ショート ver. ~ifの世界線~
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私の子供、美弥の話しをしたいと思う。
去年不慮の事故にあって、目が見えなくなってしまった。
私の妻、美弥の母親もその事故に巻き込まれ、亡くなってしまっている。
そんな不幸が重なって、美弥は憔悴して家から出る事が無くなった。
私はそんな美弥をずっと支えてきた。
しかし…
私:「海外に転勤…ですか…」
上司:「あぁ。ただ、昇級でもある。悪い話しではないと思うが?」
私は凄く悩んだ。
今の状態の娘を海外なんて連れて行くわけにはいかないだろう。
ただ、母親や頼れる親族はいない。
それから色々と調べ、ある団体にお願いすることにした。
+++++
奏斗:「それじゃあ、こちらが契約書ですね。まずは、パートナーを紹介しますね。って、おい!セラ‼」
一匹の大きな犬が娘の元に走り寄ってきた。
美弥:「えっ?何!?」
父:「この子が娘のパートナーですか?」
奏斗:「いや!コイツはえっと。」
何やら焦った様子だ。
雲雀:「てか、初めてじゃねぇ?セラおが自ら行くなんてな。」
ここのスタッフだろうか、嬉しそうにそう話しながら出てきた。
雲雀:「おいセラお、お前はこの子のパートナーになりたいんか?」
そう問うと、娘の横に伏せた。
奏斗:「え~っと…一応別の子をと思ってたんですけど。コイツが選んだので、この子って事で良いっすかね?ハハッ…w」
父:「この子が美弥の相棒だ。名前は、えーっと…」
奏斗:「セラフです。」
父:「だそうだ、美弥が出かけたり、動く時に美弥の目になってくれる。」
美弥:「でも私、外なんて…」
父:「まだ人生長いんだ。ずっと引き篭もる訳にもいかないだろう?」
美弥:「でも…」
父:「それに、私も1年は日本に帰れないんだよ。」
奏斗:「まぁ、セラフと過ごしてみて、やっぱりってなれば、また考えましょう。あと、身の回り、特に食事面は雲雀とアキラが訪問して作ります。洗濯は女性の方が良いと思うので、そちらを派遣します。」
父:「よろしくお願いします。」
奏斗:「それじゃあ、セラフへの指示の出し方とか、歩き方とかちょっとやってみようか。」
何だかんだ言いながらも、セラフとの練習を始めた。
雲雀:「えっ?今までこういう犬使った事ある?」
美弥:「いいえ。犬も初めて触ったと思います。」
雲雀:「そうなん?なら、めっちゃ相性良いんやな。」
父:「そうなんですか?」
雲雀:「長年一緒にいる俺等より、スムーズかもしれん。普段コイツをお世話してるアキラにも見せてやりてえから、ちょっと呼ぶわ!」
インカムで呼ばれ、アキラという人が来た。
アキラ:「何でセラ夫?」
奏斗:「セラフが自分で選んだの。」
アキラ:「へぇ、あのセラ夫が…」
雲雀:「てか見て!めっちゃ相性良くないか?」
アキラ:「確かに…」
+++++
まだ娘は乗り気ではなかったが、契約を済ませて、まだ私がいる間に慣れて貰おうとセラフを家に招き、ヘルパーとして雲雀さんやアキラさんが娘用の食事を作りに来てくれるようになった。
父:「いらっしゃい。よろしく頼みます。」
雲雀:「まだ、塞ぎ込んだまま?」
父:「ええ…アニマルセラピーにも良いかと思ったんですが、やっぱり無理なのかも。」
雲雀:「そっかぁ…」
そんな話しをしながら、リビングへ。
雲雀:「美弥ちゃん、セラお!元気か?」
雲雀さんの声にセラフは嬉しそうに尻尾を振った。
美弥:「いらっしゃい。元気は元気ですよ。」
雲雀:「そっかぁ。んじゃあさぁ、お願いがあるんやけど、セラおの散歩に付き合ってくれんか?訓練された犬とはいえ、ずっと室内で過ごすのも病気になったりするからさ。」
美弥:「それなら、雲雀さんが行ってくれたら…」
雲雀:「そうしてやりたいのは山々なんやけど、もう美弥ちゃんの言う事しか聞かんのよ。」
セラフは二人のやり取りの意味が分かっているかのように、娘の足に擦り寄った。
父:「美弥、少しで良い。行っておいで。」
美弥がハーネスを手に取った。
私も雲雀さんも少し驚いたが、セラフは嬉しそう。
美弥:「スー…セラフ、ドア。」
