MANKAIカンパニーとの出会い、運命の出会い
S.O.Sロマンティック
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暫くして、私と有栖川誉は正式に交際を開始した。最推しが恋人になった。
私は夏はほぼ毎日、冬は二日に一回のペースで髪を洗う。腰まであった髪は今年の三月にばっさりと切った。恋人は私の髪が長かった姿を知らないので、早く伸びればいいのにと髪を梳く。今は肩を過ぎたくらいまで伸びた。
どうやら私の髪を触ることが好きなようで、髪を洗った日は進んで乾かしてくれる。いつの間にか私も彼に合わせて、質のいいシャンプーを買うようになっていた。元々ヘアケア商品には拘りがあり色々と試していたのだが、最近は美容室でも使われている有名ブランドのものに変えた。
しっかりヘアオイルも使ってケアしてくれる、甲斐甲斐しい恋人だ。私が以前付き合っていた恋人たちはそれを嫌がっていて避けられていたのだが、それを話すと「紳士的ではないね」とバッサリ切り捨てた。
「今日もお願いしますね。」
「任せたまえ。」
ドライヤーの音にも掻き消されないよく通る声も、音に紛れる私の声を聞き取れる耳も好きだ。
「昔から好きな俳優なんですけど、歳を重ねるにつれて深みのあるいい男になってて、ファンとしては感慨深いです。」
「そうかい、そうかい。」
今日も一通りケアが終わると、「だが」と言って私の髪を一房取り、
「その男はキミの髪にこうして触れることはないだろう?」
と口付けた。艶やかな黒髪だと、いつも褒める私の髪を愛しげに梳かれると好きが溢れる。なんだ、一丁前に嫉妬してたのか。抱くぞ。
交際が始まり一ヶ月以上経つが、まだセックスどころかキスもしていない。どこまで紳士ぶるつもりなのか。健全な男ならしたいと思わないのか。なんて思いながらも、大事にされているのだと思えば許せてしまう。
だがお互いにアラサーで、今時中学生だってここまでプラトニックなお付き合いをしているカップルもいないだろう。なにより、私は自分のことをしばしば『悪い大人のおねーさん』と称することがある。なんなら私が抱いたっていいのだ。それを友達に言うと「紳士的な誉さんに対して男前受けって、思考がBLなのかしらね」と言われる。人生の半分以上を腐女子として生きているのだから仕方ない。
「あぁ、そうだ。」
ごそごそとポケットを探っていたと思えば、私の手に一本の口紅を乗せてきた。このブランドは、シャンプーのブランドと同じものだ。
「キミに似合うと思ってね。」
真っ赤な口紅だった。赤って、あんたのイメージカラーじゃなかった?なんてことは口には出さず、ありがとうと伝えた。
男性から口紅をもらったのは初めてだった。この男はその意味を知っているのだろうか?男が女に口紅を贈る意味だ。『悪い大人のおねーさん』の私は、早速その口紅を塗り「似合う?」と彼に迫ってしまった。
「ねぇ、誉って呼ばれたい?それともアリスって呼ばれたい?」
アリス、とは、彼が劇団員から呼ばれているニックネームだ。私は『悪い大人のおねーさん』だから、わかりきっているのに意地悪にも訊いてしまう。彼に今までこんな風に攻めたことがなかったので、彼は少し戸惑っているように見える。
「随分と印象が変わってしまった。」
「嫌い?」
「いや、・・・それがキミの本性かい?」
「あなたより五つも年上の、『悪い大人のおねーさん』だからね。」
「そうか。裏表なく接してくれているのだと思っていたが、そんな妖艶な一面もあったのだね。」
「ねぇ、どっち?」
もう少しでキスできる程の距離で囁くと、「降参だ」と言ってぐっと力強く私を抱き寄せ、「名前で呼んでくれるかい?深雪さん」と私の首元に顔を埋めた。
「誉は可愛いね。」
「・・・まるで東さんのようなことを言うね。」
「うん、多分タイプ近い。」
最初に東さんに惹かれた理由はきっとそこだろう。どこか自分に似ていたから惹かれた。ナルシストと言われても仕方ないと思っているが、誉は笑った。
「あ、そうだ。」
「むう?」
折角赤い口紅を塗ったのだ、やってみたいことがあった。
誉の顔を上げさせて、ちゅっと軽いリップ音を立てて満足。一度でいいからほっぺにキスマークをつけてみたかったのだ。シャツにつけるのは洗濯の手間が可哀想だったのでやめた。
「ふふ。」
「満足かね?」
「うん。」
真っ赤な唇を拭い、今度は私が誉の首元に顔を埋める。誉はいつもいい匂いがして、好きなのだ。
暫くそうしていると、誉の長い指が私の左手薬指をなぞる。擽ったくて逃げても追いかけてきて、笑ってしまったら「笑いごとではないよ」と不機嫌そうに言われた。
「ごめんごめん。ふふ。」
「まったく、年上ぶるのはいいが揶揄わないでくれないか。」
拗ねる誉が可愛くて、『悪い大人のおねーさん』はやめられないなと思いながら、何も塗られていない唇でキスを贈った。
