銀桂の薫りはあなたの気を惹く -Exhibition -
「真山くん、貸してくれた漫画全部読んだよ。貸してくれてありがとね」
真山宅での集まりで、普段から荷物がそこまで多くない薫ちゃんが今日はやけに大きな紙袋を持ってきていると思えば、中から大量の本が出てきた。
持ち歩いている間に通行人から見られないように一番上に不織布がかけられていて、真山が何を貸し出していたのか理解する。
「お前、ちゃんと内容選んだんだろうな…」
「大丈夫! 中身は前に言われた通り、濃厚な絡みなし健全(ハグまで)のやつだし」
これはマヤセンによる布教である。以前から薫ちゃんに配信者系とかアニメなどを教えていて様子を見ていたのだが、最近はとうとう彼女にBLを勧め始めた。嫌悪感もなく偏見も少ない彼女が教えたことをスポンジのように覚えていくのが面白いのだろう。
俺としては余計なことをしてくれるな、というのに尽きるが、薫ちゃんが楽しんでいる間は俺が止めるのも過保護だと思うので、真山が布教する事柄に関して多少の制約をかけるだけに済ませている。
「綾小路マーヤ先生、これが差し入れです」
「フルネームやめてね。僕も読んでくれてありがとう」
差し入れと称し、薫ちゃんから手土産のつまみと酒が渡された。鮭とばとか滅茶苦茶美味しそう。食べ物を眺めていると真山から睨まれ食べ物を遠ざけられた。別に取らねえよ。今度自分で買うし。
「でもせんせ」
「ん?」
「テレパス・キスの受けはちょっと身内すぎない?」
「ぶっ」
お茶吹くかと思った。
”テレパス・キス”とは真山がまだ水元の超能力を知らなかった頃に商業誌で描いたテレパシー能力を持つ『宮本』が主人公のBL漫画である。
「あれを薫ちゃんに読ませたのか」
「だってあれ健全だし」
とはいえ今は普通に友人をネタに使った本を薫ちゃんに読ませるなよ、と。
「水元くんも読んだし」
それはもはやセクハラではないだろうか。
因みに俺も真山らと仲良くなる前に発行されたものなので読んだことがある。エロがない作品で少女漫画的にサラッと読めて良かったといえば地雷感想で本人に怒られたが、確かに入門には丁度いいのも事実。
「時系列的に僕らが連み始める前だしね」
「三人の中では済んだ話だろうけど、私はちょっと…」
流石にダメだったか?
「終始水元くんがチラついてまともに読めなかった…」
単純に可哀想。真山はもう二度と布教するなよ。
「てへぺろ」