美弥は大きく深呼吸して、セラフに指示を出した。
セラフは玄関まで行き、止まった。
美弥:「グッド。」
雲雀:「指示も大丈夫そうやな。」
出てすぐ、美弥は止まってしまった。
セラフが不思議そうに美弥を見た。
雲雀:「どなんしたんや?」
美弥:「人が多そうで…」
雲雀:「歩くの怖いんやな。大丈夫!セラおが君の目になるから、コイツを信じて。」
それを聞いて美弥がハーネスをギュッと握った。
するとセラフの顔つきが少し変わったような気がした。
ちゃんと人を避けたり、自転車や車が来てたら止まる等、セラフは完璧に誘導して、とあるコンビニに着いた。
雲雀:「疲れたやろ。このコンビニで何か買おっか。」
店内に入ると、雲雀は定員に声をかけた。
雲雀:「やっほー。店長元気~?」
店長:「おっ、今日もトレーニングか?」
雲雀:「まぁ、そんな感じか。この子、ここら辺に住んでる子で、もしかしたら、ここに買い物に来るかもしれんから、そん時はよろしく頼むな。」
店長:「あぁ。欲しいもの言ってくれたら持ってくるから、気兼ねなく声掛けてね。」
美弥:「ありがとうございます。」
店長:「バイトの子たちにも伝えておくよ。」
雲雀:「頼んだ。」
コンビニの隣の公園にあるベンチに座り、休憩する事にした。
雲雀:「はい、コーヒー。セラおには水をあげような。」
美弥:「それ…私があけても良いですか?」
父:「えっ?」
私は娘の発言に驚いた。
きちんとお世話をしようとしている姿に、娘は変わってきたのかもしれないと思った。
雲雀:「ええで!このシリコンカップ。で、ここ押すとコップのようになるの分かるか?…で、この水を注いで。そう。で、セラおの前に置く。」
美弥:「こう…かな?」
雲雀:「そう、出来てるで。セラおも美味しそうに飲んどる。」
この外出以降、まだ外に出る事は抵抗があるようだが、セラフのお世話を積極的に行うようになった。
+++++
アキラ:「お邪魔します。今日はお父様はお仕事かな?」
美弥:「あっ、アキラさんだよ。セラ、行っといで。」
アキラが入ってくるなり、美弥はセラフにそう話しかけると、セラフは勢いよくアキラの元へ走って行った。
アキラ:「ちょっ!セラ夫!あなた、手加減ってものを…!」
そう言いながらも、嬉しそうに撫でてあげている。
アキラ:「最近お世話も板についてきたって雲雀から聞きましたが、困っていることとかありませんか?」
美弥:「そうですね…。あっ。」
アキラ:「何かありました?」
美弥:「これです。」
アキラ:「ん?」
アキラが美弥の方を向くと、セラフがブラシを口にくわえて、美弥に渡そうとしている。
アキラ:「ブラッシングですか?」
美弥:「そうなんです。1日1回って言われたと思うんですけど、最近何度もこうやってブラシを渡してくるんです。あまりするのも良くないと父がネットで調べてくれたんですけど。」
アキラ:「ブラッシング!?セラ夫、あまり触られるのを好まないはずでしたが。ちょっと私がしてみましょうか?状態観察も兼ねて。」
そう言って美弥からブラシを預かり、セラフに近付くも逃げられてしまった。
アキラ:「ですよね…昔からブラッシングやシャンプーをするのが大変だったんですよ。」
セラフはアキラからブラシを取り、また美弥の元へ。
美弥:「朝やったんだけどな…」
そう言いながらも、セラフにブラシをかけてあげるととても嬉しそう。
アキラ:「多分、貴方とのスキンシップなんでしょう。おそらく、手で撫でるだけでも喜ぶのでは?」
美弥がブラシを置いて、手で撫でるとお腹を見せて喜んでいる。
アキラ:「ここだけ見ると、普通のペットですね。ww」
+++++
それから私は海外へと飛び立った。
娘の情報は、奏斗さんからメールで届くようになっている。
時には、セラフと遊んでいる美弥の動画が送られてくる事もあった。
おそらく、雲雀さんかアキラさんが撮ったのだろう。
まだ、一人で気軽に外出は難しいようだが、雲雀さんやアキラさんが一緒だと、出掛けるようになったようで、私は凄く安心している。
ある日、奏斗さんからのメールで、こんな文章があった。
“ここの病院で、手術出来れば彼女ももしかしたら見えるようになるのではないでしょうか?”
