銀桂の薫りはあなたの気を惹く -Exhibition -
「髪型いつもと違うね、可愛い」
「ありがと。でもこれは寝坊して巻けなかっただけ」
教室に入るといつもとシルエットが違う薫ちゃんがすでに座っていた。
薫ちゃんは俗にいうレイヤーカットという髪型だ。それを軽く内巻きに巻いて右側の横髪を耳にかけている。ピアスがよく見える状態でよく組み合わせも変わるので、薫ちゃん本人がオシャレを楽しんでいるようで、俺もその楽しい気分を分けてもらえている。
今日の彼女は髪全体がストンとまっすぐ垂れている。寝起きとかすっぴんを見たことがあるので、真っ直ぐな状態が何もしていない状態であるというのは分かる。ただ単に普通に下ろしたい日もあるだろうと思ったのだ。もちろん寝坊という理由も可愛いが。
「珍しいね。平日はちゃんと起きるのに。ラインも難しいなら無理に送らなくていいよ?」
薫ちゃんは決して寝起きが良いタイプではないが、部活の朝練にはちゃんと出れるぐらい、しっかり起きる時は起きれるタイプだ。これまでの学生生活でも遅刻とかはないらしい。
ラインもほぼ毎日朝に送り合っているが、スタンプとかで「おはよう」とか「眠い」とかのやり取りぐらいだし忙しいならパスしてくれて全然構わないものだ。
「返信した後にソファに座ったら寝ちゃったの」
「確かにあのソファは寝る」
薫ちゃんの自宅にあるソファは魔性である。あそこで映画を見ようと腰掛けたら座り心地が良過ぎて高確率で寝落ちる。
「元々のレベルが高いとやっぱなんでも可愛いんだな…」
「そんな大仰に、知見を得たみたいな言い方しなくても」
「事実だし」
「……じゃあ──くんの好みは? 今日と普段、どっちが好み?」
なんだと。薫ちゃんからその手の質問が出てくるとは意外だ。
普通の女性ならこういうのは気合いが入っている方を推すのが最善だ。労力を考慮しない男に女性は厳しい。男に好みを聞く体でありながら実際に問ているのは聞き手のあり方について。だが、相手は薫ちゃんだ。これは単純に俺の好みを聞きにきている。
で、俺の好みなわけだが。正直どちらも好きなので甲乙つけ難い。俺は薫ちゃんや、一部のBLカップルの近くにいる友人ポジの女子など限られた属性の異性しか顔のパーツを認識できない。薫ちゃんに告白されるまで”巨乳の女子”であれば誰でもいいと思っていたような人間だ。女子のファッションなんかは見分けるための情報でしかなかった。
つまり、薫ちゃんが可愛いくて彼女が好きならなんでもいいのである。俺の”巨乳女子”という好みに関して、薫ちゃんは文句の付け所のないレベルで満たしているからな。
「どっちも好き」
結論を出すまで二秒。まあ色々考えを巡らせたがこれ以外にはない。
「言うと思ったよ」
薫ちゃんの反応も普通だ。俺のパーソナルに関して知らないことはほぼないだろうし、思考も察しがついているかもしれない。
いつもの仕草で右の髪を耳にかける。すると横からでも口元がよく見える。
口角が少し上がっていた。ああ、照れてるのか。
「強いていうなら、可愛いを作ろうとする薫ちゃんは滅茶苦茶可愛いね」
「……可愛いが飽和してない? 落ち着いて」
事実だもんなあ。