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銀桂の薫りはあなたの気を惹く -Exhibition -


 友達と来たカフェで。
「この前、彼氏から記念日にリップもらったんだけどさ〜」
「先月も記念日って言ってなかったっけ」
「月記念日だよ。で、貰ったんだけど全然合わない色でさ」
 毎月記念日を祝い合っているというのも私的には驚きだけど、話を聞き進めているとこの話はどちらかと言えば恋人の愚痴だ。
 一緒に話を聞いている友人も記念日に貰ったプレゼントがイマイチだった話を連鎖的に話だす。あまり共感出来ないまま頼んだケーキと紅茶を食べたり飲んだりしていると、いつの間にか私に視線が集中していることに気がついた。何か期待されてる。
「薫は? 記念日に何貰ってる?」
「毎月プレゼントなんて渡し合わないよ」
「えーもったいない。貰えるものはもらわないと」
 付き合い始めた頃に──くんが「記念日とかってどうする?」と聞いてきたことがある。その時は何の意味も理解せずに「え? 先月付き合い始めたよね?」と返したが、あれは今思えば友達が言う月記念日のことだったのだろう。
「プレゼントのレパートリー無くなるし、有り難みも薄まる」
「薫は真面目すぎる」
 真面目か否かって関係ある話題だっけ。
「毎月祝ってくれないと私のことなんてどうでもいいんだって思うじゃん! それまでずっとくれてたのに! 質に関してもそう」
「物とお金で愛情を測ってる時点で」
「おぉ言うねえ薫」
 話に乗っていたもう一人が囃し立てる。
「お金が掛かるって振られた話はもう聞き飽きたよ」
「うぐ…」
「そうだぞー」
「貴女も乗らない。貰ってるんだから」
「強要はしてないもーん」
 やっと落ち着いたのか、彼女たちも各々ドリンクに手をつける。
 なので気になったことを聞いてみることにした。
「純粋に疑問なんだけど、コスメのプレゼントってよく貰うものなの?」
「消耗品だからってよく強請る」
「カレシもデパートで相談すればいいからって結構多いかも。その割に外してくるけど。薫はないの?」
「コスメは一度もない」
 確かに似合う色とかは、知らないと難しいし、失敗が嫌な彼は選ばないかも。
「限定コスメ発売された時とかおすすめ」
「……さいてー」
「薫ガチ引きしてんじゃん」
 彼氏の話題に関しては本当にいつも参考にならない。
 おしゃれとか、美容とか自分磨きの参考にはなったりするけど。本当に恋人との関わり方って言うのは十人十色で他人を参考にする物じゃないと実感する。


 *


「デパートか、珍しいね」
「ちょっと見たいのがあって」
 薫ちゃんとのデートで、彼女からのリクエストで駅前のデパートにやってきた。
 一階のブランドのコスメコーナーでの男性の場違い感はかなり高い。可愛い系と言うよりはクール系の黒いパケが目立つブランドを何度か軽く見たあと、どれを買うのか決めたのかBAに話しかけた。
「これか、これの色で迷っているんですけど」
「でしたらタッチアップ出来ますよ」
「ありがとうございます」
 鏡台前の席に案内される薫ちゃんについていくと案内していたBAがこちらにも顔を向ける。顔はいつものようにぼんやりだが多分営業スマイル。
「彼氏さんもぜひ座ってください」
「…ありがとうございます」
 お言葉に甘えて薫ちゃんの隣に座った。
 今施しているメイクを部分的に落としてからBAが上から試したいものを塗っていく。
 二人はラメ感がとか、こっちはマットがなくてシマーだとか話しているのを借りてきた猫のような気持ちで聞いている。
 色が違うのは辛うじて分かった。感想とか聞かれたらどうしよ。
「うーん、こっちにします」
「ありがとうございます。商品ご準備しますね」
 いつもと若干化粧の雰囲気が変わった薫ちゃんが俺の方へ向き直る。
「待たせてごめんね」
「大丈夫。俺が出そうか?」
「大丈夫だよ」
 ブランド名の入った紙袋に買った商品とサンプルを入れ、BAが戻ってくる。会計を薫ちゃんが済ませると一瞬視線を向けられた気がした。BAも俺が払うと思っていたのかも。
 別に買ってあげたい欲がないわけではないが、本人がいいと言っているのに無理やり払うのも違う。
 ブランドスペースを出るところまで見送られ最後に商品を受け取った。
「──くんは彼女にプレゼントとか頻繁に買ってあげたいタイプ?」
「そうだな…」
 俺個人的には何か特別なことがない限り、今回みたいな高額プレゼントはしない。
 男女交際の破局の原因は性格の不一致などだが、記念日の頻度とか、その時のプレゼントなども重要なところだ。
 付き合い始めの頃、薫ちゃんに記念日に関して聞くとそもそも記念日は当日以外にないという認識だったため、月ごとに祝わないのはお財布的にも優しいところ。実際、俺もそういう風に考えている。毎月とか富豪でもないとやっていけないだろ。
「欲しいならあげたいけど。薫ちゃん、あれ欲しいとかこれ欲しいとか、言わないし」
「自分で買うからね」
「だからまあ、特別な日とかは」
 というかある程度自制していかないと、薫ちゃんに貢ぎまくる男が完成しそうだし。
 貢ぎまくってウザがられて破局……一番みっともない。もので引き留めているようだ。
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