銀桂の薫りはあなたの気を惹く -Exhibition -


 五人で某回転寿司チェーンにやってきた。
 前回のカラオケと同様、真山の予備の胃袋作戦である。前回の失敗を活かし、今回はもう一つ胃袋を用意した。
「本当に真山の奢りでいいの? オレ金ないけど」
「いいよ〜、じゃんじゃん食べて。そしてガチャを回しておくれ」
 疫病神こと小賀である。こいつがいるだけで真山の目当てキャラが出てこなさそうだが、胃袋の予備はあればあるほど良い。
 幸いなことに今回は回転寿司で、皿五枚ごとに一回ガチャが引けるシステム。前回のように無限にコラボドリンクを飲まなくて済む。あれ、アイスとかホイップがトッピングされていて結構重かったんだよな。
 そして真山の推しカプがいるガチャ。ランダムで十種。単純に五十枚食べればいいというわけではないのが恐ろしい。
「真山くん。お味噌汁頼んでもいい? 流石にお寿司だけはしんどい」
「いいよ〜」
「じゃあ俺は茶碗蒸しとラーメン、」
「サイドばっかり食べたら半額払ってもらうから」
「……うす」
 流石にラーメンは許されなかったか。寿司屋のラーメンは麺はともかくスープが美味いから好きなんだけど。
 まあ大人しく寿司食うだけでタダなのだから、真山に胃袋を貸すのはやぶさかではない。今日は水元も食い溜めとか言って食べる気満々のようだし。
「最近はシャリハーフとかあるんだ」
 流れてくる皿を取る俺の隣で、注文用のタッチパネルを触る薫ちゃんが呟く。
 通常流れている寿司のシャリは一般的なサイズだが、パネルで注文するとシャリハーフというものが選べる。
「あるね。俺は米も食いたいから通常で頼むし、流れてるのも取るけど。値段も一緒だし」
「色々試したい時はハーフだと少食の人はいいかもね。その分料金は嵩むけど」
 確かに。寿司って個数食ったぶんシャリの量がすごいんだよな。それを半分にできる分胃袋が開く。
 その空いた分、また食べるわけだから料金も増えることになる。普段なら料金を気にしてしまうところだが、今日は真山持ち、しかも数を求められているのでちょうどいいかもしれん。

「食べ終わったお皿ちょうだい」
「おう」
 どんどん空いていく皿を真山は自身も食べながら、どんどん回収口へ流していく。
 流石に食べる大学生。一人が五枚食べるだけで五回廻せるだけありかなりスピーディだ。目当てが出るとは言っていないが。
 ただ寿司を食うだけなら小賀の不運もそこまで発揮されないし。
「そういえば真山の目当てのキャラってどれ?」
「あの白髪赤目のキャラと、黒髪翠眼のキャラだよ」
「へえ」
 下手に小賀に認知させると物欲センサー発揮されないか? 大丈夫か?
「俺の海老天まだかな…」
 オーダー忘れられている説。まあ揚げ物だし単純に遅い場合もある。
 というか、小賀がいる関係で読心してることを伏せているせいで水元が普段より余計喋んねえんだよな。下手に喋るとボロ出そうだし、それでいいと思う。
「そういば薫って高校の時、回転寿司に入ったことないて言ってたよな」
「最近までは殆どなかったよ」
 高校の話と聞いて、身構えたがそれは俺も前に聞いたことがある。
「最近は──と行くの?」
「うん。ねー?」
「そう」
 小賀を見たあと、俺に視線を向けて笑みを浮かべながら同調を求められたので応える。
「今まで寿司とか食わなかったのか?」
「いや、食べてたよ。回らないお店で」
 自分で聞いてショック受けてやんの。まあ水元ほどではないが俺も聞いた時は驚いた。
「確かに味とか全然違うけど、最近は量が多い方が嬉しいかな」
 根本的にガツガツ食べるようなお店ではないからな。回らない店は。
「おっ、おお出たー!」
 マヤセン、目当てのキャラ一人目ゲットである。
「やったな真山。でも今の時点で結構食ったよな……」
 皿は流してしまっているのでいくら食べたか正確には分からないが、確か今ので七回目だったか。すでに真山のペースは落ち目だしどうなるか。
「君に全てかかってるからね任せたよ」
「なんで俺だよ」
「単純にこの中で君が一番食べる」
 ひ、否定できない。
「どうした薫ちゃん。お茶飲みたい?」
 箸を止めて俺を無言で見つめてくる。俺はレーン側に座って、お湯が出る急騰口もこちらにあるのでお茶のおかわりかと思えばそうではないらしい。
「沢山食べるのにお腹が薄くて人体の理不尽を感じてたところ」
「えぇ」
 薫ちゃんもスタイルはいいだろ。人がいる場所で言うのは憚られるレベルと理由で良い。俗にいうグラマラスボディだし。
「中年になって太るだろ」
 水元言いやがる。
 血筋的にハゲはないが、小太りおじさんはなあ……BL的なフラグはないかもしれんが、薫ちゃんとの結婚生活を考えたらなしだ。
「大丈夫。ぽっこりしてきたら一緒に運動しよう」
「ガチなやつじゃん」
 …待て、今のってプロポーズか?
 なんか水元にテーブルの下で足蹴られたんだけど。冗談じゃん。いや、そのうち本当にするつもりだが。
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