信じる心
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その後、私は彼に城のことを色々と教えてもらった。
本当に、城はとても広かった。
しかし、そのほとんどの部屋が何のために存在しているのかは分からなかった。
白い壁があるだけの部屋や、階段があるだけのスペース・・・・そういったものがほとんどだったような気がする。
意味なんていらないのかもしれない。
彼らの存在自体が、何の意味を持っているのか分からないんだから。
「なんせ無駄に広い城だからな。また分からないことがあったら聞いていいぜ」
城の外にある真っ暗な街を見下ろしながら、アクセルは言った。
今私たちは、始終闇に包まれた街のビルの屋上に来ている。
その縁で、足を投げ出しながら座り込んでいた。
辺りは恐ろしいくらい静寂に包まれている。
街と言っても、人なんて1人もいない。
何かいたとしてもノーバディーかハートレスぐらいだろう。
ここも機関の支配下に入っているらしい。
所々に輝くネオンライトが、まわりの闇を一層際だたせていた。
「・・・やけに親切なのね」
私は街を見ながら、すぐ横に座っているアクセルに話しかける。
彼は、軽く肩を竦めた。
「新しい仲間に当然の対応をしただけさ。ラクシーヌは冷たすぎんだよ」
「当然の対応、ねぇ・・・」
「・・・何だよ?」
私は、疑いの視線を彼に向ける。
もしかすると、彼は―――。
「あなた、私を利用しようとしてるんじゃないの? 親切にして自分を信頼させておいて、自分の手駒として使う・・・とか」
彼は、一瞬だけ驚いた表情をこちらに向けた。
しかしすぐに元に戻り、再び街を見る。
「・・・なんでそう思うんだ?」
彼の質問に、私はニコッと微笑んだ。
「私もそうしようと思ってたから」
「マジかよ・・・」
「冗談っ」
彼は拍子抜けしたように私の顔をしばらく見つめていたが、視線をそらすと参ったように頭を掻いた。
その様子を見て、私は思わず笑ってしまった。
私の笑い声を聞きながら、彼は怪訝そうな顔をする。
「何で笑う」
「だって、いかにも騙された~って顔するんだもん」
「お前なぁ・・・」
「あれっ? 先に騙そうとしてきたのはどっちだっけ?」
「・・・」
呆れたような、困ったような顔をする彼を見て、私は微笑んだ。
「ごめんごめん。でも、これでお相子だよね? ・・・ふふっ、私たち、いいコンビになれそう」
「何でお前とコンビ組まなきゃいけねぇんだよ」
「じゃあ、友達?」
「・・・俺たちに友情なんて芽生えない」
いきなり、彼の口調が真面目になった。
私は微笑むのを止める。
「心がない俺たちに『友情』なんて感じられない。仲良くなんかなれない。お前も覚えておいた方がいいぜ。『機関には味方なんて存在しない』」
街を見ながら、彼はそう言った。
私も闇に包まれた街を見つめる。
・・・確かに、そうなのかもしれない。
友達は一緒にいて楽しいと思える人のことをいうが、心が無い彼らに『楽しい』なんて感情が生まれるわけない。
機関では、みんなが敵。
どんな感情を見せても、それは全て偽りの気持ち。
誰も、何も信じてはいけない。
でも、そんなの悲しすぎる。
私は、軽く顔を伏せた。
人を疑いながら生きていくなんて、とても虚しくて悲しいことだということを、私は知っている。
常に相手を疑いながら話をしても、疲れるだけだ。
そんなことをしていたら、いつまでたっても心は―――。
「・・・あなたのことも、信じちゃいけないの?」
私は真っ直ぐに彼を見つめながら尋ねた。
彼も心の存在に疑問を抱いているのが、何となく感じられたのだ。
まるで、昔の私のように。
『心って何だろう』
そう考えて止まなかった、あの頃の私と。
「・・・お前、俺の話聞いてたか? 心が無いのに信じるも何もないんだよ」
「じゃあ、試してみようよ。どれだけお互いのことが信じられるか」
