短編集

 何かを悟ったあとの急な冷めように振り回されることがよくある。
 彼氏の浮気とか、友人の嘘とか、ずっと考えてもなかなか思い出せない言葉とか物の名前とか。
 昔から好きの反対は無関心だと言うが、本当にその通りだと思う。冷めてしまうと、全部どうでもよくなる。自分でも驚くぐらいに。ゲームもアニメも映画でも一度もそんなことになったことはないのに。
「じゃあもう元彼の名前とか覚えてないとか」
「ほぼ覚えてないかな。喧嘩別れ浮気発覚別れした人は大体覚えてない」
 ピロートークになんでそんな会話になったのか、詳しい経緯は覚えていない。
 今の彼氏に不満なんてないし、大事にされているのも分かるから、私も彼を大事にしたいし、元彼の話なんてしたくもないが、したくない相手のことをもう覚えてもないことが何だか面白く思ってしまった。
「通行人と同じ感覚かも、興味ないから覚えてらんない。別れた理由だけは何となく覚えてる」
 最初は自分な薄情な人間だな、なんて思ったがだんだん浮気されたのは私なのに薄情も何もないし、逆に恨みもなく、全てを無関心が塗りつぶしてくれるのは有り難いことなんだと思うようになった。
「いろんなものに関心は確かにあるのに、無関心になるのも早いよな」
「うん、自覚ある」
 自分が思っているより私は物事に無関心なのかもしれない。だから冷めてしまうのも一瞬なのだろうか。
 それでも彼のことはきっと諦めきれない。そうであってほしい。
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