銀桂の薫りはあなたの気を惹く -Exhibition -
「ミーちゃん失礼します」
「なーん」
腹天で床にゴロゴロと伸びているミーコの前で薫ちゃんが正座をする。
逃げないことを確認すると薫ちゃんはそのまま土下座のような体制でミーコの腹に鼻を当てる。
「すー」
所謂猫吸いである。
いいよな猫吸い。全ての疲れやストレスがこれで改善する気がする。そしていま猫を吸っている薫ちゃんを見ることで俺も同じ効果を得ている。出来ればこの吸引中の薫ちゃんを吸引したいが流石に変態すぎるし、一階に親いるし自重している。
「う゛なん」
「ごめんね、終わりだよ」
「まぅう」
少しの間は大人しく座れていたミーコが動き始めたので薫ちゃんも起き上がる。俺が座っているベッドに並ぶように座り直す。
「いい体験だった…」
「それはよかった」
しみじみと、そしてとても楽しそうに口角を上げて破顔。可愛い。
「ゴロゴロゴロ」
すると一度逃げたはずのミーコが薫ちゃんの膝の上に乗った。可愛い。でもなんで俺じゃないの。いいんだけどさ。いいんだけど。
以前の猫カフェの時もそうだが、薫ちゃんはとても猫に好かれている。なんかフェロモンとか出ているのではないだろうか。俺にも効くタイプの。
「なあ、なーん」
「おっあは、ミーちゃんどうしたの? おわ」
薫ちゃんの胸に前脚を置き立ちあがろうとするので、薫ちゃんはそのままベッドに寝転がる。
「結構いい感じの重み」
胸の上を定位置をしてくつろぐミーコに薫ちゃんも満更でもないようで、そのままされるがまま。うらやま…どっちがとは言わんが。
俺も薫ちゃんと同じようにベッドに寝転がる。彼女の方へ顔を向けると薫ちゃんも同じように俺の方を見ていて驚いた。
「みすぎ」
「見るって」
笑う薫ちゃんの頭を撫でつつ、薫ちゃんの上でくつろいでいるミーちゃんを撫でる。
「私も猫ですって?」
「そりゃあもう愛猫ですよ」
「えー」
ふざけ合った口調で喋ると、薫ちゃんは小さく笑う。このままの体制のまま、俺の肩首の方へ頭を寄せて、ぐりぐりと押してくる。その動きはまさしく猫。
「大事にしてね」
「もちろん」
甘過ぎない涼やかな声に応えるように頬擦りをした。
蝶よりも花よりも、猫よりも大事にするに決まっている。
キスしたい。しても構わんか?
「薫さん、夕飯食べていく?」
母が部屋前の階段を上がってくる音がする。脳直でキスしなくてよかった。こういういいところで他者からの干渉はBL漫画あるあるである。異性カップルには非対応にしてほしいが、あくまで漫画の世界。許されないらしい。
流石に親にいちゃついているところを目撃するのは恥ずかしいにも程があるので、飛び上がるように身体を起こした。薫ちゃんもミーコに気遣いつつ起き上がる。
一応ノックの後、母が廊下から顔を出す。
「いいんですか?」
「もちろんよ。ぜひ食べていって」
「ありがとうございます。ご馳走になりますね」
「なーん」
ミーコは母見ると、顔を覗かせるドアの隙間から廊下へ出ていく。
家内のパワーバランスは相変わらずで、薫ちゃんすら母には勝てないようだ。
「あぁ行っちゃった」
「ミーコの中では母が一番だから」
「強い」
本当にね。