そう書かれた一文と、URLが貼られてあった。
私はそれを見て、すぐさまその病院に連絡を取り、色々とやりとりを行っていた。
+++++
雲雀:「そういやぁ、もうすぐお父さん帰ってくるんじゃねぇか?」
美弥:「そうですね。今度の日曜日って言ってました。」
雲雀:「1年もよく一人で頑張ったな。」
一通り仕事を終えた雲雀がそう言いながら頭を撫でてくれた。
美弥:「雲雀さんやアキラさん、奏斗さんやセラフがいてくれたからです。」
セラフは分かっているのか、尻尾を振って嬉しいを表現している。
+++++
私は、嬉しいニュースを抱えて急いで我が家へと帰った。
父:「ただいま。」
美弥:「おかえりなさい。」
父:「セラフ、美弥をありがとうな。」
セラフが擦り寄ってきてくれた。
父:「美弥に良い知らせがあるんだ。」
美弥:「良い知らせ?」
父:「お前の目が見えるようになるかもしれないんだ。」
美弥:「え?」
美弥は驚いた表情をした。
父:「奏斗さんが調べてくれて、とある病院がそういった手術をしているそうなんだ。手術、受けてみないか?」
美弥:「それを受ければ、見えるって事?」
父:「まだ、検査とかしてみて手術出来るかどうか分からない。それに100%治るとは言い切れないが。」
私は美弥が喜んでくれるものだと疑わなかったのだが、実際は違った。
美弥は困った表情をしている。
父:「美弥?嬉しくないのか?」
美弥:「ううん。嬉しいけど…」
父:「どうかしたのか?」
美弥:「見えるようになったら、セラフ…もう帰ってしまうの?」
父:「そうだな。おそらく、次に助けが必要な人の元へ行くんじゃないか?」
美弥:「そっか…困ってる人沢山いるもんね。」
+++++
父:「頑張っておいで。」
美弥:「行ってきます。セラフよろしく。」
美弥は手術室へと入って行った。
セラフは、置いていかれた事が不安なのか、落ち着き無く動き回っている。
数時間後、私とセラフが待つ病室に美弥が運ばれてきた。
目に包帯が巻かれており、まだ麻酔で眠っているそう。
セラフは、美弥の様子を確認すると、ベッドの横で伏せた。
少しするとセラフが立ち上がり、美弥の手をペロッと舐めた。
美弥:「…セラフ。」
父:「美弥、起きたのかい?調子はどうだい?」
美弥:「まだよく分からない。」
父:「もうすぐ看護師さんが来るよ。それにしても、セラフはよく美弥が目覚めたって分かったな。」
看護師:「包帯外す間は、目を閉じたままで。…外し終わったので、ゆっくり少しずつ目を開けて下さい。」
父:「…どうだい?見えるか?」
美弥:「うん。見える。セラフ、イケメンだったんだね。w」
私は心底安心した。
しかし、美弥は何故か嬉しそうには見えなかった。
少し検査をして、その日のうちに退院する事が出来た。
父:「それじゃ、セラフを返しに行こうか。」
美弥:「…うん。」
もう美弥の目は見えているのに、何故だかハーネスを付けた。
父:「美弥?」
美弥:「セラフ、ドア。」
セラフは病室のドアの前で止まった。
美弥:「グッド。」
そう言って優しく撫でた。
私は、娘が何故見えているのに見えないフリをしたのか、理解出来なかった。
私達は1年前に来た、施設へと着いた。
奏斗:「こんにちは。見えるようになりましたか?」
美弥:「おかげさまで。色々とお世話になりました。」
奏斗:「それは良かった。」
父:「セラフをお返しに来ました。雲雀さんやアキラさんにも大変お世話になって。ほら、美弥。セラフを奏斗さんにお返しして。」
美弥は一言も喋らず、セラフのハーネスを外し、リードをつけた。
セラフは外でハーネスを外された事に驚いているようで、ハーネスを口に咥えて美弥に渡そうとしている。
美弥:「セラ…1年間ありがとね。セラがいたから私…」
