銀桂の薫りはあなたの気を惹く -Exhibition -
友人との飲み会帰りでのこと。
駅前の居酒屋が会場であり、それを薫ちゃんに世間話として喋ると「その日、お兄ちゃん車使わないし迎え行こうか?」と言う提案を受けた。流石に申し訳なさもあったが、「胃袋少し残してくれたらラーメンでも食べに行こう」と言う誘いがあったので快諾した。我ながらの即答だった。
と言うわけで二次会には参加せず、待ち合わせ場所である駅の立体駐車場に足を運んだ。
『ハコが空いてなくて入り口から一番奥に留めてるよ』
ラインを見るとそのようなメッセージが届いていた。迎えに来てくれるだけでありがたいので無問題だ。
ありがとうスタンプを送って、周りを見渡す。薫ちゃんの車はツートンの軽なのだが……
「…あ」
入り口近くのハコに留めている車内の光景が目に入り素早く視線を明後日の方向に向けた。
厳つい黒のワンボックスに男が二人乗っている。…だけなら良い。問題は二人の体制だ。リクライニングされた助手席に一人が深く腰掛け、その上にもう一人が馬乗りになっている。しっかりと目撃したわけではないが、下にいる男の腕がもう一人の腰に周り、尋常ではない距離感を保っている。
これはもう”そういうこと”である。
電車内など、人が大勢いるところでも盛ってしまうBL漫画の登場人物たちなので夜の駐車場など全く想定外ではないが、サンシェードも降ろさず丸見えというのは初めての遭遇である。せめて隠していただきたい。
「あー…いたいた」
BLとの遭遇に構っては居られない。気にせず駐車場内を歩くと薫ちゃんの乗っている車を発見した。
近づくと、運転席にいた薫ちゃんも気がついたのか、スマホを見ていた顔を上げてにっこりと効果音が出そうな満面の笑みを浮かべる。
鍵を開けてもらい、助手席に着席した。
「お待たせ、お迎えありがとう」
「いーえ。ラーメン屋調べてたの。まだお腹入る?」
「ラーメン分空けてきた」
薫ちゃんからの誘いを無碍にするわけがない。
シートベルトを締め、早速出発である。
「辛味噌が豚骨どっちがいい?」
「そうだなぁ…」
彼女は自分のスマホを俺に渡して、先ほどまで見ていたサイトを見せる。
辛味噌に豚骨。これは迷う。辛味噌のラーメン屋はラーメンはこの一品だけだが、写真がかなり美味しそう。豚骨は他の味のラーメンがあって選び甲斐がある。
駐車場内の一通に従い出口に向かうと、先ほどの厳ついワンボックスの前を通る。運転席側にあるワンボックスの助手席にいる男たちがどうなっているのかは助手席にいる俺にはよく見えない。ん、さっきよりリクライニング倒したか?
「……」
バックミラーに映った薫ちゃんの目元を見ると、視線が外に横に向いている。
「…見えた?」
「せめてシェード降ろして…」
それな。
