闇という名の光
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城の中は、本当に魔法の世界だった。
王様に案内されて長い廊下を歩いている間も、ずっと興奮しっぱなしだ。
まず最初に驚いたのは、グミシップ乗り場にいたシマリスの兄弟だった。
二人とも手のひらサイズの大きさで、名前をチップとデールというらしい。
あんなに小さい体なのに、グミシップの整備を担当しているそうだ。
次に驚いたのが、動く箒だ。
今も、三本の箒がバケツを両手にこちらに向かって歩いてくる。
私が不思議そうな目で見ていることに気がついたのか、王様も立ち止まって箒を目で追った。
「彼らは魔法の力で動いてるんだよ。僕が師匠に教えてもらったんだ」
「王様の師匠?」
尋ねながらも、私は自分たちの横を通り過ぎてゆく箒に釘付けになっている。
「うん、イェン・シッド様っていう人なんだ。もしかしたら、ミキも会う機会があるかもしれないね」
そう言うと、王様は再び歩き出した。
「さあ、書斎へ行こう。まずはミニーに会わなきゃ」
そこから書斎までは、それほど遠くはなかった。
部屋に入ってまず目を惹いたのが、壁一面に広がる大きな本棚だった。
そこにはカラフルな表紙の本がビッシリと詰まっている。
大きな暖炉や机も置いてあり、それほど広くはなく、落ち着いた部屋だった。
そして暖炉の前に、可愛いピンクのドレスを着た、王様と似た姿の女性と、紫のドレスを着たアヒルのような女性が立っている。
「やあ、ミニー、デイジー!」
王様が彼らに向かって手を振ると、二人の女性は優しく微笑みながらこちらに歩み寄ってきた。
「お帰りなさい、王様。そちらの方は?」
「彼女はミキ。今日からこの城に住ませてあげたいんだ」
ピンクのドレスの女性と王様が、私を見上げた。
紫のドレスの女性は、嬉しそうに顔の横で手を合わせる。
「まぁ、久しぶりのお客様ね! この頃、お客様の数がめっきり減って寂しかったんですよ」
「ふふっ。そうね、デイジー」
ピンクのドレスの女性は、紫のドレスの女性を見ながら微笑んだ。
そして、私の方を向く。
「私はミニー。そして彼女は、私の一番のお友達、デイジーよ。よろしくね、ミキ」
「・・・よろしく」
私は一言、そう呟いただけだった。
全く表情のない顔で言われたのに驚いたのか、ミニーとデイジーが少し目を丸くする。
・・・やっぱり、笑うのは苦手だ。
私は少し俯くと、彼女たちから目をそらした。
「さあ、今度は君の部屋に案内しよう。長旅で疲れただろう?」
部屋に流れた妙な空気を気にしてか、王様がすかさず口を開いた。
先に歩き出した王様の後を、私は黙ってついて行く。
ミニーとデイジーが、こちらの背中をジッと見つめているのが感じられた。
二人は、無愛想な私を見てどう思っただろうか。
でも・・・今更、そんなことは何とも思わなかった。
別に何と思われてようがどうでもいい。
だって、十二年間ずっとそうやって生きてきたんだから。
みんな、私の周りから去っていった。
もう失うものは何もない。
でも、たった一人だけ―――あの子だけは、失いたくなかった。
唯一、私に向かって純粋な笑顔を見せてくれた、あの子だけは――――。
「さあ、着いたよ。今日からここが君の部屋だ」
そう言って案内されたのは、かなり豪華な部屋だった。
「こんなに綺麗な部屋、使わせてもらっていいの?」
「ああ、もちろんさ。何か足りない物があったら言ってくれればいいよ」
王様は笑顔でそう言ったが、やはり少し抵抗があった。
私は恐る恐るベッドに歩み寄ると、その上に座る。
お尻がかなり沈み込んだ。
ものすごく、ふかふかしている。
そんな私の様子を見て、王様は笑った。
「少しずつ慣れていけばいいよ。明日は城の中を案内してあげよう。今日はもうお休み」
窓の外を見てみると、もう真っ暗だった。
グミシップに乗っていた時間が、思ったより長かったのかもしれない。
「うん、お休みなさい」
その言葉を聞くと、王様は部屋から出て行った。
私はベッドの上に寝転ぶと、ふかふかの枕に頭を沈める。
薄いカーテンレースが天井から吊り下げられているベッドは、見るからに高そうな物だった。
彼が王様だということを疑った自分が恥ずかしくなってくる。
・・・まだ、自分が異世界に来ているという実感がわかなかった。
ふと、自分の故郷を思い出す。
決して大きいとは言えないけれど、とても賑やかで明るい街。
レイディアントガーデン。
あの街の名を、私は気に入っていた。
『輝ける庭』という名前に相応しく、あの街はとっても生き生きしている。
―――そう、私には眩しすぎる場所だった。
だんだん、瞼が重たくなってくる。
きっと、興奮しっぱなしだったので疲れたのだろう。
薄れゆく意識の中で考える。
私は、あの街にあってはいけない存在だったんだ。
誰も、私なんか必要としてなかったんだ。
きっと今だって、誰も私の事なんか心配していない。