セラフの前にしゃがみ、頭を撫でながら話しかけたが、最後の方は涙で言葉が出なかった。
セラフは、美弥の涙を一生懸命に舐めて、慰めようとしている。
美弥:「正直、このまま見えないままの方が良いかもって思った。…けど、セラを必要としている人が大勢いるもんね…」
その言葉で、娘が嬉しそうにしなかった理由がやっと分かった。
でも、これは決まりなのだ。
私は心を鬼にした。
父:「さぁ、そろそろ奏斗さんにお返しして。」
美弥はギュッとセラフを抱きしめた。
そしてゆっくりと立ち上がり、リードを奏斗さんに渡した。
セラフは慌てたように、美弥の方に行こうする。
美弥:「セラフ、ステイ。」
娘の声掛けに、セラフの動きが止まった。
美弥:「グッド…バイバイ、セラフ…」
美弥はゲートの方へ歩き出した。
そして、ゲートを出ようとした瞬間。
セラフ:「ワン!ワン!」
初めてセラフが吠えた。
奏斗:「おい!セラフ!お前!」
セラフが必死にリードのロープを口に咥えて振り解こうとしている。
奏斗:「コラ!ステイ!」
奏斗の制止も聞かず暴れまわり、奏斗が手を放してしまった。
セラフ:「ワン!」
振り返らないようにしていたが、セラフの鳴き声と暴れっぷりに驚いて、振り返ってしまった。
美弥:「セラフ…」
セラフは美弥を足止めするように、美弥の周りをグルグルと回っている。
美弥:「ダメだよ、奏斗さんの所に戻んなきゃ。」
奏斗:「ほら、セラフ。戻っておいで。」
奏斗さんが近づいてくると、牙をむいて唸り声をあげている。
奏斗:「セラ…」
雲雀:「セラおって吠えたり、怒ったりするんやな。」
奏斗:「雲雀。」
アキラ:「私も初めて見ました。吠えたり感情を出すのはヘルパー犬失格です。彼は、もう普通の犬という事ですね。」
奏斗:「アキラ…。フフッ、そうだね。ねぇ、君が良ければさぁ、この子貰ってくれない?」
美弥:「えっ?」
奏斗:「もう、君から離れる気ないみたいだし?」
美弥:「良いんですか?」
アキラ:「長年一緒にいましたが、セラ夫のこんな姿は初めてみました。余程貴方の事が気に入ったのでしょう。ヘルパー犬としての務めを忘れる位にね。」
それを聞いた娘は泣きながらも嬉しそうにまたセラフの前にしゃがんだ。
美弥:「セラフ、私の家族になってくれる?これからも、一緒に過ごしてくれる?」
美弥の問いかけに、セラフはペロペロと顔を舐めて答えた。
美弥:「ありがとう。セラフ。」
美弥は立ち上がり、セラフのリードを握った。
すると、美弥の横に付いて指示を待っている。
美弥:「皆さん、本当に色々とありがとうございました。」
雲雀:「セラフの事、よろしくな!」
アキラ:「困った事があったら、いつでも連絡下さい。」
奏斗:「セラフにも会いたいから、また遊びに来てよ。」
美弥:「はい!ありがとうございます!行こ!セラフ!!」
セラフと娘は走って、駐車場の方へ行ってしまった。
父:「本当に良いのですか?」
奏斗:「ええ。あんなセラフは止められないでしょ。w」
去年不慮の事故にあって、目が見えなくなってしまった。
私の妻、美弥の母親もその事故に巻き込まれ、亡くなってしまっている。
そんな不幸が重なって、美弥は憔悴して家から出る事が無くなった。
私はそんな美弥をずっと支えてきた。
しかし…
私:「海外に転勤…ですか…」
上司:「あぁ。ただ、昇級でもある。悪い話しではないと思うが?」
私は凄く悩んだ。
今の状態の娘を海外なんて連れて行くわけにはいかないだろう。
ただ、母親や頼れる親族はいない。
それから色々と調べ、ある団体にお願いすることにした。
+++++
奏斗:「それじゃあ、こちらが契約書ですね。まずは、パートナーを紹介しますね。って、おい!セラ‼」
一匹の大きな犬が娘の元に走り寄ってきた。
美弥:「えっ?何!?」
