MANKAIカンパニーとの出会い、運命の出会い
夢より素敵な
お名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
地元で一番大きな祭りへ出かけた。私も誉もお祭りデートというものは初めてで、前日の前夜祭みたいなものには友達と行ったのだが両日共、誉が全身コーデをしてくれた。
私は背が低いのであまり大人っぽい格好は似合わないからと、歳の割に少し甘い服が多いのだが、一日目はカーキ色のニットにグレーのスカパンというコーデだ。地味めだがそれでも襟元や裾にレースがついている。メイクはブラウン系の落ち着いたものにした。
その日の晩、誉と喧嘩をした。
理由は、私が宅急便の配達員と仲良く世間話をしていたから、らしい。それを揶揄った私も悪いが、配達員にいちいち嫉妬するのが可愛かったのだ。
私は怒られたり呆れられることを嫌がる。思考が極端なので、このまま別れるのではないかとまで考えてしまう。その日は仲直りして、抱き合って眠った。
二日目、本番だ。地元出身の落語家が山車に乗るというのは聞いていた。前日も乗っていて、可哀想なほど喉を枯らしていたらしい。
クリーム色のニットにボルドーのスカパン、伯母からもらったざっくり編みのニットコートはすぐに誉のお気に入りになった。前日にも思ったが、誉は割と甘めのコーデが好きなのかもしれない。メイクはオレンジ系のものにした。そういったことにすぐ気づくタイプなので、「綺麗だね」と褒められた。紳士か。
出ようとすると、私の全身をまじまじと見て「おいで」と言って腕を広げるので、とりあえず脛を蹴ってしまった。ここまで愛を隠さない恋人というのが初めてで、どうしていいのかわからないのだ。
「キミの愛はどうしてこうもバイオレンスなのだろうね。」
「出かけられないでしょ。」
すごくドキドキしている。「おいで」はズルい。好きになってしまう。
前日とはうって変わって、人も店も溢れていた。隣を歩く誉は終始ご機嫌で、私も嬉しい。
途中、伯父が出している店に寄った。伯父はいなかったが、伯母と近所の奥様が甘酒や揚げ餅を売っていた。
「みゆちゃん、お化粧してる!お祖母さんに話してあげなきゃ!」
そういえば伯母にメイクした姿を見せたのは初めてだった。誉は、普段私を『お嬢』と呼ぶ、伯父の会社の従業員と話している。強面で大型車の運転手のためガタイがよく、こんな場所でいつも通り『お嬢』なんて呼ばれたら勘違いされてしまうだろうが、伯父の会社の従業員なのに常識があって助かった。
伯母から甘酒をもらい、ちょうどいい温度のそれを飲んでいると誉が近づいてきた。改めて見ると、目印にはちょうどいい背の高さだ。
「失礼なことを考えているね?」
「別に?」
「次はどこに行きたいのかね?」
「夕飯に買っていきたいものがあるの。」
所謂粉もの。焼きそば、お好み焼き、たこ焼き・・・これらは祭りには書かせない。ハットグは友達と回った時に食べたので遠慮したが、あれもなかなか美味しかった。
『ハットグだ。』
『なぁに?』
『環奈ちゃんが食べてた。』
『じゃあ食べる!』
『私チーズだめだから、レポよろ。』
『おけおけ!・・・チーズ!』
『うん。』
『伸びる!』
『うん。』
『あ、根元にウインナー刺さってるんだ。』
『あぁ、支えるためかな?』
食レポにならない食レポだったが、それも楽しかった。
「豚玉焼きの方が安いなぁ。」
「買っていくかい?」
「うん。」
お好み焼きではなく豚玉焼きと、たこ焼きを買ってあとは焼きそばだ。たこ焼きを買ってる時に山車が来たので見ていると、引いてる人のテンションがとても高い。笑顔でハイタッチをした。
「やってる人が楽しそうだとこっちも楽しくなっちゃうね。」
「キミが楽しそうでワタシも楽しいよ。」
山車が来ればもうその先は混んで通れないので、裏に回った。土地勘のない誉もちゃんとついてきている。人の波に揉まれることなく、焼きそばの屋台まで辿り着けた。
