誰の為の庭園か
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園芸の手入れが終わり、部屋の隅の大きな花瓶の下に向かう。
ここには今まで摘んだ薔薇が全て集められている。何百本という大量の薔薇だ。噎せ返るほどに凝縮された蜜の香りが鼻の根に絡みついてくる。古いものだと数年前からの物もある。枯れてしまわぬように切り花用の薬剤を花瓶の水にいれる。
(こういう時、天人の技術って便利だよなぁ。)
理由は聞いていないが、千本集まったら報告してくれとまた子様に言われている。今は900と少し。今年の薔薇の出来にもよるが、いよいよ千本集まるのではないかと、密かに楽しみにしているのだ。
強烈な匂いのせいか虫がよく集る。食われでもしたらせっかくの薔薇がもったいない。一本一本取り出して状態を見て、花瓶の水を変えて萎れないように薬入れて、手入れをするのだ。一抱えもある最早、瓶と呼んでも良いような花瓶の水を下水に流して、新しい水を注ぐ。
(しかし、どうしてまた子様は千本も集めるのか……総督にでもプレゼントされるのかなぁ。)
薔薇というのは面白い花で、贈る本数によって意味が違うのだ。それには、愛の言葉もあれば縁切りの意味合いを含むものすらある。無論庭師はそこに薔薇の面白さの一つを見出し、ほとんどの花言葉は頭の中に入っているのだが、千本の薔薇を贈る意味が思い当たらなかった。
(999本なら分かるんだけどなぁ、千本の薔薇の意味ってあったか?)
赤い薔薇の花言葉は「情熱」「愛」。咲かす薔薇が赤だけの事からも、単純な意味で、「愛」の意味を込めて千本贈るのかもしれない。
(量は愛だっていうけどなぁ……)
自分だったら始末に困る。なんてロマンもへったくれもない現実的な考えをしてみせた。それに千本集めるのには莫大な労力がかかる。何年もかけて薔薇の世話をしなければいけない。その大変さは自身が一番解っていた。人に任せるとはいえ、千本もの薔薇を用意するにはそれなりの理由があってもいいものだ。
(最も、また子様の総督への愛は半端じゃないからなぁ、やりかねないな。)
自分も数えるほどしか姿を見たことのない鬼兵隊のボス。冷たくどこか人間離れした印象を受け取った。そんな総督が薔薇を受け取ったら、どんな反応を見せるのか。男にはさっぱり想像できない。
花瓶に溜まっていく水を眺めながらそんなことを考えていた。
ここには今まで摘んだ薔薇が全て集められている。何百本という大量の薔薇だ。噎せ返るほどに凝縮された蜜の香りが鼻の根に絡みついてくる。古いものだと数年前からの物もある。枯れてしまわぬように切り花用の薬剤を花瓶の水にいれる。
(こういう時、天人の技術って便利だよなぁ。)
理由は聞いていないが、千本集まったら報告してくれとまた子様に言われている。今は900と少し。今年の薔薇の出来にもよるが、いよいよ千本集まるのではないかと、密かに楽しみにしているのだ。
強烈な匂いのせいか虫がよく集る。食われでもしたらせっかくの薔薇がもったいない。一本一本取り出して状態を見て、花瓶の水を変えて萎れないように薬入れて、手入れをするのだ。一抱えもある最早、瓶と呼んでも良いような花瓶の水を下水に流して、新しい水を注ぐ。
(しかし、どうしてまた子様は千本も集めるのか……総督にでもプレゼントされるのかなぁ。)
薔薇というのは面白い花で、贈る本数によって意味が違うのだ。それには、愛の言葉もあれば縁切りの意味合いを含むものすらある。無論庭師はそこに薔薇の面白さの一つを見出し、ほとんどの花言葉は頭の中に入っているのだが、千本の薔薇を贈る意味が思い当たらなかった。
(999本なら分かるんだけどなぁ、千本の薔薇の意味ってあったか?)
赤い薔薇の花言葉は「情熱」「愛」。咲かす薔薇が赤だけの事からも、単純な意味で、「愛」の意味を込めて千本贈るのかもしれない。
(量は愛だっていうけどなぁ……)
自分だったら始末に困る。なんてロマンもへったくれもない現実的な考えをしてみせた。それに千本集めるのには莫大な労力がかかる。何年もかけて薔薇の世話をしなければいけない。その大変さは自身が一番解っていた。人に任せるとはいえ、千本もの薔薇を用意するにはそれなりの理由があってもいいものだ。
(最も、また子様の総督への愛は半端じゃないからなぁ、やりかねないな。)
自分も数えるほどしか姿を見たことのない鬼兵隊のボス。冷たくどこか人間離れした印象を受け取った。そんな総督が薔薇を受け取ったら、どんな反応を見せるのか。男にはさっぱり想像できない。
花瓶に溜まっていく水を眺めながらそんなことを考えていた。