父:「この子が娘のパートナーですか?」
奏斗:「いや!コイツはえっと。」
何やら焦った様子だ。
雲雀:「てか、初めてじゃねぇ?セラおが自ら行くなんてな。」
ここのスタッフだろうか、嬉しそうにそう話しながら出てきた。
雲雀:「おいセラお、お前はこの子のパートナーになりたいんか?」
そう問うと、娘の横に伏せた。
奏斗:「え~っと…一応別の子をと思ってたんですけど。コイツが選んだので、この子って事で良いっすかね?ハハッ…w」
父:「この子が美弥の相棒だ。名前は、えーっと…」
奏斗:「セラフです。」
父:「だそうだ、美弥が出かけたり、動く時に美弥の目になってくれる。」
美弥:「でも私、外なんて…」
父:「まだ人生長いんだ。ずっと引き篭もる訳にもいかないだろう?」
美弥:「でも…」
父:「それに、私も1年は日本に帰れないんだよ。」
奏斗:「まぁ、セラフと過ごしてみて、やっぱりってなれば、また考えましょう。あと、身の回り、特に食事面は雲雀とアキラが訪問して作ります。洗濯は女性の方が良いと思うので、そちらを派遣します。」
父:「よろしくお願いします。」
奏斗:「それじゃあ、セラフへの指示の出し方とか、歩き方とかちょっとやってみようか。」
何だかんだ言いながらも、セラフとの練習を始めた。
雲雀:「えっ?今までこういう犬使った事ある?」
美弥:「いいえ。犬も初めて触ったと思います。」
雲雀:「そうなん?なら、めっちゃ相性良いんやな。」
父:「そうなんですか?」
雲雀:「長年一緒にいる俺等より、スムーズかもしれん。普段コイツをお世話してるアキラにも見せてやりてえから、ちょっと呼ぶわ!」
インカムで呼ばれ、アキラという人が来た。
アキラ:「何でセラ夫?」
奏斗:「セラフが自分で選んだの。」
アキラ:「へぇ、あのセラ夫が…」
雲雀:「てか見て!めっちゃ相性良くないか?」
アキラ:「確かに…」
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まだ娘は乗り気ではなかったが、契約を済ませて、まだ私がいる間に慣れて貰おうとセラフを家に招き、ヘルパーとして雲雀さんやアキラさんが娘用の食事を作りに来てくれるようになった。
父:「いらっしゃい。よろしく頼みます。」
雲雀:「まだ、塞ぎ込んだまま?」
父:「ええ…アニマルセラピーにも良いかと思ったんですが、やっぱり無理なのかも。」
雲雀:「そっかぁ…」
そんな話しをしながら、リビングへ。
雲雀:「美弥ちゃん、セラお!元気か?」
雲雀さんの声にセラフは嬉しそうに尻尾を振った。
美弥:「いらっしゃい。元気は元気ですよ。」
雲雀:「そっかぁ。んじゃあさぁ、お願いがあるんやけど、セラおの散歩に付き合ってくれんか?訓練された犬とはいえ、ずっと室内で過ごすのも病気になったりするからさ。」
美弥:「それなら、雲雀さんが行ってくれたら…」
雲雀:「そうしてやりたいのは山々なんやけど、もう美弥ちゃんの言う事しか聞かんのよ。」
セラフは二人のやり取りの意味が分かっているかのように、娘の足に擦り寄った。
父:「美弥、少しで良い。行っておいで。」
美弥がハーネスを手に取った。
私も雲雀さんも少し驚いたが、セラフは嬉しそう。
美弥:「スー…セラフ、ドア。」
美弥は大きく深呼吸して、セラフに指示を出した。
セラフは玄関まで行き、止まった。
美弥:「グッド。」
雲雀:「指示も大丈夫そうやな。」
出てすぐ、美弥は止まってしまった。
セラフが不思議そうに美弥を見た。
雲雀:「どなんしたんや?」
美弥:「人が多そうで…」
雲雀:「歩くの怖いんやな。大丈夫!セラおが君の目になるから、コイツを信じて。」
それを聞いて美弥がハーネスをギュッと握った。
するとセラフの顔つきが少し変わったような気がした。
