銀桂の薫りはあなたの気を惹く -Exhibition -
春の嵐というやつだろうか、今日は明け方から豪雨が続いている。
家を出る前からこうも大降りだと自主休講したくなる気持ちをグッと堪え、教材やノートを撥水素材のカバンに詰め替え、靴も水が染みてこない素材のを選ぶ。…この時点でかなりだるい。
家を出発し、電車に乗る。車内の床が雨水で濡れて滑りやすい。ここで滑って転びそうになるとBL漫画ではフラグになってしまうので体幹が重要である。
漸く大学に到着した。ズボンの裾が濡れて気持ち悪い。もう帰ろうかな。
「おはよう」
「おはよ」
薫ちゃんがやってきて俺の隣に着席した。ヘアクリップで髪がまとめられていて可愛い。やっぱり一緒に授業受ける。
暑い時期だとよくまとめ髪だが、雨の強い日でもまとめ髪でとてもいい。結構首細いんだよな。
「今日は傘無事?」
「そう何回も壊れるもんじゃないよ」
前に傘が壊れたのは、風が強かったからで、今日は雨こそ激しいが風があるわけではない。
「うわ、小賀お前濡れ過ぎだろ」
「傘壊れちゃって…」
思った側からフラグを回収すな。
教室に入ってきた小賀はまさしく濡れネズミ状態だ。頭のてっぺんからつま先までびしょ濡れ。
「誰かタオル貸してえ」
すると、隣に座っていた薫ちゃんが立ち上がるとカバンからタオルを取り出して小賀の方へ向かっていく。
「カバンの中は?」
「ありがとう薫。……やばいかも」
「ほら出して」
小賀の頭にタオルを乗せるとほか友人数人と一緒になってカバンの中の確認を始める。仕方なく俺も人だかりの方へ向かう。
「よかったぁ無事だ」
「本人が一番無事じゃないけど、着替えはあるの?」
「ない!」
「元気に言うことじゃない」
なんだよもー滅茶苦茶羨ましい。なんでそんなに距離感近いん? いや分かるよ、友人と彼氏で距離感違うのも、そもそも俺と小賀では薫ちゃんとの関係歴には差がある。とはいえ、羨ましいものは羨ましい。
「保険管理行ったら着替え貸してくれるんじゃね?」
「ああ確かにな」
会話に入ってきた俺へ振り返り、一瞬目を丸くしたかと思えば無言で見つめてくる。無表情寄りで何を考えているのか分からない。
「ごめん薫、タオル借りるな」
「ちゃんと返してね」
小賀が荷物を持って教室から出て行ったので周りも解散していく。
俺も席に戻ろうとすると、ポンポンと軽く肩を叩かれ振り向くと薫ちゃんに頬を指で刺された。俺の凹む頬を見て薫ちゃんは吹き出す。
「引っかかったね」
「ひどー」
笑って返すと「ごめんごめん」と悦に入りながら背中を摩られながら座っていた座席に誘導される。
…顔に出ていたのか、気を遣われてしまった。
しかし、彼女のこの行動の通りだろう。ボディタッチは当然小賀にはしないだろうし、同性の友人にもしているところを見たことがない。俺だけにしてくれる行動。
「うわ…」
そういえばこの授業、水元も居たんだっけ。
うわじゃねえ俺の心の声を読んで引くな。くっそ恥ずかしくなんだろうが。
「……」
薫ちゃんも無言で嬉しそうに笑わないで。