銀桂の薫りはあなたの気を惹く -Exhibition -
VSバレンタイン
今年のバレンタインは土曜日。つまり、基本的に大学に行くなどの予定はなく、家にいればバレンタインイベントは回避できる。
のだが、今の俺には世界で一番可愛い彼女がいるので外出しないという選択肢はない。
「貴方が落としたのはこのデパ地下で買ったチョコレートボンボンですか? それとも私が作ったマカロンですか?」
「はいマカロンです!」
「貴方は嘘つきですね、何も落としていないでしょう?」
唐突は問いに対し、欲望に素直に応えると理不尽な返しをされた。
バレンタイン当日。薫ちゃんの家にお呼ばれした俺は、席についたところで二種類の洋菓子を見せられた。彼女の言う通り市販のチョコと手作りのチョコ。もちろんデパ地下の有名菓子も捨てがたいが俺が選ぶならば薫ちゃんが作ったお菓子以外にない。
「冗談。二つともどうぞ」
「やったーありがとー」
くすくすと笑い、悪戯を楽しむ薫ちゃんもとても可愛い。許した。
甘いチョコレートに対し、砂糖の入っていないミルクだけ入れたコーヒーもセットで用意してくれた。
「チョコレートリキュールもあるけど」
「えっ飲む」
「じゃあ夜に飲もっか」
至れり尽くせりとはまさにこのこと。薫ちゃんも、お家デートなのに外のデートと同じぐらい気合の入った可愛い服装をしていてまさに眼福。ロングのタイトスカートにスリットが入っていてチラりと覗くタイツ越しの足がとてもいい。トップスはニットに暖かそうな厚手のカーディガン。
「俺からも薫ちゃんにプレゼント」
取り出したのはラッピングされた箱。
「ありがとう! 開けるね」
丁寧に開封して、中から姿を現したのは細かい装飾が施されたグラス。
「綺麗」
「この前、普段使いしてるやつ割れちゃったって言ってたでしょ?」
「ありがとう、覚えててくれたんだ」
それはもちろん。
取り出したグラスをうっとりと眺めたあと、俺に視線を移して満面の笑みを向けた。
小さなものでももらったものは大切にする薫ちゃんにとってこのグラスも、他のものと同じように長く使ってくれたら嬉しい。
*
「チョコキスしてみない?」
「ぶっ…!? …ま待って、どこから仕入れたのその情報……」
まず薫ちゃんの作ってくれたマカロンを全て平らげ、テレビを見ながら残ったボンボンを食べていたところに、薫ちゃんから唐突な提案が出された。
チョコキスとは口の中にチョコレートを含みながらキスをするという名前そのままの行為である。
そして情報の仕入れ先も問題である。もし俺が思い浮かべる人物であればタダでは置かない。
「昔読んだ少女漫画」
BL漫画に限らず過激な漫画があるもんだなあ(現実逃避)
「キスしたいなら普通にしようよ…」
「せっかくチョコがあるのに? ──くんもお酒好きでしょ?」
好きだけど! 酒も、薫ちゃんとキスするのも好きだけど!!
駄目だ、薫ちゃんはすでに好奇心に負けてやる気満々だ。興味が強すぎて、一度思ったらやってみないと気が済まない。彼女はそういう性分だ。
「一回だけな」
「うん」
俺がチョコレートボンボンを口に含み、目を瞑って唇を差し出す薫ちゃんにキスを仕掛ける。舌で溶け始めたチョコを動かして薫ちゃんの方へ。舌の上に乗ったチョコに薫ちゃんの舌が触れる。
二人分の熱で一気にチョコは溶け、酒の風味がホロ甘系のチョコと一緒に鼻をくすぐる。どろっとしたチョコとベリー系のリキュールの味。
なんか、普段はこれぐらいの酒では酔うことなんて絶対にないのだが、今は少し脳がクラクラする。
「薫ちゃん、」
「ん?」
「……もう一回」
薫ちゃんは静かに、でも肩を揺らしてまるで俺を誘うように笑う。細まった目がとても色っぽい。
「一回だけなんでしょ…?」
「前言撤回」
「…い・い・よ」
形の良い唇がゆっくりと動いて言葉を発する。もうすっかり釘付けでどうしても視線が吸い込まれる。
今度は薫ちゃんが先にチョコを口に含む。視線がとてもいい。目が合うと細めた視線に誘われる。俺の方から来いと言われている気がする。言われている通り俺から唇を合わせに行く。先ほどとは違う味。これはナッツ系だ。
キスだけは収まらない。そう思い、彼女の肩に手をかけて、次のフェーズに行こうとすると、俺はまた衝撃に襲われた。
ただのニットだと思っていたものは、袖のないノースリーブで、その上にカーディガンを羽織っているだけだった。
少しカーディガンを動かしただけで彼女の綺麗な肩が見える。
「あー……」
「気がついた?」
俺の反応を見て、薫ちゃんが口角を上げる。ただ単に嬉しそうな笑みではなく、また悪戯を成功させた少し悪い笑み。
しかもわざとはだけさせて俺にその眩い肩を見せびらかしてくる。ここが彼女の家で本当に良かった。
特に何も考えず、彼女をソファーに押し倒してもいい。
まだボンボンも、リキュールも残っているのに、すでに酔った時のように全身が熱って仕方ないのも、問題にはならないのだから。
