私は・・・、」
ストローから口離し、顔を上げると、満面の笑みを浮かべた最推し・・・有栖川誉がいた。
「初めてワタシの目を見てくれたね。」
その瞬間、顔に熱が集まるのを感じた。察しのいい私は、幸か不幸かわかってしまったから。最推し、有栖川誉・・・この男は愛を知らない。いや、愛情深い男ではあると思う。そうではなくて、恋愛というものの本質を理解していない。
(トラウマでもあるのだろうか?)
彼のそのトラウマは、のちに知ることになるのだが。
(有栖川誉、沼だなぁ。)
「・・・綺麗な瞳ですね。」
「ふむ?」
初めてまじまじと見た彼の瞳は、綺麗な赤い色をしていた。赤い瞳の意味は『激烈』。騒々しくはあるが、この男でも人を愛せば激しく求めたりもするのだろうか。そんないかがわしいことまで考えてしまった。
「・・・キミは赤い瞳の意味を知っているだろうか?」
あぁ、マズいな。彼の本業は詩人なのだった。先刻から散々披露していたではないか。
「その顔は知っている顔だね?」
「・・・そうですね。」
「ワタシは知りたいのだよ。」
「知りたい?」
「ワタシが、この瞳の色の意味の通りになにかに激しくなれるのか。」
「・・・、」
「・・・それがキミだと、ワタシは嬉しい。」
初恋も済ませていない子どもではない。なにも知らない振りをしていられるような歳でもない。私も、彼も。
気づけば私はテーブルに置かれた彼の手に自分の手を重ねていて、嵌められたな、なんて思っていた。それは彼にか、彼の同室の彼にかはわからないけれど。
20181118
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