銀桂の薫りはあなたの気を惹く -Exhibition -
「かおる、かおる! 次これしよ〜」
「…うん」
子守である。
薫ちゃんのはとこは、彼女と結構年齢が離れており小学四年生と三年の姉弟らしい。はとこ、つまり薫ちゃんのご両親の従兄弟は他地方に住んでいるのだが今日は職場の人の告別式に参列しているらしい。
そのため成人している親戚である薫ちゃんとそのお兄さんに子守をお願いした、という経緯らしい。
しかし今、薫ちゃんのお兄さんは休日出勤に出ており不在。流石に体力がある薫ちゃんでも元気有り余る小学生二人の相手はしんどいということで、応援を頼まれたのが俺である。
体力的な意味で全く戦力にならないし、男子の方は時限式フラグになりそうなので遠慮したかったのだが、薫ちゃんに頼みこまれて断れなかった。
「なあこれどうやんの」
初対面の大人相手にも動じないところは良いのだが、もうちょっと遠慮とかない?
しかし小学生男子の扱いは弟で多少心得もある。こういうのはゲームか食事を与えれば静かになる。実際に走り回っているところにゲームを渡せば大人しくなった。
だがしかし、妹の方を相手している薫ちゃんは、いつもの体力お化けっぷりはどこへやら、すでに疲労が溜まった顔をしている。
「ごめん、お昼つくんなきゃ」
「あー俺がこの子の方も見とくよ」
「ありがとー」
女児の方は、性別が女ということもあり例に漏れず顔がぼんやりとした認識になっている。
だが、流石は薫ちゃんの親類。雰囲気からしてこの児童二人も美形の雰囲気をしている。俺のコピペ顔親族とは大違いだ。
「ねえ、お兄さんってカノジョ何人目?」
いやとんでもないこと聞いてくるな?! 何、最近の小学生はこんな感じなの?? マセガキすぎるだろ。
「薫ちゃんが一人目だよ」
「なんで?」
出会いがなかったからだよ。言わせるんじゃない。
なんで? でもないそんな澄んだ目で聞くな。あと俺には薫ちゃん一人だけでいいの。
「わたしはね〜四人目!」
小学生怖い。
「今のカレシにね、妹がいてね、あんまり好きじゃないんだけど、カレシの妹だから仲良くしてるの」
だから怖いって。
次は何かと思えば女児はキッチンで料理している薫ちゃんの方へ行く。慌てて止めについて行く。
「待て待て包丁持ってるから危ない」
「かおるはカレシ何人目〜?」
本当に話聞いてくれるかな。いや十歳に言っても無駄か。これぐらいの年だと、遠慮は無いし知りたいことはとりあえずなんでも聞きまくりたい年頃だろう。
薫ちゃんはオムライスのための鶏肉を切っていた包丁を置いて女児の視線に合わせてしゃがみ込んだ。
「一人目だよ」
「なんで?」
薫ちゃんにもなんで攻撃が炸裂する。
「変える必要がないからだよ」
「いっぱいいた方が楽しいじゃん」
「大事なのは多さじゃなくて大きさと深さだよ」
もうちょっと大人になったら分かるよ。と薫ちゃんは冷静に女児を諭す。
「ご飯できるまで良い子で待ってて」
そう言って薫ちゃんはまたキッチンに向き合った。
流石薫ちゃん、滅茶滅茶良いこと言う。さて彼女の邪魔をさせないようにこの女児をリビングに戻そう。
「……かっこいい」
女児が頬を赤らめて薫ちゃんを見上げている。
ん?
もしかしてやばい流れに入ったか?
この世界、やはり男は男に恋をし、女は女に恋をする世界のようだ。だが俺は絶対にへし折ってみせる。この親戚時限式フラグを。