今年のバレンタインは土曜日。つまり、基本的に大学に行くなどの予定はなく、家にいればバレンタインイベントは回避できる。
のだが、今の俺には世界で一番可愛い彼女がいるので外出しないという選択肢はない。
「貴方が落としたのはこのデパ地下で買ったチョコレートボンボンですか? それとも私が作ったマカロンですか?」
「はいマカロンです!」
「貴方は嘘つきですね、何も落としていないでしょう?」
唐突は問いに対し、欲望に素直に応えると理不尽な返しをされた。
バレンタイン当日。薫ちゃんの家にお呼ばれした俺は、席についたところで二種類の洋菓子を見せられた。彼女の言う通り市販のチョコと手作りのチョコ。もちろんデパ地下の有名菓子も捨てがたいが俺が選ぶならば薫ちゃんが作ったお菓子以外にない。
「冗談。二つともどうぞ」
「やったーありがとー」
くすくすと笑い、悪戯を楽しむ薫ちゃんもとても可愛い。許した。
甘いチョコレートに対し、砂糖の入っていないミルクだけ入れたコーヒーもセットで用意してくれた。
「チョコレートリキュールもあるけど」
「えっ飲む」
「じゃあ夜に飲もっか」
至れり尽くせりとはまさにこのこと。薫ちゃんも、お家デートなのに外のデートと同じぐらい気合の入った可愛い服装をしていてまさに眼福。ロングのタイトスカートにスリットが入っていてチラりと覗くタイツ越しの足がとてもいい。トップスはニットに暖かそうな厚手のカーディガン。
「俺からも薫ちゃんにプレゼント」
取り出したのはラッピングされた箱。
「ありがとう! 開けるね」
丁寧に開封して、中から姿を現したのは細かい装飾が施されたグラス。
「綺麗」
「この前、普段使いしてるやつ割れちゃったって言ってたでしょ?」
「ありがとう、覚えててくれたんだ」
それはもちろん。
取り出したグラスをうっとりと眺めたあと、俺に視線を移して満面の笑みを向けた。
小さなものでももらったものは大切にする薫ちゃんにとってこのグラスも、他のものと同じように長く使ってくれたら嬉しい。
*
「チョコキスしてみない?」
「ぶっ…!? …ま待って、どこから仕入れたのその情報……」
まず薫ちゃんの作ってくれたマカロンを全て平らげ、テレビを見ながら残ったボンボンを食べていたところに、薫ちゃんから唐突な提案が出された。
チョコキスとは口の中にチョコレートを含みながらキスをするという名前そのままの行為である。
そして情報の仕入れ先も問題である。もし俺が思い浮かべる人物であればタダでは置かない。
「昔読んだ少女漫画」
BL漫画に限らず過激な漫画があるもんだなあ(現実逃避)
「キスしたいなら普通にしようよ…」
「せっかくチョコがあるのに? ──くんもお酒好きでしょ?」
好きだけど! 酒も、薫ちゃんとキスするのも好きだけど!!
駄目だ、薫ちゃんはすでに好奇心に負けてやる気満々だ。興味が強すぎて、一度思ったらやってみないと気が済まない。彼女はそういう性分だ。
「一回だけな」
「うん」
俺がチョコレートボンボンを口に含み、目を瞑って唇を差し出す薫ちゃんにキスを仕掛ける。舌で溶け始めたチョコを動かして薫ちゃんの方へ。舌の上に乗ったチョコに薫ちゃんの舌が触れる。
二人分の熱で一気にチョコは溶け、酒の風味がホロ甘系のチョコと一緒に鼻をくすぐる。どろっとしたチョコとベリー系のリキュールの味。
なんか、普段はこれぐらいの酒では酔うことなんて絶対にないのだが、今は少し脳がクラクラする。
「薫ちゃん、」
「ん?」
「……もう一回」
薫ちゃんは静かに、でも肩を揺らしてまるで俺を誘うように笑う。細まった目がとても色っぽい。
「一回だけなんでしょ…?」
「前言撤回」
「…い・い・よ」
形の良い唇がゆっくりと動いて言葉を発する。もうすっかり釘付けでどうしても視線が吸い込まれる。
今度は薫ちゃんが先にチョコを口に含む。視線がとてもいい。目が合うと細めた視線に誘われる。俺の方から来いと言われている気がする。言われている通り俺から唇を合わせに行く。先ほどとは違う味。これはナッツ系だ。
キスだけは収まらない。そう思い、彼女の肩に手をかけて、次のフェーズに行こうとすると、俺はまた衝撃に襲われた。
ただのニットだと思っていたものは、袖のないノースリーブで、その上にカーディガンを羽織っているだけだった。
少しカーディガンを動かしただけで彼女の綺麗な肩が見える。
「あー……」
「気がついた?」
俺の反応を見て、薫ちゃんが口角を上げる。ただ単に嬉しそうな笑みではなく、また悪戯を成功させた少し悪い笑み。
しかもわざとはだけさせて俺にその眩い肩を見せびらかしてくる。ここが彼女の家で本当に良かった。
特に何も考えず、彼女をソファーに押し倒してもいい。
まだボンボンも、リキュールも残っているのに、すでに酔った時のように全身が熱って仕方ないのも、問題にはならないのだから。
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