銀桂の薫りはあなたの気を惹く -Exhibition -


 今年もハロウィンパーティが開催中である。安い会費で飲み食いが出来るので参加している。
 とはいえ翌日は薫ちゃんの誕生日なので馬鹿みたいに飲んだりをすることは出来ない。
 で、その薫ちゃんと会場内で待ち合わせをしているのだが、まだ到着していないようだ。聞くところによると、コス衣装のサイズ的に準備が手間取ったらしい。デカいからな、どことは言わんが。
「お、お待たせ…」
 緊張気味に薫ちゃんがやってくる。
 俺はというと、彼女のビジュを見て持っていたグラスを落としそうになった。
 首の詰まった修道女っぽいタイトスカートのワンピース。スカート部分にはスリットが入っていてデニール数の低いタイツから肌が透けている。顔は色白というよりは病的な青白い肌に人を喰ったみたいな濃い赤リップが目立つ。
「えっっっっっ…かわ」
「よかった…恥ずかしいけど」
 俺の手抜きマスク装備のみのコスとは大違いである。露出も足のタイツ透けぐらいで彼氏としても安心だ。というか下手に露出があるよりこういう風のが良いよな。
「真山くんによると修道女に扮する吸血鬼らしい」
「来れないくせに監修してんのな」
 マヤセンは冬の戦に向けて絶賛原稿作業中でこの会場には来ていない。ついでに言うなら水元も来ていない。
 薫ちゃんが着れる衣装がないと嘆いているところに声をかけたのが真山だった。なんでも原稿作業の資料として何着も購入している中にメンズが着れる女装用の服があるので、それを貸すと言う話をしていたらしい。胸が厚い男性でも着れる規格であるため、薫ちゃんでも問題なく着こなしている。
「付け歯が一番違和感あるかも」
 喋るたびに吸血鬼アピールのための尖った付け歯が主張している。
 今まで野郎がする吸血鬼コスに毛ほどの興味などなかったが薫ちゃんならアリ。典型的なハロウィンコスでも全然良い。
「これ美味しかったよ」
「じゃあ食べよ」
 血みたいな色のジュースに浮いた目玉ゼリーである。吸血鬼が血液飲むのは絵になる。
「写真撮っていい?」
「ん」
 スマホを構えるとグラスに口をつけている薫ちゃんが視線をこちらに向けてピースサインを作ってくれた。
 可愛いね。
「もー二人で撮ろうせっかくだし」
「うん」
 コスもメイクもバッチリな彼女と並ぶのは、流石に場違い感があるが耐えろ。壁側に寄り壁を背景にスマホを構えた。
 薫ちゃんの腕が俺の腕に絡められ寄り添う。肩へ頭が傾けられると薫ちゃんのいつもと同じ良い香りがした。
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