MANKAIカンパニーとの出会い、運命の出会い
夢より素敵な
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彼女は無防備に風呂上がりの姿を晒す。髪を乾かすのは私の役目で、一度も染めたことはないという艶やかな黒髪に触れられる特権を嬉しくは思うものの、その姿は目の毒だった。
肩を少し過ぎた髪が濡れ、雫が垂れる様に私としたことが劣情を煽られるのだ。
「もう少し拭いてから出てきたまえ。」
そんな訴えも彼女には届かない。無防備な姿のまま私の足の間に座り乾かされるのを待っている。
大人しく座る姿に、躾の行き届いた犬猫のようなものだと邪念を払うようにゴーっと熱風を当てると、機嫌よさげに全身を預けてくる。
(待ってくれ、それ以上はいけない!)
五つも年上の彼女は、大人だったり子供だったりの顔を見せる。以前は余所行きの大人の顔と声を作り、言葉遣いも丁寧だったが、今では気を許してくれたのか大分砕けた態度を取る。それは私が彼女に真っ赤なルージュを贈った辺りだったと思う。あれから度々彼女は自分のことを『悪い大人のおねーさん』などと称すが、それは十年以上前につけられたニックネームから派生したようだ。彼女は、昔流行ったドラマに登場する魔性の女の名前をニックネームにされたらしい。
彼女は私よりも三〇cmほど背が低いのだが、どこか露出させないと更に小さく、脚は短く見えてしまうと言って膝丈ほどのスカートを履いている。たまに胸元も露出させているのだが、それも学生時代に教師にまで露出狂呼ばわりされたと言っていた。多少露出させないと余計太って見えるのだそうだ。娼婦のような格好をしているわけではないので止めないが、少々出っ張った胸を心配するのは恋人として当然だろう。
雨の日なんかは最悪で、彼女は不器用を極めたような女性だからか傘をさしても濡れる。目のやり場に困るのだが、私は紳士的に接しているつもりだ。一番はやはり髪を滴る雫が問題だ。
(私の想いなど知らないのだろうな。)
彼女とはまだ一線を越えていない。先日、彼女に似合うだろうとレトロなデザインのワンピースを贈った。男が服を贈る意味を、趣味で物書きをする彼女は知っているだろう。先日のルージュの時も理解していたようだ。
『特別な時に着ようね。』
その『特別な時』を、今か今かと待っている私は、紳士という羊の皮を被った狼だ。いつでも行為に及べるようにエチケットとしてそういったものも持ち歩いている。
「ねぇ、」
「なにかね?」
温風を冷風に切り替えると、「考え事?」と振り返り訊いてきた。揺れる瞳の感情は私には読み取れない。知りたいと思う彼女の気持ちがわからない。
彼女は正直な人だ。いいことも悪いことも口に出してしまう点は、私と似ている。私と違うのは、それを口にした後に他人の気持ちを汲んでフォローできる。そこを私は尊敬している。
(その瞳の意味を教えてほしい、私には君の気持ちがわからないから。)
見つめ返せば大体の察しがつく、というのも彼女の特技かもしれない。他人に裏切られた過去のある彼女は、いいことも悪いことも察しがよくなることを余儀なくされたのだろう。
「誉、私から離れてない?」
「どうしてそう思うのかね?」
「実際、先刻より離れてる。」
それはこの欲望を君に知られたくないからだよ、と言えば彼女はどうするのだろう。いつものように笑い飛ばすのか、生娘のように顔を赤らめるのか。
ぐっと距離を縮められた分、私も離れると、頬を膨らませて拗ね始めた。
「ほら、離れた。」
「・・・キミには男心がわからないようだね。」
恋人の濡れた姿に下半身が重くなるなんて、女性である彼女にはわからないだろう。なんて、思っていた時が私にもあった。拗ねていた彼女の口は弧を描き、にんまりとして「あっ、そういうこと」と言った。
「あのね、私がどんな話を書いてるか知ってるよね?」
彼女は所謂『腐女子』という人種であった。男同士のロマンスを書くのが趣味だ。
「そういう展開もね、書くよ。」
それだけ言ってまた後ろを向き、「早く乾かして」と急かす。
こんな私に引いたりなどはしていないだろうか。そんな邪なことを考えている私が触れてもいいのだろうか。そんな思いで躊躇っていると、また振り返って「男ってそういう生き物なんでしょ?」と、どこで得た知識なのかはわからないがぺちりと私の膝を叩いた。
「まったく、キミには適わないよ。」
「お姉さんだからね、私!」
「ではお姉さん、髪を乾かすよ。」
「早く早く!」
近い将来、そういった行為をする時にもそうやって強請るのだろうか。紳士が聞いて呆れる。こんな情欲の塊が紳士だって?せめて彼女を傷つけないように、丁寧に事を進められるよう努力しよう。
20181202
肩を少し過ぎた髪が濡れ、雫が垂れる様に私としたことが劣情を煽られるのだ。
「もう少し拭いてから出てきたまえ。」
そんな訴えも彼女には届かない。無防備な姿のまま私の足の間に座り乾かされるのを待っている。
大人しく座る姿に、躾の行き届いた犬猫のようなものだと邪念を払うようにゴーっと熱風を当てると、機嫌よさげに全身を預けてくる。
(待ってくれ、それ以上はいけない!)
