MANKAIカンパニーとの出会い、運命の出会い
夢より素敵な
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「ん、ちょ、」
いつになく性急なキスなのに優しくて、冷たい壁がじんわりと体温を吸収して温まっていく。漏れる息はもう乱れていて、苦しいと相手の胸を叩いても離してくれそうにない。
「んっ、んぅ、」
「っ、は、」
肩を過ぎた髪を乱すように梳かれ、恋人がなにを焦っているのか考える。そう、恋人である有栖川誉はなにかに焦るかのようにキスを続けるのだ。
「ほ、ま、っん、」
訊きたいことがあっても全て口の中で溶けてしまう。少し頭に来た私は、右側の伸びた恋人の髪を引っ張ってキスを中断するよう無言で命じた。
「はぁ、はぁ、っ、」
「・・・すまない。」
ほしいのはそんな謝罪の言葉じゃなくて、行為の理由だ。言い訳だっていい。普段紳士的な彼が欲に任せてあんな相手を苦しめるキスをするような人間ではないのは、そんなに長くはない付き合いでもわかるから。
「ほまれ、」
「ワタシはなんてことを・・・、」
無意識に流れていた涙を細く長い指で拭うと、今度は優しく髪を梳くように撫でる。いつもの恋人の姿だ。
「なにがあったの?」
「・・・笑わないでくれるかい?」
「笑うようなことなの?」
その腕の中は温かくて居心地がいい。トクントクンと恋人の音がする。いつもより少し速い。
「ワタシとしたことが、嫉妬などという感情を抱いてしまったのだよ。」
「嫉妬?」
「最近、キミは綴くんと仲が良さそうだね?」
抱き締める腕に力が入って、少し苦しい。
綴くんとは、MANKAIカンパニーの役者で脚本家も務める皆木綴くんのことだ。彼が頑張っているのは部外者の私にもわかるほどで、つい世話を焼いてしまった。といっても、偶然見かけた時にお腹を空かせていたようだったから、たまたま持っていたコンビニのわかめご飯のおにぎりをあげただけ。そのお礼にと、彼のバイト先のカフェでキャラメルラテとサンドイッチをご馳走になった。それを出版社から戻る途中の恋人が見て、仲がいいと思ったようだ。
私の実弟ほどの年の差のある恋人は、いつだって誰にだって紳士的だ。実弟もなんやかんやで私を庇おうという意識はあるようだが、気持ちの擦れ違いや単純に距離があるせいで最近はあまり連絡を取っていない。だが、実弟よりも大人だと思っていたこの年下の恋人も、やはり年下で余裕なんてないのだ。
「ふふ。」
「・・・笑わないでくれと言っただろう?」
「だって、可愛くて。ふふふ。」
あの紳士を絵に描いたような恋人が、そんな可愛い嫉妬をするなんて。嫉妬深い恋人も過去にいなかったこともないが、この恋人は嫉妬をすると少々強引になるらしい。新たな発見に綴くんに感謝するばかりだ。
「まったく、ワタシとしたことが・・・。」
「でも好きよ?」
「深雪さん・・・、」
「必死になってる誉は、取り繕ってスンっとしてるよりかずっと素敵。」
「・・・こんなワタシを素敵だと言ってくれるのかね?」
「うん。素敵な私の恋人ね。」
「痛かったでしょう?」と右側の髪の付け根辺りを撫でてやると「・・・少しね」と言って指を絡めてくる。
「怖かったかい?」
その問いかけに首を振った。性急なキスでも、乱暴なキスではなかった。苦しかったけど、触れた唇は優しかった。それだけで充分なのだ。
「また嫉妬させちゃうかもだけど。」
「あまり相手に気を持たせるようなことはしないでおくれ。」
「私が誉のものなのは綴くんだってわかってるよ。」
おにぎりをあげた時も、カフェでお喋りした時も、会話の中心は恋人のことだった。
「用心するに越したことはないからね。」
「はいはい。」
聞き分けのいい紳士な恋人は、実は嫉妬深かった・・・なんて、いいネタ見つけたな。