ちゃんと人を避けたり、自転車や車が来てたら止まる等、セラフは完璧に誘導して、とあるコンビニに着いた。
雲雀:「疲れたやろ。このコンビニで何か買おっか。」
店内に入ると、雲雀は定員に声をかけた。
雲雀:「やっほー。店長元気~?」
店長:「おっ、今日もトレーニングか?」
雲雀:「まぁ、そんな感じか。この子、ここら辺に住んでる子で、もしかしたら、ここに買い物に来るかもしれんから、そん時はよろしく頼むな。」
店長:「あぁ。欲しいもの言ってくれたら持ってくるから、気兼ねなく声掛けてね。」
美弥:「ありがとうございます。」
店長:「バイトの子たちにも伝えておくよ。」
雲雀:「頼んだ。」
コンビニの隣の公園にあるベンチに座り、休憩する事にした。
雲雀:「はい、コーヒー。セラおには水をあげような。」
美弥:「それ…私があけても良いですか?」
父:「えっ?」
私は娘の発言に驚いた。
きちんとお世話をしようとしている姿に、娘は変わってきたのかもしれないと思った。
雲雀:「ええで!このシリコンカップ。で、ここ押すとコップのようになるの分かるか?…で、この水を注いで。そう。で、セラおの前に置く。」
美弥:「こう…かな?」
雲雀:「そう、出来てるで。セラおも美味しそうに飲んどる。」
この外出以降、まだ外に出る事は抵抗があるようだが、セラフのお世話を積極的に行うようになった。
+++++
アキラ:「お邪魔します。今日はお父様はお仕事かな?」
美弥:「あっ、アキラさんだよ。セラ、行っといで。」
アキラが入ってくるなり、美弥はセラフにそう話しかけると、セラフは勢いよくアキラの元へ走って行った。
アキラ:「ちょっ!セラ夫!あなた、手加減ってものを…!」
そう言いながらも、嬉しそうに撫でてあげている。
アキラ:「最近お世話も板についてきたって雲雀から聞きましたが、困っていることとかありませんか?」
美弥:「そうですね…。あっ。」
アキラ:「何かありました?」
美弥:「これです。」
アキラ:「ん?」
アキラが美弥の方を向くと、セラフがブラシを口にくわえて、美弥に渡そうとしている。
アキラ:「ブラッシングですか?」
美弥:「そうなんです。1日1回って言われたと思うんですけど、最近何度もこうやってブラシを渡してくるんです。あまりするのも良くないと父がネットで調べてくれたんですけど。」
アキラ:「ブラッシング!?セラ夫、あまり触られるのを好まないはずでしたが。ちょっと私がしてみましょうか?状態観察も兼ねて。」
そう言って美弥からブラシを預かり、セラフに近付くも逃げられてしまった。
アキラ:「ですよね…昔からブラッシングやシャンプーをするのが大変だったんですよ。」
セラフはアキラからブラシを取り、また美弥の元へ。
美弥:「朝やったんだけどな…」
そう言いながらも、セラフにブラシをかけてあげるととても嬉しそう。
アキラ:「多分、貴方とのスキンシップなんでしょう。おそらく、手で撫でるだけでも喜ぶのでは?」
美弥がブラシを置いて、手で撫でるとお腹を見せて喜んでいる。
アキラ:「ここだけ見ると、普通のペットですね。ww」
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それから私は海外へと飛び立った。
娘の情報は、奏斗さんからメールで届くようになっている。
時には、セラフと遊んでいる美弥の動画が送られてくる事もあった。
おそらく、雲雀さんかアキラさんが撮ったのだろう。
まだ、一人で気軽に外出は難しいようだが、雲雀さんやアキラさんが一緒だと、出掛けるようになったようで、私は凄く安心している。
ある日、奏斗さんからのメールで、こんな文章があった。
“ここの病院で、手術出来れば彼女ももしかしたら見えるようになるのではないでしょうか?”
