銀桂の薫りはあなたの気を惹く -Exhibition -
中学・高校時代と真夏の体育後の教室の独特な匂いを思い出させるものといえば、制汗剤だ。
更衣室というものがりながら、物臭に教室で着替える男が大半であるため、さまざまな制汗剤の匂いが混ざり、単体ではいい香りのものも集まることによって鼻を突く匂いになるのである。とは言っても人単体として臭いとは誰も思われたくないわけで。
「おはよ…」
「おはよう。元気ない? 大丈夫?」
今日も今日とて気温は四十度近い酷暑。
己のボディの素晴らしさを理解している(俺が力説した)薫ちゃんは上半身のラインが露骨になるような服はあまり着ないのだが、流石の外気温の高さに羽織っていたカラーシャツを手に持って、黒のノースリーブのトップスで登校してきた。やはり素晴らしすぎる曲線美。
「暑すぎただけだから」
ペットボトルの清涼飲料を喉を鳴らして干していく。
顔を上に向けることで首がよく見え、流れていく汗が首元が詰まったノースリーブの中に消えていく。
「ねえ、ボディシートとか持ってない? 切らしてたんだけどドラスト寄るのも億劫でさ」
穴が空きそうなほど凝視していたことに気づかれないようにすぐさま視線を逸らし、カバンの中に視線を移す。
「あるよ。メンズのだけど」
「ありがと、一枚もらうね。トイレ行ってくる」
大判シートの袋ごと渡すと、彼女はカバンから化粧ポーチと一緒に持ってトイレに立った。
普段からBのL展開に遭遇した時に大袈裟なリアクションを取らないようにしてたのが幸いし、顔には出ていなかったようだ。
以前に炎天下の中を歩いた後に彼女の家で”そういうこと”になったのだが、衣服の中で汗だくになった谷間に汗の粒が流れていたのを鮮明に思い出して顔に出ていないかと焦った。というか外気温の暑さと一緒に脳に焼きつくに決まっているだろ、めちゃくちゃ恥ずかしそうにしてたのも含めて。
恋人のあれを生で見て興奮しないわけがないのだが、ここはBL漫画の世界。巨乳の蒸れた下乳よりも男のソレの方が尊ばれるのは、俺には全く理解できないが世界の真理である。
講義が始まる五分前に彼女は戻ってきた。汗で張り付いていた横髪や、跳ねた髪も綺麗に治されて後ろ髪はクリップでまとめられていた。うなじが眩しい。
「助かったよー」
シートの袋を受け取る。
不在時間は五分にも満たないのに、いつもの姿に直すスピードが早い。
「この時期になると更衣室とトイレは匂いがすごいよね」
なるほど、それで特急で済ませてきたのか。
「女子も制汗剤の匂いきついんだ?」
「むしろ男子より種類あるから。さっきはベリー系の匂いがすごかったよ」
薫ちゃんはシャツを羽織り直して、講義の準備を始める。
隣に座った彼女から微かに俺とにおいがして口元を咄嗟に隠した。匂わせ(物理)だこれ。主に彼女の首周りからボディシートの石鹸の香りがする。
俺も大学に着いてから使ったんだった。破壊力高すぎだろ。
「えごめん臭い?」
口元を隠した動作に薫ちゃんは誤解をしたようだ。俺はそれを有無を言わさず否定する。
「違うそうじゃない薫ちゃんが臭いとかありえないから」
「そ、そう…?」
もう二度と香り付きボディーシートは使わないと誓った。