20190305
いつになく性急なキスなのに優しくて、冷たい壁がじんわりと体温を吸収して温まっていく。漏れる息はもう乱れていて、苦しいと相手の胸を叩いても離してくれそうにない。
「んっ、んぅ、」
「っ、は、」
肩を過ぎた髪を乱すように梳かれ、恋人がなにを焦っているのか考える。そう、恋人である有栖川誉はなにかに焦るかのようにキスを続けるのだ。
「ほ、ま、っん、」
訊きたいことがあっても全て口の中で溶けてしまう。少し頭に来た私は、右側の伸びた恋人の髪を引っ張ってキスを中断するよう無言で命じた。
「はぁ、はぁ、っ、」
「・・・すまない。」
ほしいのはそんな謝罪の言葉じゃなくて、行為の理由だ。言い訳だっていい。普段紳士的な彼が欲に任せてあんな相手を苦しめるキスをするような人間ではないのは、そんなに長くはない付き合いでもわかるから。
「ほまれ、」
「ワタシはなんてことを・・・、」
無意識に流れていた涙を細く長い指で拭うと、今度は優しく髪を梳くように撫でる。いつもの恋人の姿だ。
「なにがあったの?」
「・・・笑わないでくれるかい?」
「笑うようなことなの?」
その腕の中は温かくて居心地がいい。トクントクンと恋人の音がする。いつもより少し速い。
「ワタシとしたことが、嫉妬などという感情を抱いてしまったのだよ。」
「嫉妬?」
「最近、キミは綴くんと仲が良さそうだね?」
抱き締める腕に力が入って、少し苦しい。
綴くんとは、MANKAIカンパニーの役者で脚本家も務める皆木綴くんのことだ。彼が頑張っているのは部外者の私にもわかるほどで、つい世話を焼いてしまった。といっても、偶然見かけた時にお腹を空かせていたようだったから、たまたま持っていたコンビニのわかめご飯のおにぎりをあげただけ。そのお礼にと、彼のバイト先のカフェでキャラメルラテとサンドイッチをご馳走になった。それを出版社から戻る途中の恋人が見て、仲がいいと思ったようだ。
私の実弟ほどの年の差のある恋人は、いつだって誰にだって紳士的だ。実弟もなんやかんやで私を庇おうという意識はあるようだが、気持ちの擦れ違いや単純に距離があるせいで最近はあまり連絡を取っていない。だが、実弟よりも大人だと思っていたこの年下の恋人も、やはり年下で余裕なんてないのだ。
「ふふ。」
「・・・笑わないでくれと言っただろう?」
「だって、可愛くて。ふふふ。」
あの紳士を絵に描いたような恋人が、そんな可愛い嫉妬をするなんて。嫉妬深い恋人も過去にいなかったこともないが、この恋人は嫉妬をすると少々強引になるらしい。新たな発見に綴くんに感謝するばかりだ。
「まったく、ワタシとしたことが・・・。」
「でも好きよ?」
「深雪さん・・・、」
「必死になってる誉は、取り繕ってスンっとしてるよりかずっと素敵。」
「・・・こんなワタシを素敵だと言ってくれるのかね?」
「うん。素敵な私の恋人ね。」
「痛かったでしょう?」と右側の髪の付け根辺りを撫でてやると「・・・少しね」と言って指を絡めてくる。
「怖かったかい?」
その問いかけに首を振った。性急なキスでも、乱暴なキスではなかった。苦しかったけど、触れた唇は優しかった。それだけで充分なのだ。
「また嫉妬させちゃうかもだけど。」
「あまり相手に気を持たせるようなことはしないでおくれ。」
「私が誉のものなのは綴くんだってわかってるよ。」
おにぎりをあげた時も、カフェでお喋りした時も、会話の中心は恋人のことだった。
「用心するに越したことはないからね。」
「はいはい。」
聞き分けのいい紳士な恋人は、実は嫉妬深かった・・・なんて、いいネタ見つけたな。
20190305
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