MANKAIカンパニーとの出会い、運命の出会い
夢より素敵な
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十二月十六日、誕生日だった。
日付けが変わった瞬間に、待ちきれなかったと言わんばかりに抱き締められ、口紅とペンダントをプレゼントされた。
口紅を贈る意味はその唇で少しずつ返してほしい、ペンダントやネックレスを贈る意味は束縛だ。それは趣味で物書きをする私には常識として頭にあって、物に意味を持たせる文化は美しいが厄介だと思った。
「しかもこれ、モデル使用色じゃない?人気色じゃん。」
「そうなのかね?二面性のあるキミにぴったりだと思ったのだが、気に入らなかったかい?」
「そんなわけないでしょ。すごく嬉しい。」
ペンダントは、私が以前ハンドメイドアクセサリーの温かみが好きだと言ったのを覚えていてくれたのか、猫のペンダントトップのついたものだ。後ろに回りスエード紐を結ぶと、そのまま背後から抱き竦められる。
「よく似合っているよ。」
ブレスレットももらったことがあるが、そんなに縛りつけていないと心配になるのだろうか?丁寧に外してアクセサリーケースにしまい、抱き合って眠ることにもそろそろ慣れた。
朝目覚めると、沢山のおめでとうが届いていた。今日はランチデートの予定があるので早々に返すと、すぐに支度を始めた。
最近お気に入りの赤系メイクは、恋人のイメージカラーだ。赤いマスカラに、ピンクのアイシャドウ。あぁ、赤いアイシャドウもほしいな。今日買っちゃおうかな。
MANKAIカンパニーの観劇を始めて云年振りにメイクをしたが、最近のコスメはすごい。マスカラがパンダにならない。すごい。
服は以前恋人から贈られた赤いワンピース。少しレトロな型が気に入っている。初めて袖を通したが、これは気分が上がる。服を贈る意味も、私は知っている。だから特別な日に着ようと決めたのだ。恋人がそわそわしてた理由がクリスマスではなく私の誕生日だったので、多分今日が特別な日なのだろう。
肩を過ぎた髪にこれまた最近お気に入りのヘアオイルを含ませ、耳の横で一つに結ぶと、恋人が後ろからペンダントをつけてくれる。私は猫派だから、猫のペンダントトップは本当に可愛くてお気に入りになってしまった。仕上げにプレゼントされた口紅を塗って、振り返って触れるだけのキスをした。深いキスはまだしたことがない。
「では行こうか。」
「うん。」
お店は私のお気に入りのイタリアンのお店で、そういえばちょっと前にフレンチよりイタリアンの方が好きだったね?と確認されたが、もしかしたら今日のこのお店のことだったのかもしれない。私は安い舌なので、某イタリアンチェーン店でもよかったのに。
このお店のシーザードレッシングが好きだ。それは十年程前に初めて訪れてから変わらない。日替わりランチの帆立とほうれん草のグラタンも美味しかったし、デザートのミルクレープには林檎のシャーベットがついていた。恋人も上機嫌で、私も嬉しい。
「今日はどこか行きたいところはあるかね?」
「化粧品見たいの。」
「ふむ。」
初めて訪れた薬局。化粧品の品揃えはまぁまぁにあって、女優ミラーまで設置してあった。
プチプラで有名なコスメブランドは、今まで二時間弱かけて置いているお店へ行っていたが、ここはその半分もかからない。教えてくれた幼馴染に感謝だ。赤いアイシャドウの入ったパレットを購入して、今日はすぐに帰宅した。
我が家は引っ越してきた当初からインターフォンが二階にいると聞こえないので、鍵を渡した時に勝手に入ってきていいと言ったのだが、恋人は家の前まで来ると必ず電話をしてくる。そういうとこも律儀で好きだと思う。
友達からもプレゼントをもらっていて、アルコールの入ったチョコレートもあった。恋人はそれを手に取って私の口に含ませる。じんわりと口の中がアルコールの味に染まった。
「美味しい。」
「もっと齧るかい?」
自分で食べるからと言っても、恋人はやめなかった。
「チョコレートは媚薬とは、よく言ったものだね。」
私は恋人と違ってアルコールには強い方だ。滅多なことで酔ったりはしない。だがこの空気はよろしくない。変なムードを作り始めた恋人を、つい突き飛ばして逃げてしまった。
そういえばそんなドラマがあったなぁ。そんなことを考えて、残された恋人を想った。どんな気持ちでいるのだろうか。散々体を許すことをせず焦らされ、挙句逃げられ。自分だったらどう思うだろう。
ランチの最中、突然「一緒にいよう」と言われた。所謂同棲を始めたいと。早くて来年の頭には。舞い上がった私は、感極まって泣いてしまった。私にとって『同棲』は特別で、今までの恋人からは冗談っぽく言われて終わっていった話だ。照れ隠しについ恋人の膝を叩いてしまい、ぴょんっと跳ねるのを見て笑ってしまった。それから帰宅し、恋人の電話を盗み聞きしていたら優しく額をぺちんと叩かれた。そこで同棲の時期が早まったことを告げられ、いよいよ期待が高まり抱き着いてしまった。そこからだ、恋人の態度がとびっきり甘いものに変わったのは。
