誰の為の庭園か
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「あの、ひょっとしてなんですが……」
「むぅ?」
いつも通りの作業中にも、犯人の事を考えていた。参謀様に任せておけば万事解決とは分かっているが、どうも思考が止まらない。
「もしかして、今回の犯人って、この部屋の前の持ち主だったりしませんかね。」
昨日の万斉様の発言によれば、前の持ち主は薔薇の香りが苦手らしい。戻りたいというのに、臭い薔薇が邪魔。ならば枯してしまえ。そう考えての犯行かもしれない。そんな憶測を口に出してみれば、万斉様のタイプ音が止まった。
「奴が……?」
なんだか、空気が変わったがこちらから伺えるのは後ろ姿だけのため、不穏なものかどうかはわからない。ただ、そうでないことを祈った。
「くっ、はっはっはっはっはっはっは」
万斉様は笑った。大きな声で笑った。
「あっはっはっはっはっはっはっは」
何がそんなおかしいのか、さっぱりわからない。ただ、機嫌損ねた訳ではないと安心した。
「奴が戻って来るために、庭園を荒らす、か。これはまた面白い。ははははは」
こちらもつられて口角が上がるが、これは苦笑いだ。
「えっと、外れましたかねぇ。」
「あぁ、残念ながらな。奴はもう死んでいる身故に、化けてでも出てこない限り無理でござろう。」
「え」
「あっははははは。」
どうやら以前の持ち主は死んだらしい。確かに鬼兵隊というこの組織に身を置いていれば、いつ死んでもおかしくないのだ。それは身を持って知っていた筈だが、生ぬるい庭園に身を置いていたせいか、どこか重く捉えてしまう。
「ははははははは」
それにしても万斉様は死人を笑っておられる。人斬りと恐れられるお人ともなればこれくらいの事、笑い話なのだろうか。屑と言っていた男の死に様はスカッと心の晴れるモノだったのか。
「よく、笑われますね。」
「そうか?」
「そんなにその男の死に様は愉快なものだったんですか?」
そう聞いた直後だ。
「……。」
あんなに大口開けて笑っていた万斉様の様子はおとなしくなった。地雷を踏み抜いたかと、怖れた。
「そうだな、ある意味、そうであったかもな……」
そう言って万斉様はまた押し黙った。
(どうしてこの人はよく感情が変わるもんで、心臓に悪い。)
この人が本気になれば自分なんて簡単に、この庭園の肥料だ。臆病だのごますりだの言われても仕方がない。非力な自分は万斉様の顔色を伺うしかない。
(あ、虫発見。)
見つけた毛虫を踏み殺して土壌の肥料にした。