誰の為の庭園か
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「拙者が見張っているため、主は床に戻っても良いのだぞ?」
「いえいえ、そういう訳にもいきませんって。」
すっかり日も暮れた。今日もここで晩を明かそうとしたら、万斉様にそう言われた。
「ふむ、気にする必要は無いと言うに。」
「気にするな言われましても、この庭園の管理は俺に任されてるんです。狙われてるここを放っては置けないですって。それにここで寝た方が熟睡できるんですよね。」
「もしそれが本当ならば、主は生粋の庭師でござるな。」
そう言って軽く笑んだ。眩しい笑顔だ。クラっとした。
(もう、寝よう。疲れた。)
庭園の床に布団を敷いてみるのは些か滑稽のような気もしたが、同時によく眠れそうな気もした。傍らの万斉様に見張りを預けて、自分だけ寝るのは憚れる。かと思ったが、土の匂いを感じていたら直ぐに眠たくなった。
(こういうのを生粋の庭師って言うのかな……)
そんな事を考えたのを最後にぐっすりと眠りに落ちた。
*
「………………ぅ」
自然と身体が朝を迎えた。意識が覚醒すると、自分の呻きの他に軽いプラスチック音が聞こえる。例えるならば、キーボードのタイプ音ような。
「っ!!!」
一気に冷めていった眠気に飛び起きれば、
「む、目覚めたか。おはよう。」
椅子に座っていらっしゃる万斉様と目が合う。
「お、おはようございます……」
辛うじて返事をしながら、どうしてこんな事になっているのか、昨日の記憶を手繰り寄せる。
(あぁ、そっか、護衛か、見張りか)
「昨夜は誰の襲撃もなかった。近づく者は居ったがな。」
「え、そ、それで?」
「いや、こちらを伺って引き返したようだ。特に仕掛けて来なかったので、捨て置いた。」
(えぇ……)
そこで捕まえておけば全て解決したのでは無いかと思ったが、そんな事を口に出すほどバカじゃない。
「心配はいらぬ。全て武市に任せておけば良いのだ。」
「は、はぁ……」
結局、犯人を捕まえるチャンスは逃したモノの、被害が何も無かった。その事実だけで十分であった。