─────お返しはこの唇でその唇に少しづつ。
20181107
私は夏はほぼ毎日、冬は二日に一回のペースで髪を洗う。腰まであった髪は今年の三月にばっさりと切った。恋人は私の髪が長かった姿を知らないので、早く伸びればいいのにと髪を梳く。今は肩を過ぎたくらいまで伸びた。
どうやら私の髪を触ることが好きなようで、髪を洗った日は進んで乾かしてくれる。いつの間にか私も彼に合わせて、質のいいシャンプーを買うようになっていた。元々ヘアケア商品には拘りがあり色々と試していたのだが、最近は美容室でも使われている有名ブランドのものに変えた。
しっかりヘアオイルも使ってケアしてくれる、甲斐甲斐しい恋人だ。私が以前付き合っていた恋人たちはそれを嫌がっていて避けられていたのだが、それを話すと「紳士的ではないね」とバッサリ切り捨てた。
「今日もお願いしますね。」
「任せたまえ。」
ドライヤーの音にも掻き消されないよく通る声も、音に紛れる私の声を聞き取れる耳も好きだ。
「昔から好きな俳優なんですけど、歳を重ねるにつれて深みのあるいい男になってて、ファンとしては感慨深いです。」
「そうかい、そうかい。」
今日も一通りケアが終わると、「だが」と言って私の髪を一房取り、
「その男はキミの髪にこうして触れることはないだろう?」
と口付けた。艶やかな黒髪だと、いつも褒める私の髪を愛しげに梳かれると好きが溢れる。なんだ、一丁前に嫉妬してたのか。抱くぞ。
交際が始まり一ヶ月以上経つが、まだセックスどころかキスもしていない。どこまで紳士ぶるつもりなのか。健全な男ならしたいと思わないのか。なんて思いながらも、大事にされているのだと思えば許せてしまう。
だがお互いにアラサーで、今時中学生だってここまでプラトニックなお付き合いをしているカップルもいないだろう。なにより、私は自分のことをしばしば『悪い大人のおねーさん』と称することがある。なんなら私が抱いたっていいのだ。それを友達に言うと「紳士的な誉さんに対して男前受けって、思考がBLなのかしらね」と言われる。人生の半分以上を腐女子として生きているのだから仕方ない。
「あぁ、そうだ。」
ごそごそとポケットを探っていたと思えば、私の手に一本の口紅を乗せてきた。このブランドは、シャンプーのブランドと同じものだ。
「キミに似合うと思ってね。」
真っ赤な口紅だった。赤って、あんたのイメージカラーじゃなかった?なんてことは口には出さず、ありがとうと伝えた。
男性から口紅をもらったのは初めてだった。この男はその意味を知っているのだろうか?男が女に口紅を贈る意味だ。『悪い大人のおねーさん』の私は、早速その口紅を塗り「似合う?」と彼に迫ってしまった。
「ねぇ、誉って呼ばれたい?それともアリスって呼ばれたい?」
アリス、とは、彼が劇団員から呼ばれているニックネームだ。私は『悪い大人のおねーさん』だから、わかりきっているのに意地悪にも訊いてしまう。彼に今までこんな風に攻めたことがなかったので、彼は少し戸惑っているように見える。
「随分と印象が変わってしまった。」
「嫌い?」
「いや、・・・それがキミの本性かい?」
「あなたより五つも年上の、『悪い大人のおねーさん』だからね。」
「そうか。裏表なく接してくれているのだと思っていたが、そんな妖艶な一面もあったのだね。」
「ねぇ、どっち?」
もう少しでキスできる程の距離で囁くと、「降参だ」と言ってぐっと力強く私を抱き寄せ、「名前で呼んでくれるかい?深雪さん」と私の首元に顔を埋めた。
「誉は可愛いね。」
「・・・まるで東さんのようなことを言うね。」
「うん、多分タイプ近い。」
最初に東さんに惹かれた理由はきっとそこだろう。どこか自分に似ていたから惹かれた。ナルシストと言われても仕方ないと思っているが、誉は笑った。
「あ、そうだ。」
「むう?」
折角赤い口紅を塗ったのだ、やってみたいことがあった。
誉の顔を上げさせて、ちゅっと軽いリップ音を立てて満足。一度でいいからほっぺにキスマークをつけてみたかったのだ。シャツにつけるのは洗濯の手間が可哀想だったのでやめた。
「ふふ。」
「満足かね?」
「うん。」
真っ赤な唇を拭い、今度は私が誉の首元に顔を埋める。誉はいつもいい匂いがして、好きなのだ。
暫くそうしていると、誉の長い指が私の左手薬指をなぞる。擽ったくて逃げても追いかけてきて、笑ってしまったら「笑いごとではないよ」と不機嫌そうに言われた。
「ごめんごめん。ふふ。」
「まったく、年上ぶるのはいいが揶揄わないでくれないか。」
拗ねる誉が可愛くて、『悪い大人のおねーさん』はやめられないなと思いながら、何も塗られていない唇でキスを贈った。
─────お返しはこの唇でその唇に少しづつ。
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