「はぁ?」
怪訝そうな顔をする彼に、私は微笑んだ。
「やってみなくちゃ分からないよ。本当に私たちはお互いを信頼することが出来ないのか・・・。もし出来たら、すごい発見だよね?」
「・・・馬鹿か、お前」
彼は、こちらに軽蔑の視線を送ってきた。
「そんな無駄なことして何の得になるんだよ。甘ったれた考え方してると、ここでは生き残れねぇぞ? 見たところ闇の力もそんなに強くないみたいだしな」
「あなたよりも弱いってこと?」
「闇の力はそいつの強さと同じだ」
「なら、試しに戦ってみる?」
私は冗談っぽく言ってみた。
・・・実は、機関に入る前に力を抑えておいたのだ。
こんな機関のために、私の力を全て使いたくはない。
何の罪のない人を傷付けたくはない。
私の言葉を聞くと、彼は肩を竦めた。
「止めとくよ。新人をいたぶる趣味はないんでね」
「そう? 残念」
私も、彼に習って肩を竦めてみせる。
「でも、私は信じるよ。あなたのこと」
「・・・勝手にしろ」
そう言うと、彼は立ち上がった。
「俺はお前を信じる気はないし、何かあっても助けるつもりもない。死んだって悪く思うなよ」
「大丈夫。私はそんな簡単には死なないから」
笑顔で言う私を見下ろしながら、彼は呆れたようにため息を吐いた。
「どうだかね・・・」
そう呟くと、城に向かって歩き出す。
「そろそろ戻るぞ。指令が出されてたら厄介だからな」
「うん」
私も立ち上がると、彼の後を追う。
私が彼を信じ続け、彼も人を信じることを知ってくれたら、とても素敵なことだと思う。
でも、あくまで優先すべきはミッキーからの頼みだ。
もし彼が私のすべきことに支障をきたすようなら、消すしかなくなるかもしれないが。
その時、ふと思い立った。
「そういえば私たち、まだちゃんと自己紹介してないよね?」
彼の背中に向かって話しかける。
「私、ミキ。よろしくね」
「・・・アクセルだ」
それからはお互い一言も喋らず、城へ向かって歩いていった。
本当に、城はとても広かった。
しかし、そのほとんどの部屋が何のために存在しているのかは分からなかった。
白い壁があるだけの部屋や、階段があるだけのスペース・・・・そういったものがほとんどだったような気がする。
意味なんていらないのかもしれない。
彼らの存在自体が、何の意味を持っているのか分からないんだから。
「なんせ無駄に広い城だからな。また分からないことがあったら聞いていいぜ」
城の外にある真っ暗な街を見下ろしながら、アクセルは言った。
今私たちは、始終闇に包まれた街のビルの屋上に来ている。
その縁で、足を投げ出しながら座り込んでいた。
辺りは恐ろしいくらい静寂に包まれている。
街と言っても、人なんて1人もいない。
何かいたとしてもノーバディーかハートレスぐらいだろう。
ここも機関の支配下に入っているらしい。
所々に輝くネオンライトが、まわりの闇を一層際だたせていた。
「・・・やけに親切なのね」
私は街を見ながら、すぐ横に座っているアクセルに話しかける。
彼は、軽く肩を竦めた。
「新しい仲間に当然の対応をしただけさ。ラクシーヌは冷たすぎんだよ」
「当然の対応、ねぇ・・・」
「・・・何だよ?」
私は、疑いの視線を彼に向ける。
もしかすると、彼は―――。
「あなた、私を利用しようとしてるんじゃないの? 親切にして自分を信頼させておいて、自分の手駒として使う・・・とか」
彼は、一瞬だけ驚いた表情をこちらに向けた。
しかしすぐに元に戻り、再び街を見る。
「・・・なんでそう思うんだ?」
彼の質問に、私はニコッと微笑んだ。
「私もそうしようと思ってたから」
「マジかよ・・・」
「冗談っ」
彼は拍子抜けしたように私の顔をしばらく見つめていたが、視線をそらすと参ったように頭を掻いた。
その様子を見て、私は思わず笑ってしまった。
私の笑い声を聞きながら、彼は怪訝そうな顔をする。
「何で笑う」
