MANKAIカンパニーとの出会い、運命の出会い
S.O.Sロマンティック
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『冬組の最新のビジュアル見た?』
暫くして、もう冬組の第五回公演の時期が来た。旗揚げ公演を観たと思ったらもう第五回公演か。まぁ、私が観たのは再演だったけれど。全組、第四回公演から入ったので、時間の感覚が他とズレているのは仕方ない。
スマホをタップし公式サイトを見ると、今回は時代劇らしい。時代劇もまぁ悪くないかな。主演は高遠丞、元GOD座のトップだった役者だ。
『ガイさんが準主演なんだね。』
最近入った、大人の色気のある役者だ。春組のシトロンくんの関係者らしい。
友達の都合に合わせて、初日と千秋楽のチケットを手に入れた。普段はすっぴんだが、観劇の際には薄く化粧をするようになった。いい傾向だと親は言う。
『楽しみだね。』
『この日のために髪もちゃんとしてきた。』
『みゆちゃん、観劇する時は気合い入ってるよね。』
『あの劇団のファンは化粧もまともにできない、とか思われたくないからね。』
『あはは。』
そうこうする間に劇は始まり、私はやはり東さんの色気にやられた。第四回公演からメイクもよくなったと評判で、東さんは美しかった。
だが次の瞬間、ある人物の登場で全てを持っていかれた。
(え、なにあれ。)
(あの人、あんなんだっけ?)
(まって。)
(え、すき。)
(まって。)
(まって!!!!!)
完全に語彙力を失ったオタクだ。
その人物は私好みの長髪で、声もよく通る。東さんを追っていた視線は、いつの間にかその人物に集中してしまった。
またも、ほうっとなっている私を友達がつつく。
『東さん、綺麗だったね。』
『うん・・・、』
『?どうしたの?』
『あの人、あんなんだっけ?』
『あぁ、女形は初めてだったかな。』
『違う、東さんじゃなくて、』
何故この劇団はブロマイドを扱わないのか。オタク、全力で集めるのに。
全力で、有栖川誉を。
ファンサービスのために出ていた役者たちはキラキラしていた。私の脳内ではホモセックスの妄想が繰り広げられていたが。
『キミ、』
『・・・。』
『聞いているのかね?』
『・・・ぇ、へ?』
目の前にいたのは、一瞬で私の最推しになった有栖川誉がいた。ホモセックスは消え去り、私好みの長髪イケメンがいる。オタクの語彙力は二歳児にまで落ちた。
『役者が目の前にいるのに、どこを見ているのかね?』
『はぁ・・・、』
『まぁいい。観てくれてありがとう。』
『いえ、こちらこそ・・・?』
『おかしな人だね。』
(あ、近くで見るとめちゃくちゃ美形やん。)
それが有栖川誉とのファーストコンタクト。
それからは千秋楽の日まで暇さえあれば有栖川誉の情報を調べていた。なんと五つも年下らしい。友達も「誉さんとはねぇ」と言うし、他の友達からも「幸ちゃんと万ちゃんは?」と言われたが、多分これガチ恋だ。幸くんや万里くんは観賞用、有栖川誉は実用用だ。
千秋楽、最高によかった。オタクの語彙力は落ちるとこまで落ちた。最推しが尊くて泣いた。
泣きながら友達のトイレを待っていると、長身の男が寄ってきた。
『初日と比べてどうだったかね?』
その男は、和服姿でも長髪姿でもなかったが、最推しの有栖川誉だった。
『おや、泣いているのかい?』
『最高によがっだでずぅ!』
『そうかい、そうかい。』
有栖川誉は満足気に笑うと、あやす様に私の頭を撫でてきた。
『誉さん!また勝手に!』
『あぁ、監督くん。』
若い女性、有栖川誉が『監督くん』と呼ぶからには多分総監督だろう。本当に若い女性だった。ババアでもジジイでもなかった。
『見たまえ、我々の公演に感激して涙している客がいたよ!』
『本当によがっだんでず!』
『あ、ありがとうございます、?』
いい歳したオタクババアが、なに人前で泣いてんだ、引かれてるぞ!とは思ったが、涙はどんどん溢れる。だって最推しが優しく撫でるから!
『彼女は初日にも来ていたのだよ!』
だって最推しが私のことを覚えていてくれたから!
