銀桂の薫りはあなたの気を惹く -Exhibition -
図書館の中にいるとどうしても眠くなる。
今日何度目かの欠伸に隣にいる薫ちゃんも、流石に反応してくれなくなった。否、俺とは違って集中しているのだろう。キーボードを打つ彼女の手元は止まる気配がない。
「十九時になったら切り上げてご飯食べに行こ」
「いいよー」
俺の提案に生返事で応えると、視線をノートパソコンから動かして積まれた本に向けた。
「資料、追加で取ってくるね。すぐ戻ってくるから荷物見てて」
「分かった、いってらっしゃい」
スマホを持って薫ちゃんは離席した。
一人になって、横で聞こえてい打鍵音が聞こえなくなると、余計に睡魔がやってくる。
ちなみに俺の書いているレポートは全く字数が増えていない。おかしい、ここで薫ちゃんとレポート作業を始めてもう一時間半以上経過しているというのに。
別に薫ちゃんが悪いわけではなく、完全に俺の問題なのだが、隣に彼女がいるとつい見てしまう。
前にマヤセン宅で同じくレポートを書いていた時にも構いすぎて進捗がカスすぎて、薫ちゃんに「帰ろうかな」と言われてしまった。
だって薫ちゃんってどれだけ見つめていたって飽きないのだから仕方がない。俺にとっての目の保養なのだ。
しかし、流石にレポートの締め切りは近いし、十九時まで一時間弱、いい加減に真面目にやらなとな。
「寝てる…」
本棚から目的の資料を見つけて、彼と勉強していた座席に座っていた場所に戻ってくると、彼は手元をキーボードに置いたまま頭が真下を向いて撃沈している。
思ったより探すのに手間取ったとはいえ離席してから五分も経っていないのにレムレムしている。ずっと欠伸していたので不思議ではないけど。
普段なら夢の中の彼を無理に起こすようなことはしないけど、今進めないと今後困るの彼自身だから肩を揺さぶった。
「起きて。今回こそ提出期限ギリギリを回避するんでしょ」
「んえ」
「んえ、じゃない」
「……っやば、いま寝てた…ありがと」
席に戻り持ってきた資料を適当にパラパラと捲る横目に彼を見つめた。
眠たい顔を必死に上げてパソコンを睨んでいる。
確かに判る、ずっと画面を眺めていたら眠たいよね。出来ることなら苦行なんてしたくないよね。
でも、自分で決めたことを実行しようとする気概はとてもいい。
モチベの維持に何か…あ、
「頑張れ、応援してるよ」
彼の肩に手を置き、先ほどみたいに揺さぶるのではなく輪郭を撫で、耳元で呟く。
「…!」
ビクッと肩を震わせて、呟き掛けた耳に触れたあと口元も慌ただしく押さえた。
「っこ、こ公共の場…!」
「エールだよエール」
大きな手が両手で顔を隠す。隠さなくても、もう周りに他の学生なんていないのに。
「…ありがたいけど、余計に気が散っちゃった」
「えー?」
