銀桂の薫りはあなたの気を惹く -Exhibition -
「天国だ…」
デートに猫カフェにやってきた。
猫は自由な生き物でありストレスが天敵なのでしつこく絡むことは禁止、店によっては抱っこも駄目だが、今日来店した店は課金で猫じゃらしやネズミのおもちゃを買い、遊ぶことができる。おかしも買って与えることも出来るしマジで天国。
うちには愛猫のミーコもいるが、やはり猫はなんでも可愛いので定期的に癒されにくる。そして今はこれまでの猫カフェ体験史上、一番の萌えを感じている。
「なーん」
「みゃー」
「ゴロロロ」
「なんか…すごく来る…」
薫ちゃんが猫にモテている。
猫にモテる薫ちゃん、可愛いと可愛いを掛け合わせたらそれは最強だ。
うちのミーコにも数回しか会っていないのに妙に懐かれているし、薫ちゃんは猫に好かれやすいのだろうか。本人も酔ってる時と寝起きは大きい猫ちゃんだしな。
「ふみふみされてる…どうしたらいい?」
「飽きるまでされるがまま」
寄ってきた一匹の茶トラが前足でブランケットの上からふみふみしている。猫カフェの猫って本当に人懐っこい。初見の人間相手にふみふみするんだな。
「このブランケットがお気に入りなのかな」
ほーん確かに。店が貸し出している厚手のブランケットは確かに触り心地がいい。
「はっ」
ミーコに似た白猫が僅かに俺の方へ視線を向けるのを見逃さない。課金した猫じゃらしを見せるが、そっぽを向かれ薫ちゃんの手にすりすりと頭を擦り付けたあと、他所に行ってしまった。
なぜだ。
まあ他の男性客は猫そっちのけでカップル♂でイチャイチャしているので近寄らないのも理解できるが、俺は薫ちゃんの隣で彼女と猫の相乗効果を楽しんでいるだけだというのに。
「調べたんだけど」
「うん?」
「声のトーンとか匂いとかが男性より女性の方が猫にとって好ましいらしいよ」
スマホの画面を見せられて絶句した。
いつしかミーコの家庭内序列を覆し母に下剋上することを目論んでいたのだが、まさか性別までもが原因だったとは。
「低い声より高い声が好きらしい」
なるほど。今店内の男女比率はかなり偏っている。代わり代わりに猫が薫ちゃんの元にやってきて猫ホイホイになっててすごい。
「どうしようもない」
(私にもミーコちゃんにもすっごい高い声出してる時あるけど)
なんか、なんとも言えない表情をされている。
「私は好きだから元気出して」
耳元で囁かれてゾクゾクした。普段から訓練していなければ不味かった。一旦目を逸らして深呼吸する。
沸いた生唾を飲んで、イチャつきたい感情も飲み込みつつ、視線を戻すと薫ちゃんは猫に構って俺の方は見ていなかった。
もう! 本人まで猫なんだから! 好き!