そう書かれた一文と、URLが貼られてあった。
私はそれを見て、すぐさまその病院に連絡を取り、色々とやりとりを行っていた。
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雲雀:「そういやぁ、もうすぐお父さん帰ってくるんじゃねぇか?」
美弥:「そうですね。今度の日曜日って言ってました。」
雲雀:「1年もよく一人で頑張ったな。」
一通り仕事を終えた雲雀がそう言いながら頭を撫でてくれた。
美弥:「雲雀さんやアキラさん、奏斗さんやセラフがいてくれたからです。」
セラフは分かっているのか、尻尾を振って嬉しいを表現している。
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私は、嬉しいニュースを抱えて急いで我が家へと帰った。
父:「ただいま。」
美弥:「おかえりなさい。」
父:「セラフ、美弥をありがとうな。」
セラフが擦り寄ってきてくれた。
父:「美弥に良い知らせがあるんだ。」
美弥:「良い知らせ?」
父:「お前の目が見えるようになるかもしれないんだ。」
美弥:「え?」
美弥は驚いた表情をした。
父:「奏斗さんが調べてくれて、とある病院がそういった手術をしているそうなんだ。手術、受けてみないか?」
美弥:「それを受ければ、見えるって事?」
父:「まだ、検査とかしてみて手術出来るかどうか分からない。それに100%治るとは言い切れないが。」
私は美弥が喜んでくれるものだと疑わなかったのだが、実際は違った。
美弥は困った表情をしている。
父:「美弥?嬉しくないのか?」
美弥:「ううん。嬉しいけど…」
父:「どうかしたのか?」
美弥:「見えるようになったら、セラフ…もう帰ってしまうの?」
父:「そうだな。おそらく、次に助けが必要な人の元へ行くんじゃないか?」
美弥:「そっか…困ってる人沢山いるもんね。」
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父:「頑張っておいで。」
美弥:「行ってきます。セラフよろしく。」
美弥は手術室へと入って行った。
セラフは、置いていかれた事が不安なのか、落ち着き無く動き回っている。
数時間後、私とセラフが待つ病室に美弥が運ばれてきた。
目に包帯が巻かれており、まだ麻酔で眠っているそう。
セラフは、美弥の様子を確認すると、ベッドの横で伏せた。
少しするとセラフが立ち上がり、美弥の手をペロッと舐めた。
美弥:「…セラフ。」
父:「美弥、起きたのかい?調子はどうだい?」
美弥:「まだよく分からない。」
父:「もうすぐ看護師さんが来るよ。それにしても、セラフはよく美弥が目覚めたって分かったな。」
看護師:「包帯外す間は、目を閉じたままで。…外し終わったので、ゆっくり少しずつ目を開けて下さい。」
父:「…どうだい?見えるか?」
美弥:「うん。見える。セラフ、イケメンだったんだね。w」
私は心底安心した。
しかし、美弥は何故か嬉しそうには見えなかった。
少し検査をして、その日のうちに退院する事が出来た。
父:「それじゃ、セラフを返しに行こうか。」
美弥:「…うん。」
もう美弥の目は見えているのに、何故だかハーネスを付けた。
父:「美弥?」
美弥:「セラフ、ドア。」
セラフは病室のドアの前で止まった。
美弥:「グッド。」
そう言って優しく撫でた。
私は、娘が何故見えているのに見えないフリをしたのか、理解出来なかった。
私達は1年前に来た、施設へと着いた。
奏斗:「こんにちは。見えるようになりましたか?」