「焼きそば一つください。」
「今焼き立てができるからねー。」
「わーい。」
シャカシャカと鉄板で素早く焼いていく。具はニラに人参、キクラゲ。十年以上祭りには来ていないが、キクラゲの入った焼きそばが今年は多い気がした。
「お姉さん可愛いからオマケしとくね!」
「ありがとうございます!」
祭りのお決まりのあれだ。前日のことがあったので誉を見ると、にこにこしながら「そうだろうそうだろう」と語り出したので、「こういうのは皆に言うのよ」と言って笑うしかなかった。
「昨日は怒ってたのに。」
「配達員は毎回来るが、ああいった者は刹那的な出会いだからね。つい自慢したくなってしまったのだ。」
片手に私が買ったものを全部持ってそう言う。
もう見るものは見たし、買うものも買ったしと、また裏道に入った。人通りも疎らだ。今日は人通りの多いところは避けていたので、触れ合っていないことに気づいた。こういうのは苦手だ。昔、断られたことがあるから。でも、誉なら・・・そう思って、勇気を出して思っていることを口に出した。
「手を、」
「手を繋いでもいいだろうか?」
二人して顔を見合わせ、笑ってしまった。同じことを考えていたらしい。
「昼から触れていなかったから、少々寂しかったよ。」
「うん、私も。」
指を絡める、ラブ繋ぎ。身長差のせいで少し不格好だが、それでも幸せだった。
「楽しかったね。」
「とても賑やかなのだね。」
「ユネスコ登録されたし、落語家がよく宣伝してるから人が増えたよ。」
「ふむ。」
「昔、人酔いしてバイト遅れたことあってね。多分、それ以来来てなかった。・・・今日はありがとね。」
「なに、こちらこそ。キミの楽しそうな姿も見られたし、なかなかに詩興の湧く光景だった。」
「楽しかった?」
「勿論、とても楽しかった。今もこうしてキミと手を繋いで歩くのが楽しいよ。」
「私も楽しい。」
微笑み合って手を繋いで歩くなんて、今まで何度経験しただろうか?多分数えるほどだ。これから先、誉とこういう時間が増えるのが楽しみになった一日だった。
20181206
私は背が低いのであまり大人っぽい格好は似合わないからと、歳の割に少し甘い服が多いのだが、一日目はカーキ色のニットにグレーのスカパンというコーデだ。地味めだがそれでも襟元や裾にレースがついている。メイクはブラウン系の落ち着いたものにした。
その日の晩、誉と喧嘩をした。
理由は、私が宅急便の配達員と仲良く世間話をしていたから、らしい。それを揶揄った私も悪いが、配達員にいちいち嫉妬するのが可愛かったのだ。
私は怒られたり呆れられることを嫌がる。思考が極端なので、このまま別れるのではないかとまで考えてしまう。その日は仲直りして、抱き合って眠った。
二日目、本番だ。地元出身の落語家が山車に乗るというのは聞いていた。前日も乗っていて、可哀想なほど喉を枯らしていたらしい。
クリーム色のニットにボルドーのスカパン、伯母からもらったざっくり編みのニットコートはすぐに誉のお気に入りになった。前日にも思ったが、誉は割と甘めのコーデが好きなのかもしれない。メイクはオレンジ系のものにした。そういったことにすぐ気づくタイプなので、「綺麗だね」と褒められた。紳士か。
出ようとすると、私の全身をまじまじと見て「おいで」と言って腕を広げるので、とりあえず脛を蹴ってしまった。ここまで愛を隠さない恋人というのが初めてで、どうしていいのかわからないのだ。
「キミの愛はどうしてこうもバイオレンスなのだろうね。」
「出かけられないでしょ。」
すごくドキドキしている。「おいで」はズルい。好きになってしまう。
前日とはうって変わって、人も店も溢れていた。隣を歩く誉は終始ご機嫌で、私も嬉しい。
途中、伯父が出している店に寄った。伯父はいなかったが、伯母と近所の奥様が甘酒や揚げ餅を売っていた。