『・・・もしや、ワタシが泣かせてしまったのだろうか?』
『え、』
有栖川誉の表情が曇ったように見えて、私は向こうから様子を窺っている友達を見ていないふりをした。
『またキミに会えるだろうか?』
『い、いつでも!』
『いつでも、かね。』
あ、これ多分選択肢間違えた。恋愛ゲージがマイナスに動いた気がする。長年のオタク思考回路がそう告げると、有栖川誉は胸元からなにやら取り出し、「ならばここに連絡してくれたまえ、時間を作ろう」と言った。
『・・・名刺?』
『では、また会おう。』
『まったく、誉さんは・・・、』
有栖川誉は総監督の女性を連れて引き返していく。それを呑気に見送っていると、「みゆちゃん!」と友達に声をかけられた。
『なに誉さんにナンパされてるの、ハラハラしながら見ちゃったよ。』
『ナンパ・・・?』
『どう考えてもナンパでしょ、あれは。』
『え、解釈違い・・・、』
堂々と客をナンパする有栖川誉は解釈違いだったが、地雷ではなかった。
暫くして、もう冬組の第五回公演の時期が来た。旗揚げ公演を観たと思ったらもう第五回公演か。まぁ、私が観たのは再演だったけれど。全組、第四回公演から入ったので、時間の感覚が他とズレているのは仕方ない。
スマホをタップし公式サイトを見ると、今回は時代劇らしい。時代劇もまぁ悪くないかな。主演は高遠丞、元GOD座のトップだった役者だ。
『ガイさんが準主演なんだね。』
最近入った、大人の色気のある役者だ。春組のシトロンくんの関係者らしい。
友達の都合に合わせて、初日と千秋楽のチケットを手に入れた。普段はすっぴんだが、観劇の際には薄く化粧をするようになった。いい傾向だと親は言う。
『楽しみだね。』
『この日のために髪もちゃんとしてきた。』
『みゆちゃん、観劇する時は気合い入ってるよね。』
『あの劇団のファンは化粧もまともにできない、とか思われたくないからね。』
『あはは。』
そうこうする間に劇は始まり、私はやはり東さんの色気にやられた。第四回公演からメイクもよくなったと評判で、東さんは美しかった。
だが次の瞬間、ある人物の登場で全てを持っていかれた。
(え、なにあれ。)
(あの人、あんなんだっけ?)
(まって。)
(え、すき。)
(まって。)
(まって!!!!!)
完全に語彙力を失ったオタクだ。
その人物は私好みの長髪で、声もよく通る。東さんを追っていた視線は、いつの間にかその人物に集中してしまった。
またも、ほうっとなっている私を友達がつつく。
『東さん、綺麗だったね。』
『うん・・・、』
『?どうしたの?』
『あの人、あんなんだっけ?』
『あぁ、女形は初めてだったかな。』
『違う、東さんじゃなくて、』
何故この劇団はブロマイドを扱わないのか。オタク、全力で集めるのに。
全力で、有栖川誉を。
ファンサービスのために出ていた役者たちはキラキラしていた。私の脳内ではホモセックスの妄想が繰り広げられていたが。
『キミ、』
『・・・。』
『聞いているのかね?』
『・・・ぇ、へ?』
目の前にいたのは、一瞬で私の最推しになった有栖川誉がいた。ホモセックスは消え去り、私好みの長髪イケメンがいる。オタクの語彙力は二歳児にまで落ちた。
『役者が目の前にいるのに、どこを見ているのかね?』
『はぁ・・・、』
『まぁいい。観てくれてありがとう。』
『いえ、こちらこそ・・・?』
『おかしな人だね。』
(あ、近くで見るとめちゃくちゃ美形やん。)
それが有栖川誉とのファーストコンタクト。
それからは千秋楽の日まで暇さえあれば有栖川誉の情報を調べていた。なんと五つも年下らしい。友達も「誉さんとはねぇ」と言うし、他の友達からも「幸ちゃんと万ちゃんは?」と言われたが、多分これガチ恋だ。幸くんや万里くんは観賞用、有栖川誉は実用用だ。
千秋楽、最高によかった。オタクの語彙力は落ちるとこまで落ちた。最推しが尊くて泣いた。
泣きながら友達のトイレを待っていると、長身の男が寄ってきた。
『初日と比べてどうだったかね?』
その男は、和服姿でも長髪姿でもなかったが、最推しの有栖川誉だった。
『おや、泣いているのかい?』
『最高によがっだでずぅ!』
『そうかい、そうかい。』
有栖川誉は満足気に笑うと、あやす様に私の頭を撫でてきた。
『誉さん!また勝手に!』
『あぁ、監督くん。』
若い女性、有栖川誉が『監督くん』と呼ぶからには多分総監督だろう。本当に若い女性だった。ババアでもジジイでもなかった。
『見たまえ、我々の公演に感激して涙している客がいたよ!』
『本当によがっだんでず!』
『あ、ありがとうございます、?』
いい歳したオタクババアが、なに人前で泣いてんだ、引かれてるぞ!とは思ったが、涙はどんどん溢れる。だって最推しが優しく撫でるから!
『彼女は初日にも来ていたのだよ!』
だって最推しが私のことを覚えていてくれたから!
『・・・もしや、ワタシが泣かせてしまったのだろうか?』
『え、』
有栖川誉の表情が曇ったように見えて、私は向こうから様子を窺っている友達を見ていないふりをした。
『またキミに会えるだろうか?』
『い、いつでも!』
『いつでも、かね。』
あ、これ多分選択肢間違えた。恋愛ゲージがマイナスに動いた気がする。長年のオタク思考回路がそう告げると、有栖川誉は胸元からなにやら取り出し、「ならばここに連絡してくれたまえ、時間を作ろう」と言った。
『・・・名刺?』
『では、また会おう。』
『まったく、誉さんは・・・、』
有栖川誉は総監督の女性を連れて引き返していく。それを呑気に見送っていると、「みゆちゃん!」と友達に声をかけられた。
『なに誉さんにナンパされてるの、ハラハラしながら見ちゃったよ。』
『ナンパ・・・?』
『どう考えてもナンパでしょ、あれは。』
『え、解釈違い・・・、』
堂々と客をナンパする有栖川誉は解釈違いだったが、地雷ではなかった。