銀桂の薫りはあなたの気を惹く -Exhibition -


「ひゃっ…冷たいだろやめろ!」
「冬なのにそんな無防備に首元出してるからだろ」

 冬とは人との接触が増える時期である。今しがた俺の前に具体例が通った通り、BL漫画の世界の住民たちは寒さで赤くなった首やら耳やらをつい触りたくなってしまう生き物だ。そして接触を受けた人物もBL漫画の世界の住民ななのであのような咄嗟に出るとは到底思えないような声を出し、驚きを表現する。
 正しく冬の風物詩。BL漫画の季語である。
 こうならないためにも、首まで隠れる服を着用し、マフラーも巻き、手袋、持ち物を圧迫しても良いなら耳当てだってつける。やりすぎると寒がりという認識を受け、弄りの対象になることもあるが、そういうのは元来のイジられ体質しかほぼありえないし、自分には適用されることのないフラグだと言える。
「おはよ。今日も寒いね」
「ほんとにね。…薫ちゃん、それ寒くないの?」
 今年の冬は特に冷え込むと聞いている。今日は今月一冷えると予報も聞いたが、薫ちゃんの服装、特に足元が特に軽装に見える。冬もの素材の暖かそうな素材ではあるが、膝上の短いタイトスカート、足は透け感のあるストッキングだ。見ただけで寒い。
「ああこれフェイクタイツ。裏起毛で結構暖かいんだよ」
 つまんで伸ばすと確かに肌と接していないのに肌の色に近いベージュ色が見える。
 なるほどな、冬でも女子が足を出せる理由はこういうことか。
「でも流石にもっと寒くなったら普通にズボン履く」
「そうして。身体冷えると良くないから」
「ありがと」
 つけていた手袋を外して、薫ちゃんと手を繋ぐ。
「手冷たっ!」
「あ、ごめん」
「良いけど…手袋貸すから、右手につけて」
 見たら指先赤いし、すごく冷たい。
 右手の手袋を薫ちゃんに貸して俺は右手で彼女の左手を繋ぎ直す。そして俺のコートの中に一緒に手を入れた。中にはカイロを入れていて暖かい。
「あったか…」
「大学着いたらこのカイロあげる」
「本当ありがとう」
「どういたしまして」
 想定していたフラグイベントとは違ったが、結果オーライかもしれない。
 オーバーサイズの手袋を見つめて目元を細める薫ちゃんを見てそう思った。
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