銀桂の薫りはあなたの気を惹く -Exhibition -


「ポリネシアンセックスってよくない??」
 マヤセンがまたよくわからないこという。先ほどからずっとスマホに向かってぶつぶつ言っていたから商業か同人かは知らないがネタを詰めているのだろう。
「お前な、いくらある程度気の置ける間柄でも女子の前でセックスとか下ネタの含まれる単語を使うんじゃねぇよ」
「えっポリセ知らないのっ?」
 略したらいいってことじゃないんだよ。
「知らない」
「えーっ、君BL読んでるのにそういうのは疎いのかよ」
「好きで読んでるわけじゃないし、俺はあくまでフラグ回避の参考としてきっかけと過程を知りたいだけ」
 俺は依然としてフラグ回避として勉強を続けているだけで、真山のようにカプ推しとかシチュ萌えに興味があるわけではない。以前は告白小僧とのフラグ回避のため、相談を持ちかけたこともあったが、BLを推している真山と回避したい俺とでは、根本的から考え方が違う。
「確かに”⚪︎⚪︎しないと出られない部屋”とか知らなくてポカンとしてたよね」
 出られない部屋と聞いて薫ちゃんがこちらを見る。以前三回の不運で完全にトラウマになってしまっている。
 なぜリアクションに覚えがあるならその時に話を止められなかったのか、これが分からない。だがまあ、あの全く参考にならないと思った話も、のちに薫ちゃんと例の部屋にぶち込まれた時にお世話になったので知っておくに越したことはないのか? いや知らない方がいいな。下手に知るとこの世界に余計な概念を生みかねない。
「知らないならいいや。君の言うとおり銀木さんへのセクハラになっちゃうし」
「じゃあ俺に既にセクハラしてることに謝罪しろ」
「ごめんねー」
 エアライド中でも読心が止まることがない水元に真山は気の抜けた謝罪をした。こいつ、金欠で本体買えないからって真山ん家で滅茶苦茶ゲームしてんだよな。ネット対戦なら読心も効かないし楽しいのか。
 さっきからずっと薫ちゃんと交代で走り屋をしている。たまに試合の合間にグミを無心で弄んでて水元が怖い。
「でもまあ君は一回調べてみてよ、ポリセ。知ってたって他の男とフラグになるようなものじゃないからさ!」
「えぇー…」
 調べてみた。
 ポリネシアンセックス。太平洋のポリネシア地方に伝わる五日間かけて行う所謂スローセックスである。
「……最低だよマヤセン」
「しろなんて言ってないでしょーが!!」
「いや、正直面白そうって思ってたぞ」
「なんでバラすの! そっちがその気ならまた脳内でBLプロット組んでやるからな!!」
 やっぱ怪人は怪人だな。
 一回堕ちたら戻ることはない。
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