それを思うと、他人の気持ちが理解できないのはどっちだと自分を叱りつけた。今、逃げてはいけない。
部屋に戻ると、ぼんやりとしている恋人がいた。堪らなくなって抱き着くと、すまなかったねと謝られた。謝るのはこちらの方だ。恋人の男心を傷つけてしまった。色の薄くなった唇で恋人の唇に触れると、ビクッと恋人の肩が揺れた。
「逃げてごめんね。」
一度離れてからもう一度触れる。背中に恋人の左手が触れて、上下に撫でられた。
「深雪さん、」
「ん?」
「・・・愛しているよ。」
伸ばされた右手に触れると、体温が低い。恋人は冷え性だから。僅かに震える手を握り締めて、「緊張してる?」と訊くと、「当たり前だろう?」と泣きそうな顔で言った。紳士だなんだと言っても、今日から二ヶ月は六つも歳が離れる。まだ若いのだ。
「私でいいの?」
「キミがいいんだよ。」
「愛情表現バイオレンスだよ?」
「その分、ワタシを愛してくれているのだろう?」
恋人は純粋な人だ。私みたいな汚れた人間でも、恋人に触れられると綺麗なものになれる気がする。
初めて、深いキスをして。
初めて、体を繋げた。
何度も求められたし、何度も求めた。
生まれて初めて、恋人と一緒にお風呂に入った。
「キミはすぐに引っ付いてくるから、既に過去の恋人と入浴くらい済ませていたと思っていたのだがね。」
「正真正銘、初体験ですぅ。」
我が家の浴槽は広い。足を伸ばせていいが私は何故だか寂しかった。恋人は広い浴槽を気に入っていた。これからはきっと私も。
「重いとか軽いとか気にするの疲れちゃった。」
「ワタシはキミの少々バイオレンスな重い愛が愛しいよ。」
「重いって言って離れないでね?」
「キミがワタシから離れない限りは離れないから安心したまえ。・・・ワタシの愛は伝わっているかね?」
ブレスレットで手錠をかけたいくらい、ネックレスで首輪をしたいくらい、贈った服は着せたいからではなく脱がせたいから。口紅だって、その唇で少しずつのお返しをしてほしいから。
私はね、物書きだから他人より少し物が持つ意味を知ってるんだ。沢山調べたから。
「痛いほど伝わってるよ。」
20181217
日付けが変わった瞬間に、待ちきれなかったと言わんばかりに抱き締められ、口紅とペンダントをプレゼントされた。
口紅を贈る意味はその唇で少しずつ返してほしい、ペンダントやネックレスを贈る意味は束縛だ。それは趣味で物書きをする私には常識として頭にあって、物に意味を持たせる文化は美しいが厄介だと思った。
「しかもこれ、モデル使用色じゃない?人気色じゃん。」
「そうなのかね?二面性のあるキミにぴったりだと思ったのだが、気に入らなかったかい?」
「そんなわけないでしょ。すごく嬉しい。」
ペンダントは、私が以前ハンドメイドアクセサリーの温かみが好きだと言ったのを覚えていてくれたのか、猫のペンダントトップのついたものだ。後ろに回りスエード紐を結ぶと、そのまま背後から抱き竦められる。
「よく似合っているよ。」
ブレスレットももらったことがあるが、そんなに縛りつけていないと心配になるのだろうか?丁寧に外してアクセサリーケースにしまい、抱き合って眠ることにもそろそろ慣れた。
朝目覚めると、沢山のおめでとうが届いていた。今日はランチデートの予定があるので早々に返すと、すぐに支度を始めた。
最近お気に入りの赤系メイクは、恋人のイメージカラーだ。赤いマスカラに、ピンクのアイシャドウ。あぁ、赤いアイシャドウもほしいな。今日買っちゃおうかな。
MANKAIカンパニーの観劇を始めて云年振りにメイクをしたが、最近のコスメはすごい。マスカラがパンダにならない。すごい。
服は以前恋人から贈られた赤いワンピース。少しレトロな型が気に入っている。初めて袖を通したが、これは気分が上がる。服を贈る意味も、私は知っている。だから特別な日に着ようと決めたのだ。恋人がそわそわしてた理由がクリスマスではなく私の誕生日だったので、多分今日が特別な日なのだろう。
肩を過ぎた髪にこれまた最近お気に入りのヘアオイルを含ませ、耳の横で一つに結ぶと、恋人が後ろからペンダントをつけてくれる。私は猫派だから、猫のペンダントトップは本当に可愛くてお気に入りになってしまった。仕上げにプレゼントされた口紅を塗って、振り返って触れるだけのキスをした。深いキスはまだしたことがない。
「では行こうか。」
「うん。」