五つも年上の彼女は、大人だったり子供だったりの顔を見せる。以前は余所行きの大人の顔と声を作り、言葉遣いも丁寧だったが、今では気を許してくれたのか大分砕けた態度を取る。それは私が彼女に真っ赤なルージュを贈った辺りだったと思う。あれから度々彼女は自分のことを『悪い大人のおねーさん』などと称すが、それは十年以上前につけられたニックネームから派生したようだ。彼女は、昔流行ったドラマに登場する魔性の女の名前をニックネームにされたらしい。
彼女は私よりも三〇cmほど背が低いのだが、どこか露出させないと更に小さく、脚は短く見えてしまうと言って膝丈ほどのスカートを履いている。たまに胸元も露出させているのだが、それも学生時代に教師にまで露出狂呼ばわりされたと言っていた。多少露出させないと余計太って見えるのだそうだ。娼婦のような格好をしているわけではないので止めないが、少々出っ張った胸を心配するのは恋人として当然だろう。
雨の日なんかは最悪で、彼女は不器用を極めたような女性だからか傘をさしても濡れる。目のやり場に困るのだが、私は紳士的に接しているつもりだ。一番はやはり髪を滴る雫が問題だ。
(私の想いなど知らないのだろうな。)
彼女とはまだ一線を越えていない。先日、彼女に似合うだろうとレトロなデザインのワンピースを贈った。男が服を贈る意味を、趣味で物書きをする彼女は知っているだろう。先日のルージュの時も理解していたようだ。
『特別な時に着ようね。』
その『特別な時』を、今か今かと待っている私は、紳士という羊の皮を被った狼だ。いつでも行為に及べるようにエチケットとしてそういったものも持ち歩いている。
「ねぇ、」
「なにかね?」
温風を冷風に切り替えると、「考え事?」と振り返り訊いてきた。揺れる瞳の感情は私には読み取れない。知りたいと思う彼女の気持ちがわからない。
彼女は正直な人だ。いいことも悪いことも口に出してしまう点は、私と似ている。私と違うのは、それを口にした後に他人の気持ちを汲んでフォローできる。そこを私は尊敬している。
(その瞳の意味を教えてほしい、私には君の気持ちがわからないから。)
見つめ返せば大体の察しがつく、というのも彼女の特技かもしれない。他人に裏切られた過去のある彼女は、いいことも悪いことも察しがよくなることを余儀なくされたのだろう。
「誉、私から離れてない?」
「どうしてそう思うのかね?」
「実際、先刻より離れてる。」
それはこの欲望を君に知られたくないからだよ、と言えば彼女はどうするのだろう。いつものように笑い飛ばすのか、生娘のように顔を赤らめるのか。
ぐっと距離を縮められた分、私も離れると、頬を膨らませて拗ね始めた。
「ほら、離れた。」
「・・・キミには男心がわからないようだね。」
恋人の濡れた姿に下半身が重くなるなんて、女性である彼女にはわからないだろう。なんて、思っていた時が私にもあった。拗ねていた彼女の口は弧を描き、にんまりとして「あっ、そういうこと」と言った。
「あのね、私がどんな話を書いてるか知ってるよね?」
彼女は所謂『腐女子』という人種であった。男同士のロマンスを書くのが趣味だ。
「そういう展開もね、書くよ。」
それだけ言ってまた後ろを向き、「早く乾かして」と急かす。
こんな私に引いたりなどはしていないだろうか。そんな邪なことを考えている私が触れてもいいのだろうか。そんな思いで躊躇っていると、また振り返って「男ってそういう生き物なんでしょ?」と、どこで得た知識なのかはわからないがぺちりと私の膝を叩いた。
「まったく、キミには適わないよ。」
「お姉さんだからね、私!」
「ではお姉さん、髪を乾かすよ。」
「早く早く!」
近い将来、そういった行為をする時にもそうやって強請るのだろうか。紳士が聞いて呆れる。こんな情欲の塊が紳士だって?せめて彼女を傷つけないように、丁寧に事を進められるよう努力しよう。
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