私がいなくなったことすら気付いていないかもしれない。
あの街に、私はいらなかった。
王様に案内されて長い廊下を歩いている間も、ずっと興奮しっぱなしだ。
まず最初に驚いたのは、グミシップ乗り場にいたシマリスの兄弟だった。
二人とも手のひらサイズの大きさで、名前をチップとデールというらしい。
あんなに小さい体なのに、グミシップの整備を担当しているそうだ。
次に驚いたのが、動く箒だ。
今も、三本の箒がバケツを両手にこちらに向かって歩いてくる。
私が不思議そうな目で見ていることに気がついたのか、王様も立ち止まって箒を目で追った。
「彼らは魔法の力で動いてるんだよ。僕が師匠に教えてもらったんだ」
「王様の師匠?」
尋ねながらも、私は自分たちの横を通り過ぎてゆく箒に釘付けになっている。
「うん、イェン・シッド様っていう人なんだ。もしかしたら、ミキも会う機会があるかもしれないね」
そう言うと、王様は再び歩き出した。
「さあ、書斎へ行こう。まずはミニーに会わなきゃ」
そこから書斎までは、それほど遠くはなかった。
部屋に入ってまず目を惹いたのが、壁一面に広がる大きな本棚だった。
そこにはカラフルな表紙の本がビッシリと詰まっている。
大きな暖炉や机も置いてあり、それほど広くはなく、落ち着いた部屋だった。
そして暖炉の前に、可愛いピンクのドレスを着た、王様と似た姿の女性と、紫のドレスを着たアヒルのような女性が立っている。
「やあ、ミニー、デイジー!」
王様が彼らに向かって手を振ると、二人の女性は優しく微笑みながらこちらに歩み寄ってきた。
「お帰りなさい、王様。そちらの方は?」
「彼女はミキ。今日からこの城に住ませてあげたいんだ」
ピンクのドレスの女性と王様が、私を見上げた。
紫のドレスの女性は、嬉しそうに顔の横で手を合わせる。
「まぁ、久しぶりのお客様ね! この頃、お客様の数がめっきり減って寂しかったんですよ」
「ふふっ。そうね、デイジー」
ピンクのドレスの女性は、紫のドレスの女性を見ながら微笑んだ。
そして、私の方を向く。
「私はミニー。そして彼女は、私の一番のお友達、デイジーよ。よろしくね、ミキ」
「・・・よろしく」
私は一言、そう呟いただけだった。
全く表情のない顔で言われたのに驚いたのか、ミニーとデイジーが少し目を丸くする。
・・・やっぱり、笑うのは苦手だ。
私は少し俯くと、彼女たちから目をそらした。
「さあ、今度は君の部屋に案内しよう。長旅で疲れただろう?」
部屋に流れた妙な空気を気にしてか、王様がすかさず口を開いた。
先に歩き出した王様の後を、私は黙ってついて行く。
ミニーとデイジーが、こちらの背中をジッと見つめているのが感じられた。
二人は、無愛想な私を見てどう思っただろうか。
でも・・・今更、そんなことは何とも思わなかった。
別に何と思われてようがどうでもいい。
だって、十二年間ずっとそうやって生きてきたんだから。
みんな、私の周りから去っていった。
もう失うものは何もない。
でも、たった一人だけ―――あの子だけは、失いたくなかった。
唯一、私に向かって純粋な笑顔を見せてくれた、あの子だけは――――。
「さあ、着いたよ。今日からここが君の部屋だ」
そう言って案内されたのは、かなり豪華な部屋だった。
「こんなに綺麗な部屋、使わせてもらっていいの?」
「ああ、もちろんさ。何か足りない物があったら言ってくれればいいよ」
王様は笑顔でそう言ったが、やはり少し抵抗があった。
私は恐る恐るベッドに歩み寄ると、その上に座る。
お尻がかなり沈み込んだ。
ものすごく、ふかふかしている。
そんな私の様子を見て、王様は笑った。
「少しずつ慣れていけばいいよ。明日は城の中を案内してあげよう。今日はもうお休み」
窓の外を見てみると、もう真っ暗だった。
グミシップに乗っていた時間が、思ったより長かったのかもしれない。
「うん、お休みなさい」
その言葉を聞くと、王様は部屋から出て行った。
私はベッドの上に寝転ぶと、ふかふかの枕に頭を沈める。
薄いカーテンレースが天井から吊り下げられているベッドは、見るからに高そうな物だった。
彼が王様だということを疑った自分が恥ずかしくなってくる。
・・・まだ、自分が異世界に来ているという実感がわかなかった。
ふと、自分の故郷を思い出す。
決して大きいとは言えないけれど、とても賑やかで明るい街。
レイディアントガーデン。
あの街の名を、私は気に入っていた。
『輝ける庭』という名前に相応しく、あの街はとっても生き生きしている。
―――そう、私には眩しすぎる場所だった。
だんだん、瞼が重たくなってくる。
きっと、興奮しっぱなしだったので疲れたのだろう。
薄れゆく意識の中で考える。
私は、あの街にあってはいけない存在だったんだ。
誰も、私なんか必要としてなかったんだ。
きっと今だって、誰も私の事なんか心配していない。
私がいなくなったことすら気付いていないかもしれない。
あの街に、私はいらなかった。