「だって、いかにも騙された~って顔するんだもん」
「お前なぁ・・・」
「あれっ? 先に騙そうとしてきたのはどっちだっけ?」
「・・・」
呆れたような、困ったような顔をする彼を見て、私は微笑んだ。
「ごめんごめん。でも、これでお相子だよね? ・・・ふふっ、私たち、いいコンビになれそう」
「何でお前とコンビ組まなきゃいけねぇんだよ」
「じゃあ、友達?」
「・・・俺たちに友情なんて芽生えない」
いきなり、彼の口調が真面目になった。
私は微笑むのを止める。
「心がない俺たちに『友情』なんて感じられない。仲良くなんかなれない。お前も覚えておいた方がいいぜ。『機関には味方なんて存在しない』」
街を見ながら、彼はそう言った。
私も闇に包まれた街を見つめる。
・・・確かに、そうなのかもしれない。
友達は一緒にいて楽しいと思える人のことをいうが、心が無い彼らに『楽しい』なんて感情が生まれるわけない。
機関では、みんなが敵。
どんな感情を見せても、それは全て偽りの気持ち。
誰も、何も信じてはいけない。
でも、そんなの悲しすぎる。
私は、軽く顔を伏せた。
人を疑いながら生きていくなんて、とても虚しくて悲しいことだということを、私は知っている。
常に相手を疑いながら話をしても、疲れるだけだ。
そんなことをしていたら、いつまでたっても心は―――。
「・・・あなたのことも、信じちゃいけないの?」
私は真っ直ぐに彼を見つめながら尋ねた。
彼も心の存在に疑問を抱いているのが、何となく感じられたのだ。
まるで、昔の私のように。
『心って何だろう』
そう考えて止まなかった、あの頃の私と。
「・・・お前、俺の話聞いてたか? 心が無いのに信じるも何もないんだよ」
「じゃあ、試してみようよ。どれだけお互いのことが信じられるか」
「はぁ?」
怪訝そうな顔をする彼に、私は微笑んだ。
「やってみなくちゃ分からないよ。本当に私たちはお互いを信頼することが出来ないのか・・・。もし出来たら、すごい発見だよね?」
「・・・馬鹿か、お前」
彼は、こちらに軽蔑の視線を送ってきた。
「そんな無駄なことして何の得になるんだよ。甘ったれた考え方してると、ここでは生き残れねぇぞ? 見たところ闇の力もそんなに強くないみたいだしな」
「あなたよりも弱いってこと?」
「闇の力はそいつの強さと同じだ」
「なら、試しに戦ってみる?」
私は冗談っぽく言ってみた。
・・・実は、機関に入る前に力を抑えておいたのだ。
こんな機関のために、私の力を全て使いたくはない。
何の罪のない人を傷付けたくはない。
私の言葉を聞くと、彼は肩を竦めた。
「止めとくよ。新人をいたぶる趣味はないんでね」
「そう? 残念」
私も、彼に習って肩を竦めてみせる。
「でも、私は信じるよ。あなたのこと」
「・・・勝手にしろ」
そう言うと、彼は立ち上がった。
「俺はお前を信じる気はないし、何かあっても助けるつもりもない。死んだって悪く思うなよ」
「大丈夫。私はそんな簡単には死なないから」
笑顔で言う私を見下ろしながら、彼は呆れたようにため息を吐いた。
「どうだかね・・・」
そう呟くと、城に向かって歩き出す。
「そろそろ戻るぞ。指令が出されてたら厄介だからな」
「うん」
私も立ち上がると、彼の後を追う。
私が彼を信じ続け、彼も人を信じることを知ってくれたら、とても素敵なことだと思う。
でも、あくまで優先すべきはミッキーからの頼みだ。
もし彼が私のすべきことに支障をきたすようなら、消すしかなくなるかもしれないが。
その時、ふと思い立った。
「そういえば私たち、まだちゃんと自己紹介してないよね?」
彼の背中に向かって話しかける。
「私、ミキ。よろしくね」
「・・・アクセルだ」
それからはお互い一言も喋らず、城へ向かって歩いていった。
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