【夢】紅桜になって似蔵を救うお話
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薄目を開けると、何かが見えた。暗闇ではない何かだ。見覚えのあるそれにピントを合わせていると、畳の目である事に気づいた。気が付いた彼女は、自分が横たわっていることにも気づいた。
(あれ、ここ……)
さっきまで真っ暗闇に居たと言うに、いつの間に電気がついたのか。
(さっきの、夢か……。)
奇妙な桃色の塊を鮮明に覚えていた。気味が悪い、夢で良かった、などと安堵していたが、
(ん?なんで私、和室なんかで寝て……?)
彼女の家には和室が一つあったが、彼女はいつも洋室である自室で寝ていた。
上半身を起こすと、この畳は、この部屋は自分の知る物と全く違う物だと言う事に気が付いた。
(あ、あれ!?)
彼女が慌てて立ち上がる。辺りを見ても覚えのある和室とは造りも置いてある物も違った。
(まだ、夢、みてんのかな……?)
ふと、襖が少し開けられ、隣の部屋から、淡い光が暗い室内の入り込んでいることに気が付いた。
彼女は何と無しにそちらの方に引き寄せられる。隙間から覗いてみると、見事な円窓が見えた。そこから見える夜空の見事な月も。そして、
(誰かいる……?)
その窓縁に腰かける何者かの姿も見つけられた。
月明かりの逆行を受けて、姿が翳り詳しくは分からない。
(誰……?)
その瞬間、自分の心臓が早鐘を打っていることに気が付いた。
(だ、大丈夫だよ。知らない人だけど、夢だし、うん、そんな緊張することないよ。)
言い聞かせるように胸中で呟く。はたして、夢の中でここまでリアルな緊張を感じる事はあるのだろうか。
夢だから大丈夫と自身に言い聞かせ、好奇心に従って彼女は襖に手をかけた。
(あれ……?)
しかし、彼女の手に襖がかかる事はなく、彼女の手は襖にめり込むように通り抜けた。痛いだとか異物感だとか、そういった感触は全くなく、空を切るかのように彼女の手は襖を横切っている。
(夢だからって何でもありかい。)
何度掴もうとしても幽霊のようにすり抜けてしまう。
(困ったなぁ、どうやって開けようか。)
試しにもう片方の手で開けてみようともしてみたが、結果は同じであった。
(あ、違うや。普通に通り抜ければいいんだわ。)
彼女が恐る恐る手から肘、肘から肩、と襖に自分の体を通らせていく。
(おぉぉおぉぉ、こわ、でもおもしろ。)
彼女の体は襖を通り抜け、隣の部屋に入り込んだ。
窓の人影は彼女の存在に気づいていないらしい。
正体不明の人物と同じ空間に入ったと言う事で、彼女の緊張感が更に増す。狭い隙間からではなく、人影を見てみる。
月明かりとも言えぬ不自然な紅色に照らされたその人物は輪郭がぼんやりと夜空に浮かび上がっていた。
(あれ……?)
その形にどこか覚えがあった。それが何だったか、彼女はしばらく立ち止まってその輪郭を眺めていた。
すると人物が動いた。手に持つ細長いものを掲げるようにした。
その掲げた細長い物にも見覚えがあった。それは直ぐに思いだした。
(あれって、刀……?)
次の瞬間、見覚えのあった輪郭が彼女の記憶と一致した。
「にぞっ__」
彼女がその名前を呼ぼうとした瞬間。
その影が素早く動いた。こちらを振り返り、彼女の喉元に刀を突きつける。
「__!!」
彼女は声も出なかった。恐怖、それも勿論あったろう。しかし、それ以上に心を奪われる物があった。
畳に足付け、刀を突きつけながら見下ろしてくる。彼の顔が、今度はハッキリと目の前に。
(に、に、)
彼女は口をぱくぱくとした。
閉じられたその彼の眼差しと確かに目線があった。
彼女が何かを言おうとする前に、彼の口が先に開いた。
「気のせいかね……。」
(え……?)