お店は私のお気に入りのイタリアンのお店で、そういえばちょっと前にフレンチよりイタリアンの方が好きだったね?と確認されたが、もしかしたら今日のこのお店のことだったのかもしれない。私は安い舌なので、某イタリアンチェーン店でもよかったのに。
このお店のシーザードレッシングが好きだ。それは十年程前に初めて訪れてから変わらない。日替わりランチの帆立とほうれん草のグラタンも美味しかったし、デザートのミルクレープには林檎のシャーベットがついていた。恋人も上機嫌で、私も嬉しい。
「今日はどこか行きたいところはあるかね?」
「化粧品見たいの。」
「ふむ。」
初めて訪れた薬局。化粧品の品揃えはまぁまぁにあって、女優ミラーまで設置してあった。
プチプラで有名なコスメブランドは、今まで二時間弱かけて置いているお店へ行っていたが、ここはその半分もかからない。教えてくれた幼馴染に感謝だ。赤いアイシャドウの入ったパレットを購入して、今日はすぐに帰宅した。
我が家は引っ越してきた当初からインターフォンが二階にいると聞こえないので、鍵を渡した時に勝手に入ってきていいと言ったのだが、恋人は家の前まで来ると必ず電話をしてくる。そういうとこも律儀で好きだと思う。
友達からもプレゼントをもらっていて、アルコールの入ったチョコレートもあった。恋人はそれを手に取って私の口に含ませる。じんわりと口の中がアルコールの味に染まった。
「美味しい。」
「もっと齧るかい?」
自分で食べるからと言っても、恋人はやめなかった。
「チョコレートは媚薬とは、よく言ったものだね。」
私は恋人と違ってアルコールには強い方だ。滅多なことで酔ったりはしない。だがこの空気はよろしくない。変なムードを作り始めた恋人を、つい突き飛ばして逃げてしまった。
そういえばそんなドラマがあったなぁ。そんなことを考えて、残された恋人を想った。どんな気持ちでいるのだろうか。散々体を許すことをせず焦らされ、挙句逃げられ。自分だったらどう思うだろう。
ランチの最中、突然「一緒にいよう」と言われた。所謂同棲を始めたいと。早くて来年の頭には。舞い上がった私は、感極まって泣いてしまった。私にとって『同棲』は特別で、今までの恋人からは冗談っぽく言われて終わっていった話だ。照れ隠しについ恋人の膝を叩いてしまい、ぴょんっと跳ねるのを見て笑ってしまった。それから帰宅し、恋人の電話を盗み聞きしていたら優しく額をぺちんと叩かれた。そこで同棲の時期が早まったことを告げられ、いよいよ期待が高まり抱き着いてしまった。そこからだ、恋人の態度がとびっきり甘いものに変わったのは。
それを思うと、他人の気持ちが理解できないのはどっちだと自分を叱りつけた。今、逃げてはいけない。
部屋に戻ると、ぼんやりとしている恋人がいた。堪らなくなって抱き着くと、すまなかったねと謝られた。謝るのはこちらの方だ。恋人の男心を傷つけてしまった。色の薄くなった唇で恋人の唇に触れると、ビクッと恋人の肩が揺れた。
「逃げてごめんね。」
一度離れてからもう一度触れる。背中に恋人の左手が触れて、上下に撫でられた。
「深雪さん、」
「ん?」
「・・・愛しているよ。」
伸ばされた右手に触れると、体温が低い。恋人は冷え性だから。僅かに震える手を握り締めて、「緊張してる?」と訊くと、「当たり前だろう?」と泣きそうな顔で言った。紳士だなんだと言っても、今日から二ヶ月は六つも歳が離れる。まだ若いのだ。
「私でいいの?」
「キミがいいんだよ。」
「愛情表現バイオレンスだよ?」
「その分、ワタシを愛してくれているのだろう?」
恋人は純粋な人だ。私みたいな汚れた人間でも、恋人に触れられると綺麗なものになれる気がする。
初めて、深いキスをして。
初めて、体を繋げた。
何度も求められたし、何度も求めた。
生まれて初めて、恋人と一緒にお風呂に入った。
「キミはすぐに引っ付いてくるから、既に過去の恋人と入浴くらい済ませていたと思っていたのだがね。」
「正真正銘、初体験ですぅ。」
我が家の浴槽は広い。足を伸ばせていいが私は何故だか寂しかった。恋人は広い浴槽を気に入っていた。これからはきっと私も。
「重いとか軽いとか気にするの疲れちゃった。」
「ワタシはキミの少々バイオレンスな重い愛が愛しいよ。」
「重いって言って離れないでね?」
「キミがワタシから離れない限りは離れないから安心したまえ。・・・ワタシの愛は伝わっているかね?」
ブレスレットで手錠をかけたいくらい、ネックレスで首輪をしたいくらい、贈った服は着せたいからではなく脱がせたいから。口紅だって、その唇で少しずつのお返しをしてほしいから。
私はね、物書きだから他人より少し物が持つ意味を知ってるんだ。沢山調べたから。
「痛いほど伝わってるよ。」
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