美弥:「おかげさまで。色々とお世話になりました。」
奏斗:「それは良かった。」
父:「セラフをお返しに来ました。雲雀さんやアキラさんにも大変お世話になって。ほら、美弥。セラフを奏斗さんにお返しして。」
美弥は一言も喋らず、セラフのハーネスを外し、リードをつけた。
セラフは外でハーネスを外された事に驚いているようで、ハーネスを口に咥えて美弥に渡そうとしている。
美弥:「セラ…1年間ありがとね。セラがいたから私…」
セラフの前にしゃがみ、頭を撫でながら話しかけたが、最後の方は涙で言葉が出なかった。
セラフは、美弥の涙を一生懸命に舐めて、慰めようとしている。
美弥:「正直、このまま見えないままの方が良いかもって思った。…けど、セラを必要としている人が大勢いるもんね…」
その言葉で、娘が嬉しそうにしなかった理由がやっと分かった。
でも、これは決まりなのだ。
私は心を鬼にした。
父:「さぁ、そろそろ奏斗さんにお返しして。」
美弥はギュッとセラフを抱きしめた。
そしてゆっくりと立ち上がり、リードを奏斗さんに渡した。
セラフは慌てたように、美弥の方に行こうする。
美弥:「セラフ、ステイ。」
娘の声掛けに、セラフの動きが止まった。
美弥:「グッド…バイバイ、セラフ…」
美弥はゲートの方へ歩き出した。
そして、ゲートを出ようとした瞬間。
セラフ:「ワン!ワン!」
初めてセラフが吠えた。
奏斗:「おい!セラフ!お前!」
セラフが必死にリードのロープを口に咥えて振り解こうとしている。
奏斗:「コラ!ステイ!」
奏斗の制止も聞かず暴れまわり、奏斗が手を放してしまった。
セラフ:「ワン!」
振り返らないようにしていたが、セラフの鳴き声と暴れっぷりに驚いて、振り返ってしまった。
美弥:「セラフ…」
セラフは美弥を足止めするように、美弥の周りをグルグルと回っている。
美弥:「ダメだよ、奏斗さんの所に戻んなきゃ。」
奏斗:「ほら、セラフ。戻っておいで。」
奏斗さんが近づいてくると、牙をむいて唸り声をあげている。
奏斗:「セラ…」
雲雀:「セラおって吠えたり、怒ったりするんやな。」
奏斗:「雲雀。」
アキラ:「私も初めて見ました。吠えたり感情を出すのはヘルパー犬失格です。彼は、もう普通の犬という事ですね。」
奏斗:「アキラ…。フフッ、そうだね。ねぇ、君が良ければさぁ、この子貰ってくれない?」
美弥:「えっ?」
奏斗:「もう、君から離れる気ないみたいだし?」
美弥:「良いんですか?」
アキラ:「長年一緒にいましたが、セラ夫のこんな姿は初めてみました。余程貴方の事が気に入ったのでしょう。ヘルパー犬としての務めを忘れる位にね。」
それを聞いた娘は泣きながらも嬉しそうにまたセラフの前にしゃがんだ。
美弥:「セラフ、私の家族になってくれる?これからも、一緒に過ごしてくれる?」
美弥の問いかけに、セラフはペロペロと顔を舐めて答えた。
美弥:「ありがとう。セラフ。」
美弥は立ち上がり、セラフのリードを握った。
すると、美弥の横に付いて指示を待っている。
美弥:「皆さん、本当に色々とありがとうございました。」
雲雀:「セラフの事、よろしくな!」
アキラ:「困った事があったら、いつでも連絡下さい。」
奏斗:「セラフにも会いたいから、また遊びに来てよ。」
美弥:「はい!ありがとうございます!行こ!セラフ!!」
セラフと娘は走って、駐車場の方へ行ってしまった。
父:「本当に良いのですか?」
奏斗:「ええ。あんなセラフは止められないでしょ。w」
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