そういった彼は、刀を降ろし、先ほどと同じように窓縁に腰を掛け直した。
(……あれ?……え?)
後には、大層な混乱の最中に取り残された彼女だけが残った。
(あれ、ここ……)
さっきまで真っ暗闇に居たと言うに、いつの間に電気がついたのか。
(さっきの、夢か……。)
奇妙な桃色の塊を鮮明に覚えていた。気味が悪い、夢で良かった、などと安堵していたが、
(ん?なんで私、和室なんかで寝て……?)
彼女の家には和室が一つあったが、彼女はいつも洋室である自室で寝ていた。
上半身を起こすと、この畳は、この部屋は自分の知る物と全く違う物だと言う事に気が付いた。
(あ、あれ!?)
彼女が慌てて立ち上がる。辺りを見ても覚えのある和室とは造りも置いてある物も違った。
(まだ、夢、みてんのかな……?)
ふと、襖が少し開けられ、隣の部屋から、淡い光が暗い室内の入り込んでいることに気が付いた。
彼女は何と無しにそちらの方に引き寄せられる。隙間から覗いてみると、見事な円窓が見えた。そこから見える夜空の見事な月も。そして、
(誰かいる……?)
その窓縁に腰かける何者かの姿も見つけられた。
月明かりの逆行を受けて、姿が翳り詳しくは分からない。
(誰……?)
その瞬間、自分の心臓が早鐘を打っていることに気が付いた。
(だ、大丈夫だよ。知らない人だけど、夢だし、うん、そんな緊張することないよ。)
言い聞かせるように胸中で呟く。はたして、夢の中でここまでリアルな緊張を感じる事はあるのだろうか。
夢だから大丈夫と自身に言い聞かせ、好奇心に従って彼女は襖に手をかけた。
(あれ……?)
しかし、彼女の手に襖がかかる事はなく、彼女の手は襖にめり込むように通り抜けた。痛いだとか異物感だとか、そういった感触は全くなく、空を切るかのように彼女の手は襖を横切っている。
(夢だからって何でもありかい。)
何度掴もうとしても幽霊のようにすり抜けてしまう。
(困ったなぁ、どうやって開けようか。)
試しにもう片方の手で開けてみようともしてみたが、結果は同じであった。
(あ、違うや。普通に通り抜ければいいんだわ。)
彼女が恐る恐る手から肘、肘から肩、と襖に自分の体を通らせていく。
(おぉぉおぉぉ、こわ、でもおもしろ。)
彼女の体は襖を通り抜け、隣の部屋に入り込んだ。
窓の人影は彼女の存在に気づいていないらしい。
正体不明の人物と同じ空間に入ったと言う事で、彼女の緊張感が更に増す。狭い隙間からではなく、人影を見てみる。
月明かりとも言えぬ不自然な紅色に照らされたその人物は輪郭がぼんやりと夜空に浮かび上がっていた。
(あれ……?)
その形にどこか覚えがあった。それが何だったか、彼女はしばらく立ち止まってその輪郭を眺めていた。
すると人物が動いた。手に持つ細長いものを掲げるようにした。
その掲げた細長い物にも見覚えがあった。それは直ぐに思いだした。
(あれって、刀……?)
次の瞬間、見覚えのあった輪郭が彼女の記憶と一致した。
「にぞっ__」
彼女がその名前を呼ぼうとした瞬間。
その影が素早く動いた。こちらを振り返り、彼女の喉元に刀を突きつける。
「__!!」
彼女は声も出なかった。恐怖、それも勿論あったろう。しかし、それ以上に心を奪われる物があった。
畳に足付け、刀を突きつけながら見下ろしてくる。彼の顔が、今度はハッキリと目の前に。
(に、に、)
彼女は口をぱくぱくとした。
閉じられたその彼の眼差しと確かに目線があった。
彼女が何かを言おうとする前に、彼の口が先に開いた。
「気のせいかね……。」
(え……?)
そういった彼は、刀を降ろし、先ほどと同じように窓縁に腰を掛け直した。
(……あれ?……え?)
後には、大層な混乱の最中に取り残された彼女だけが残った。