「みゆちゃん、お化粧してる!お祖母さんに話してあげなきゃ!」
そういえば伯母にメイクした姿を見せたのは初めてだった。誉は、普段私を『お嬢』と呼ぶ、伯父の会社の従業員と話している。強面で大型車の運転手のためガタイがよく、こんな場所でいつも通り『お嬢』なんて呼ばれたら勘違いされてしまうだろうが、伯父の会社の従業員なのに常識があって助かった。
伯母から甘酒をもらい、ちょうどいい温度のそれを飲んでいると誉が近づいてきた。改めて見ると、目印にはちょうどいい背の高さだ。
「失礼なことを考えているね?」
「別に?」
「次はどこに行きたいのかね?」
「夕飯に買っていきたいものがあるの。」
所謂粉もの。焼きそば、お好み焼き、たこ焼き・・・これらは祭りには書かせない。ハットグは友達と回った時に食べたので遠慮したが、あれもなかなか美味しかった。
『ハットグだ。』
『なぁに?』
『環奈ちゃんが食べてた。』
『じゃあ食べる!』
『私チーズだめだから、レポよろ。』
『おけおけ!・・・チーズ!』
『うん。』
『伸びる!』
『うん。』
『あ、根元にウインナー刺さってるんだ。』
『あぁ、支えるためかな?』
食レポにならない食レポだったが、それも楽しかった。
「豚玉焼きの方が安いなぁ。」
「買っていくかい?」
「うん。」
お好み焼きではなく豚玉焼きと、たこ焼きを買ってあとは焼きそばだ。たこ焼きを買ってる時に山車が来たので見ていると、引いてる人のテンションがとても高い。笑顔でハイタッチをした。
「やってる人が楽しそうだとこっちも楽しくなっちゃうね。」
「キミが楽しそうでワタシも楽しいよ。」
山車が来ればもうその先は混んで通れないので、裏に回った。土地勘のない誉もちゃんとついてきている。人の波に揉まれることなく、焼きそばの屋台まで辿り着けた。
「焼きそば一つください。」
「今焼き立てができるからねー。」
「わーい。」
シャカシャカと鉄板で素早く焼いていく。具はニラに人参、キクラゲ。十年以上祭りには来ていないが、キクラゲの入った焼きそばが今年は多い気がした。
「お姉さん可愛いからオマケしとくね!」
「ありがとうございます!」
祭りのお決まりのあれだ。前日のことがあったので誉を見ると、にこにこしながら「そうだろうそうだろう」と語り出したので、「こういうのは皆に言うのよ」と言って笑うしかなかった。
「昨日は怒ってたのに。」
「配達員は毎回来るが、ああいった者は刹那的な出会いだからね。つい自慢したくなってしまったのだ。」
片手に私が買ったものを全部持ってそう言う。
もう見るものは見たし、買うものも買ったしと、また裏道に入った。人通りも疎らだ。今日は人通りの多いところは避けていたので、触れ合っていないことに気づいた。こういうのは苦手だ。昔、断られたことがあるから。でも、誉なら・・・そう思って、勇気を出して思っていることを口に出した。
「手を、」
「手を繋いでもいいだろうか?」
二人して顔を見合わせ、笑ってしまった。同じことを考えていたらしい。
「昼から触れていなかったから、少々寂しかったよ。」
「うん、私も。」
指を絡める、ラブ繋ぎ。身長差のせいで少し不格好だが、それでも幸せだった。
「楽しかったね。」
「とても賑やかなのだね。」
「ユネスコ登録されたし、落語家がよく宣伝してるから人が増えたよ。」
「ふむ。」
「昔、人酔いしてバイト遅れたことあってね。多分、それ以来来てなかった。・・・今日はありがとね。」
「なに、こちらこそ。キミの楽しそうな姿も見られたし、なかなかに詩興の湧く光景だった。」
「楽しかった?」
「勿論、とても楽しかった。今もこうしてキミと手を繋いで歩くのが楽しいよ。」
「私も楽しい。」
微笑み合って手を繋いで歩くなんて、今まで何度経験しただろうか?多分数えるほどだ。これから先、誉とこういう時間が増えるのが楽しみになった一日だった。
20181206
8/30ページ