終わらぬ星巡り
2017年12月31日
斉藤結は軟禁状態にあった。先ほど神父姿の男性に日本に戻るためのヘリが準備されているという話を訊いたが、あの神父の言葉を彼女は真面に信用出来ないでいた。そもそも、彼女は日本に戻りたくないのだ。カルデアでの報奨金を使ってどこか別の国にでも渡ってやろうかと、この個室に閉じ込められてからずっと考えていたのだ。
しかし、そんな現実逃避とも言える甘い幻想は一瞬で打ち砕かれる。つい先ほど、部屋の外から銃声が聞こえたのである。そして近づいてきているために感じたサーヴァントのような魔力。あの神父やはり嘘ついたなと斉藤は舌打ちしながら、部屋の隅に隠れて外の様子を探る。足音が聞こえた。何者かが近づいている。彼女は咄嗟に左手の甲に触れた。サーヴァントとの契約を全て解いたために今はもうない令呪の跡に祈るように。
「魔術で足止めを……」
幸い、カルデアに来るまではからきしであった魔術もこの一年でかなり扱えるようになった。元々の血筋と優秀なキャスターたちの指導、そして多少の才能故だが、今はそれにかけるしかない。
覚悟を決めたとほぼ同士に入口のドアに大きな衝撃があり、ドアが拉げ始める。何度もドアぶつかるような音、そして最後の大きな一撃のあと、外の光が見えたと同時に敵に手を翳した――――
「無事のようだね。斉藤くん。ここには君だけのようだ」
「ホームズ!?なんで!?」
翳した手を下して驚きを喚くように発散した。
手短に説明を受けた後、藤丸を含めた、カルデア職員たちも既に数名を救出し、地下にあるシェルター替わりになるコンテナに向かうように言われた。今なら廊下に敵はいないとのことだった。
「……判った」
「ああ、私はまだやることがあるのでね。先に向かってくれたまえ」
彼の口ぶりだとまだ軟禁されていた部屋に職員たちがいるのだと斉藤は察した。なので言われた通りに地下へ向けて走った。しかし、最後に、一つだけ心残りを取りに戻った。自分のマイルームに彼女は全力で、肩で息をしながら戻った。そこには軟禁が解かれたあとに戻ろうと思って置いてきたものがあった。
カルデアのシステムが落ちかけているのか、半開きのまま止まっているドアを押し蹴って壊し中に入った。中は奇跡的にどこも荒れていなかったが何時までも此処にいるわけにもいかない。東館から冷気が迫ってきているのに彼女が気が付いていた。
「あった――――」
安堵の溜息のあと、それに縋りついた。
机の上に乗せられた銀色の入れ物。ずっと処分することも出来ずインテリアとして飾っていたが、今のこれには彼女が契約していたサーヴァントから貰ったものが全てではないが詰まっている。そのずしりと重みのあるそれを抱え、また彼女は全力で走り始める。
斉藤結は軟禁状態にあった。先ほど神父姿の男性に日本に戻るためのヘリが準備されているという話を訊いたが、あの神父の言葉を彼女は真面に信用出来ないでいた。そもそも、彼女は日本に戻りたくないのだ。カルデアでの報奨金を使ってどこか別の国にでも渡ってやろうかと、この個室に閉じ込められてからずっと考えていたのだ。
しかし、そんな現実逃避とも言える甘い幻想は一瞬で打ち砕かれる。つい先ほど、部屋の外から銃声が聞こえたのである。そして近づいてきているために感じたサーヴァントのような魔力。あの神父やはり嘘ついたなと斉藤は舌打ちしながら、部屋の隅に隠れて外の様子を探る。足音が聞こえた。何者かが近づいている。彼女は咄嗟に左手の甲に触れた。サーヴァントとの契約を全て解いたために今はもうない令呪の跡に祈るように。
「魔術で足止めを……」
幸い、カルデアに来るまではからきしであった魔術もこの一年でかなり扱えるようになった。元々の血筋と優秀なキャスターたちの指導、そして多少の才能故だが、今はそれにかけるしかない。
覚悟を決めたとほぼ同士に入口のドアに大きな衝撃があり、ドアが拉げ始める。何度もドアぶつかるような音、そして最後の大きな一撃のあと、外の光が見えたと同時に敵に手を翳した――――
「無事のようだね。斉藤くん。ここには君だけのようだ」
「ホームズ!?なんで!?」
翳した手を下して驚きを喚くように発散した。
手短に説明を受けた後、藤丸を含めた、カルデア職員たちも既に数名を救出し、地下にあるシェルター替わりになるコンテナに向かうように言われた。今なら廊下に敵はいないとのことだった。
「……判った」
「ああ、私はまだやることがあるのでね。先に向かってくれたまえ」
彼の口ぶりだとまだ軟禁されていた部屋に職員たちがいるのだと斉藤は察した。なので言われた通りに地下へ向けて走った。しかし、最後に、一つだけ心残りを取りに戻った。自分のマイルームに彼女は全力で、肩で息をしながら戻った。そこには軟禁が解かれたあとに戻ろうと思って置いてきたものがあった。
カルデアのシステムが落ちかけているのか、半開きのまま止まっているドアを押し蹴って壊し中に入った。中は奇跡的にどこも荒れていなかったが何時までも此処にいるわけにもいかない。東館から冷気が迫ってきているのに彼女が気が付いていた。
「あった――――」
安堵の溜息のあと、それに縋りついた。
机の上に乗せられた銀色の入れ物。ずっと処分することも出来ずインテリアとして飾っていたが、今のこれには彼女が契約していたサーヴァントから貰ったものが全てではないが詰まっている。そのずしりと重みのあるそれを抱え、また彼女は全力で走り始める。
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