MANKAIカンパニーとの出会い、運命の出会い
夢より素敵な
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「もうすっかり春だねー。」
「そうだねぇ。」
陽がたっぷり入る窓際。花粉症の彼女は外に出るのは嫌だと言うが陽は浴びたいと言う。この窓際はちょうどよかった。
「今日もありがとう。」
ここ最近、私はできるだけ毎日彼女のためにジャスミンティーを淹れる。花粉症の、特に鼻の症状に効くのだそうだ。付け足したかのように彼女の持病も和らげるのだと彼女は苦笑した。私は彼女の持病が酷かった時のことを知らないが、なかなか壮絶だったらしい。
「なに、ワタシも飲むからね。」
「よかったね、お茶を嗜む趣味が一致してて。」
「本当に。」
珈琲も飲めるが、私は紅茶派だ。彼女も珈琲をブラックで飲めるようになったとはしゃいではいたが、店で注文する際は大体紅茶を選ぶ。珈琲を売りにしている店であれば別だが。
お陰で茶葉を選ぶ際には彼女を思い出し、こんなフレーバーティーなどは好みだろうかなどと思いを馳せる。どこにいても彼女は私の中にひっそりと、それでいてしっかり自分を主張する。
「実はジャスミンティーって昔は食わず嫌いだったの。」
「そうなのかね?自然に飲んでいるから気づかなかった。」
「ハーブって香りが独特でしょ?それで苦手に感じてたの。」
「今はハーブティー大好きよ」と微笑んで見せる彼女は、陽を浴びてキラキラとしている。出会った当初、どこか遠くを見つめる彼女の瞳の奥の輝きに多分恋をした。もう今月で交際も半年になる。
一足早いホワイトデーは、彼女が好みそうな甘いワンピースに彼女のパーソナルカラーに合いそうな色の入ったコスメ(詳しくないので莇くんに相談したものだが)、彼女をイメージした時に浮かぶ甘い香りの香水に彼女の好きな猫のデザインのペンダント。どれも彼女を美しく輝かせるためのものばかりだった。過去の彼女の恋人の誰よりも、彼女を輝かせるのは私でありたかった。笑える話だがそんな独占欲も含んで。
「香水をつけてくれているのだね?」
「うん。スティックタイプの練り香水はいいね。使いやすいし、このベリー&バニラの香りすごく好き。」
そう言って先程の微笑みよりも無邪気に笑う。
ホワイトデーを早めた理由は、その日、彼女が独りで泣いていたからだ。打ち合わせが長引いた上、一旦寮に寄ってから帰宅したのだが、インターフォンを鳴らしても彼女は出てこない。遅くなる連絡はしたので、普段ならばインターフォンの音が聞こえない二階ではなくすぐに出迎えられる一階にいるはずなのだが。それは私を焦らせた。合鍵で中に入ると、やはり一階には人の気配はない。二階へ向かうと彼女の部屋から灯りが漏れている。二階にはそれぞれの部屋と寝室、そして今私たちが過ごしているベランダに面した部屋がある。彼女の部屋からは灯りと、微かに音が漏れていた。
『深雪さん、』
控えめにノックをして中に声をかけ部屋に入ると、彼女の大きな瞳からは涙が溢れている。焦りは的中した。彼女は独りであることを好まない。
『どうしたんだい?』
『ちょっと、思い出し泣き?』
溢れる涙はそのままに、無理して笑顔を作っているのがわかる。
『音源引っ張り出して聴いてたら、当時を思い出しちゃって。』
彼女の手元には数枚のディスクがある。彼女は未だにMDを愛用しているのだ。
『大好きだから別れたかった・・・、』
『?』
『過去の私の恋愛観。大好きだから、だから別れたかったんだ。』
その言葉が私の心を抉る。まさか、彼女は私との関係を終わらせようとしたいのだろうか?それはすぐに彼女に伝わり、彼女は続けた。
『今はね、これからもどうぞよろしくねって恋愛観に変わったの。』
『・・・、』
『こんな私だけど、笑って頷いて?』
『そういった曲があるのかね?』
『うん、そう。』
『そうか、ワタシの方こそよろしく頼むよ。』
できるだけの笑顔を作り、彼女の頭を撫でてやると、私の琴線に触れるフレーズが流れた。
泣くほど喜ばせてみたい
君の幸せはいつだって僕が実現してあげる
成程、喜びには笑顔だけでなく涙もあるのか。表現者でありながらそれは盲点だった。彼女の幸せを実現するのだって、私でなくては私が嫌だ。そう思い、「少し待っていておくれ」と声をかけて寝室に向かった。背の低い彼女には届かない場所にしまっておいた紙袋を手に取り、すぐに彼女の元へ戻ると、一拍置いて彼女は笑った。どうやらこの紙袋の存在は知っていたようだ。
『開けてごらん?』
『うわ・・・、』
『初めてのホワイトデーだし、半年記念だから加減がわからなくてね。』
沢山の贈り物の中に一つでも彼女の気に入る物があればいい、その程度だったのに、彼女は全てに喜んでくれた。嬉しい誤算だった。そういえば彼女は私が贈った物に対して文句一つ言ったことがない。詩の一節でも笑いながら受け取ってくれる。
「あったかいね。」
外を眺める彼女の胸元には、黄昏色の空を模したペンダントトップが光る。その中には猫がいて、ホワイトデーに贈った物だとわかる。
「そうだね。だが、こうも暖かいと・・・、」
「ふわあぁぁぁ」と、欠伸が重なる。お互いに顔を見合わせて同時に噴き出すと、愛しさでどうにかなってしまいそうだと思った。彼女も同じ気持ちであればいいのにと願うが、多分きっと、そんなところも似ているのだろう。
