誰の為の庭園か
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朝、部屋に向かう途中にどこかで見たことのある金髪の男から、
「よぉ、薔薇の様子はどうだい?」
急にそんな風に話しかけられた、どう答えるか戸惑っていると、取り巻きのような二人を連れてさっさと行ってしまった。その表情に妙な気分を感じたのは、己の得意技が被害妄想だからだろうか。
昨日気がかりだった土の様子は特に変わっていなかった。つまり、昨日と同じで回復していないということだ。回復だなんて大袈裟に言ってみたが、水の吸いがどうやら悪いらしい。今日には綻んでいても良さそうな蕾も綴じたままだ。やっぱり何かおかしい。目を皿にして一日中薔薇の葉を掻き分けて異常を探したが、何も見つからない。
(一体、何だってんだ……。)
心が不快な焦りにじっとりと濡れる。ようやく千本揃うってのに、一体何が起こっているというのか。自身の知識や今までの経験を総動員させてみたが、どうもわからない。
「くそっ!!」
焦りが言葉になった。
もしかしたら、自分の知識から漏れている何か原因のような物があるのかもしれない。
庭師は棚に仕舞い込まれていた園芸についての分厚い本を何冊も取り出した。長い間、日の目を見ていなかった本たちは埃と塵に塗れていた。時折咳き込みながらも、その本を一冊一冊開いては、病気や異常に関する項目を見て回ったが、どれも既存の知識で何一つハッとさせられるものはなかった。
全ての本を読み終わり、なにも成果が得られなかった事を憂いていると、ふっと壁の時計が目に入った。
(あぁ、もうこんな時間……)
何刻も経っていたようで、外ではもう陽が沈んでいるかもしれない。
最後に瓶の水を入れ替えて、薔薇達に水をやって今日はもう終わりにしなければ。
活字疲れの重たい脳を抱えて椅子から立ち上がった。
結局今日も原因が分からなかった。仕方なしと肥料を多目に撒いてやる。願わくば明日には回復していますように。
そんな思いで扉に手をかけ、最後に庭園を一望した。
「ん?」
床にメモ用紙が落ちていた。庭師はメモ用紙など今までに持ち込んだことがなかった。
(誰かの落とし物か?)
拾ってみると、それは随分と埃と塵に汚れていて所々黄ばんでおり、奥にあった本を取り出したときに一緒に落ちてきたのだと思われた。表面には何か黒い線がぐちゃぐちゃと引かれており、それが文字だと気づくのにだいぶ時間がかかった。
かろうじて文字とわかるそれは全てひらがなで書かれており、形もしっちゃかめっちゃかで、余所見をしながら書いたか、目を瞑りながら書いたような酷く乱雑なものであった。
時間を要しそうだと椅子に座って眺めてみたが、何か文字らしき線の他に数字が書かれてあったくらいで読解することは不可能であった。
「はぁ……何やってんだろ。」
すっかり疲れた眼球を解そうと目頭を抑え、メモから顔をあげる。
重要そうな物には見えないし、捨て置いても問題はないだろう。そのままメモを机の上に放っておいた。
その後、戸締まりをきちんと確認して部屋を出た。床についても、庭園の事が妙に気がかりになってよく眠れなかった。
「よぉ、薔薇の様子はどうだい?」
急にそんな風に話しかけられた、どう答えるか戸惑っていると、取り巻きのような二人を連れてさっさと行ってしまった。その表情に妙な気分を感じたのは、己の得意技が被害妄想だからだろうか。
昨日気がかりだった土の様子は特に変わっていなかった。つまり、昨日と同じで回復していないということだ。回復だなんて大袈裟に言ってみたが、水の吸いがどうやら悪いらしい。今日には綻んでいても良さそうな蕾も綴じたままだ。やっぱり何かおかしい。目を皿にして一日中薔薇の葉を掻き分けて異常を探したが、何も見つからない。
(一体、何だってんだ……。)
心が不快な焦りにじっとりと濡れる。ようやく千本揃うってのに、一体何が起こっているというのか。自身の知識や今までの経験を総動員させてみたが、どうもわからない。
「くそっ!!」
焦りが言葉になった。
もしかしたら、自分の知識から漏れている何か原因のような物があるのかもしれない。
庭師は棚に仕舞い込まれていた園芸についての分厚い本を何冊も取り出した。長い間、日の目を見ていなかった本たちは埃と塵に塗れていた。時折咳き込みながらも、その本を一冊一冊開いては、病気や異常に関する項目を見て回ったが、どれも既存の知識で何一つハッとさせられるものはなかった。
全ての本を読み終わり、なにも成果が得られなかった事を憂いていると、ふっと壁の時計が目に入った。
(あぁ、もうこんな時間……)
何刻も経っていたようで、外ではもう陽が沈んでいるかもしれない。
最後に瓶の水を入れ替えて、薔薇達に水をやって今日はもう終わりにしなければ。
活字疲れの重たい脳を抱えて椅子から立ち上がった。
結局今日も原因が分からなかった。仕方なしと肥料を多目に撒いてやる。願わくば明日には回復していますように。
そんな思いで扉に手をかけ、最後に庭園を一望した。
「ん?」
床にメモ用紙が落ちていた。庭師はメモ用紙など今までに持ち込んだことがなかった。
(誰かの落とし物か?)
拾ってみると、それは随分と埃と塵に汚れていて所々黄ばんでおり、奥にあった本を取り出したときに一緒に落ちてきたのだと思われた。表面には何か黒い線がぐちゃぐちゃと引かれており、それが文字だと気づくのにだいぶ時間がかかった。
かろうじて文字とわかるそれは全てひらがなで書かれており、形もしっちゃかめっちゃかで、余所見をしながら書いたか、目を瞑りながら書いたような酷く乱雑なものであった。
時間を要しそうだと椅子に座って眺めてみたが、何か文字らしき線の他に数字が書かれてあったくらいで読解することは不可能であった。
「はぁ……何やってんだろ。」
すっかり疲れた眼球を解そうと目頭を抑え、メモから顔をあげる。
重要そうな物には見えないし、捨て置いても問題はないだろう。そのままメモを机の上に放っておいた。
その後、戸締まりをきちんと確認して部屋を出た。床についても、庭園の事が妙に気がかりになってよく眠れなかった。