銀桂の薫りはあなたの気を惹く -Exhibition -
「おっ、おやおやおや〜〜〜人ん家でいちゃつくなんてことはしないんじゃなかったのかなあ〜?」
「…仕方ないじゃん、てかタスケテ……」
いつものように四人で真山宅にお邪魔している。普段なら女子の薫ちゃんもいるので遅くなりすぎない時間に解散するのだが、今日は最初から泊まりと決めて、飲みながらボードゲームやら雀卓をを楽しんでいた。
一頻りゲームも遊び尽くし、酒もかなり減ったので寝る準備の話になった。部屋は空き部屋があるのでいいとして、風呂はひとまず家主の真山に最初に入ってもらい、他はボドゲで勝った順と決定した。
そこまでは良かった。のだが、真山が風呂から出てくるまでの時間に残った酒を消費しなら深夜番組を垂れ流していると薫ちゃんが寝落ちた。
その体勢をいま詰められている。
初めは船を漕ぎ始めた薫ちゃんに肩を貸していただけだったのだが、気が付けば完全に寝落ちてしまい身体を支えていられなくなった彼女の体重を支えきれず一緒に床に倒れ込んだ。彼女が頭を床で打たないように腕でカバーしたら結果的に腕枕のような体勢が完成したのである。
「君、体幹弱すぎない?」
「意識のない人間はマジで重いからそんなの関係ない。咄嗟に頭庇えただけで俺的には奇跡だが?」
「彼女出来ても攻め特有のフィジカルは授からないのかわいそ」
「最低限あるからいいんですぅ」
「…で、どうするの。次、君じゃん」
次の風呂は俺である。ちなみに最後は水元。読心の有無に関係ないボドゲで決めたからな。水元は運も良くないし妥当。
「聞こえてんだよ」
仕方ない、薫ちゃんを起こして先に入ってもらって早くちゃんとした布団で寝てもらおう。
水元に頼んでブランケットをかけてもらったが、床は冷たいし俺の背面も痛い。
「薫ちゃん、起きて」
「……んー」
肩を揺らして起こす。
反応として声は発しているが目は開けない。
あ、ダメだ、普段の起きたくない反応だこれ。
まずいかも。
「ちゅーで起きる…」
「……」
肩を揺らしていた手で顔を覆った。
「…そこうるさい」
「何も言ってないし見てもないじゃん」
分かるんだよ視線がうるさいって。
「聞きたくなかったわ…」
「俺も聞かれたくなかったけど??」
水元に引かれるのは誠に遺憾だ。とにかく二人がいるのでこの寝ぼけ激かわキス待ち彼女をそれ以外で起こす必要がある。
再び肩を揺さぶって声をかける。
「ここ真山ん家だから…起きて。お風呂入って」
「…おふろ?」
「そうお風呂」
「……」
無言の後に顔を俺へ押し当ててくる。
やめてください、普段ならいいんです、全然ウェルカム、でも今はだめ。
「つめた」
「そうでしょ、床冷たいでしょ」
「なんでゆか…………」
「っ」
薫ちゃんの言葉が途切れたかと思えば、ソファーに座っていた水元がびっくりしたように身体を震わせた。
そして薫ちゃんは唐突に弾かれたように身体を起こす。
「ごめん、お風呂入ってくるっ」
脱兎の如く荷物を持ってリビングから逃げた。
薫ちゃんとブランケットがなくなって本当に寒いし、起き上がると腰が痛い。
「君って僕らと銀木さんで結構声色変わるなーとは前々から思ってたけど、その最たるものを見たって感じ」
「いいだろ別に…」
「漫画の参考的には美味しいけど現実で見ると砂糖吐くかと思った」
視線の先にあるテーブルの上にあるコップに飲みかけの酒が残っていたのでそれを飲み干す。氷がかなり溶けていたのか味が薄い。
「…あー、もう酒ない?」
「ないね」
俺も今、ものすごく酔って寝落ちしたい。