20190312
「そうだねぇ。」
陽がたっぷり入る窓際。花粉症の彼女は外に出るのは嫌だと言うが陽は浴びたいと言う。この窓際はちょうどよかった。
「今日もありがとう。」
ここ最近、私はできるだけ毎日彼女のためにジャスミンティーを淹れる。花粉症の、特に鼻の症状に効くのだそうだ。付け足したかのように彼女の持病も和らげるのだと彼女は苦笑した。私は彼女の持病が酷かった時のことを知らないが、なかなか壮絶だったらしい。
「なに、ワタシも飲むからね。」
「よかったね、お茶を嗜む趣味が一致してて。」
「本当に。」
珈琲も飲めるが、私は紅茶派だ。彼女も珈琲をブラックで飲めるようになったとはしゃいではいたが、店で注文する際は大体紅茶を選ぶ。珈琲を売りにしている店であれば別だが。
お陰で茶葉を選ぶ際には彼女を思い出し、こんなフレーバーティーなどは好みだろうかなどと思いを馳せる。どこにいても彼女は私の中にひっそりと、それでいてしっかり自分を主張する。
「実はジャスミンティーって昔は食わず嫌いだったの。」
「そうなのかね?自然に飲んでいるから気づかなかった。」
「ハーブって香りが独特でしょ?それで苦手に感じてたの。」
「今はハーブティー大好きよ」と微笑んで見せる彼女は、陽を浴びてキラキラとしている。出会った当初、どこか遠くを見つめる彼女の瞳の奥の輝きに多分恋をした。もう今月で交際も半年になる。
一足早いホワイトデーは、彼女が好みそうな甘いワンピースに彼女のパーソナルカラーに合いそうな色の入ったコスメ(詳しくないので莇くんに相談したものだが)、彼女をイメージした時に浮かぶ甘い香りの香水に彼女の好きな猫のデザインのペンダント。どれも彼女を美しく輝かせるためのものばかりだった。過去の彼女の恋人の誰よりも、彼女を輝かせるのは私でありたかった。笑える話だがそんな独占欲も含んで。
「香水をつけてくれているのだね?」
「うん。スティックタイプの練り香水はいいね。使いやすいし、このベリー&バニラの香りすごく好き。」
そう言って先程の微笑みよりも無邪気に笑う。
ホワイトデーを早めた理由は、その日、彼女が独りで泣いていたからだ。打ち合わせが長引いた上、一旦寮に寄ってから帰宅したのだが、インターフォンを鳴らしても彼女は出てこない。遅くなる連絡はしたので、普段ならばインターフォンの音が聞こえない二階ではなくすぐに出迎えられる一階にいるはずなのだが。それは私を焦らせた。合鍵で中に入ると、やはり一階には人の気配はない。二階へ向かうと彼女の部屋から灯りが漏れている。二階にはそれぞれの部屋と寝室、そして今私たちが過ごしているベランダに面した部屋がある。彼女の部屋からは灯りと、微かに音が漏れていた。
『深雪さん、』
控えめにノックをして中に声をかけ部屋に入ると、彼女の大きな瞳からは涙が溢れている。焦りは的中した。彼女は独りであることを好まない。
『どうしたんだい?』
『ちょっと、思い出し泣き?』
溢れる涙はそのままに、無理して笑顔を作っているのがわかる。
『音源引っ張り出して聴いてたら、当時を思い出しちゃって。』
彼女の手元には数枚のディスクがある。彼女は未だにMDを愛用しているのだ。
『大好きだから別れたかった・・・、』
『?』
『過去の私の恋愛観。大好きだから、だから別れたかったんだ。』
その言葉が私の心を抉る。まさか、彼女は私との関係を終わらせようとしたいのだろうか?それはすぐに彼女に伝わり、彼女は続けた。
『今はね、これからもどうぞよろしくねって恋愛観に変わったの。』
『・・・、』
『こんな私だけど、笑って頷いて?』
『そういった曲があるのかね?』
『うん、そう。』
『そうか、ワタシの方こそよろしく頼むよ。』
できるだけの笑顔を作り、彼女の頭を撫でてやると、私の琴線に触れるフレーズが流れた。
泣くほど喜ばせてみたい
君の幸せはいつだって僕が実現してあげる
成程、喜びには笑顔だけでなく涙もあるのか。表現者でありながらそれは盲点だった。彼女の幸せを実現するのだって、私でなくては私が嫌だ。そう思い、「少し待っていておくれ」と声をかけて寝室に向かった。背の低い彼女には届かない場所にしまっておいた紙袋を手に取り、すぐに彼女の元へ戻ると、一拍置いて彼女は笑った。どうやらこの紙袋の存在は知っていたようだ。
『開けてごらん?』
『うわ・・・、』
『初めてのホワイトデーだし、半年記念だから加減がわからなくてね。』
沢山の贈り物の中に一つでも彼女の気に入る物があればいい、その程度だったのに、彼女は全てに喜んでくれた。嬉しい誤算だった。そういえば彼女は私が贈った物に対して文句一つ言ったことがない。詩の一節でも笑いながら受け取ってくれる。
「あったかいね。」
外を眺める彼女の胸元には、黄昏色の空を模したペンダントトップが光る。その中には猫がいて、ホワイトデーに贈った物だとわかる。
「そうだね。だが、こうも暖かいと・・・、」
「ふわあぁぁぁ」と、欠伸が重なる。お互いに顔を見合わせて同時に噴き出すと、愛しさでどうにかなってしまいそうだと思った。彼女も同じ気持ちであればいいのにと願うが、多分きっと、そんなところも似ているのだろう。
20190312
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