【夢】紅桜になって似蔵を救うお話
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彼女が生まれたのは、熱気の籠る小さな鍛冶場。鉄と鉄が打ち合い鳴る、気勢の良い音。そこに意識は浮かんだ。
__……
最初はぼんやりと曇った目の前の景色を眺めているだけだった。
目の前に映るのが人間だと分かるには大分時間がかかった。それも、大雑把に男だという事、長めの髪の毛が生えている。そういう事しか分からない。
生まれたばかりの彼女の意識がすっかりと覚めるにはまだ時間がかかる。
その男が誰で、自分は一体何処に居て、一体何者か、それを思考するまで頭はハッキリとしていなかった。
吸い込まれるように、彼女の意識はまた消えていく。
*
次に意識が浮かんだのは、耳元をボコボコッと何かが通り過ぎた音が皮切りであった。
身を包む浮遊感に、夏に遊びに行ったプールを思い出す。
ボコボコッと再び泡沫が体を撫でながら昇っていく。
目の前の景色は薄いピンク一色で何も見えない。
__……どこ、ここ。
まだ靄がかる頭でどうにか状況を把握しようとした。
重たい瞼を擦ろうと右腕を上げた。つもりだった。
__あれ?
しかし右腕は上がらない。それと同時に左腕が上がらない事にも気が付く。
どうやら体の自由が利かないようだ。
__困ったな……。
彼女は驚く程に冷静であった。
もう一度言うが、彼女は平和ボケしたごく普通の人間だ。
身体の自由が利かない状況など軽くパニックに陥ってもおかしくはないのだが、今彼女の意識は混濁していて自分の置かれている状況をいまいち理解していないのだった。彼女としては幸運だろう。
__眠い……。
そんな彼女の周りは先ほどまで静寂で、泡沫の立てる音しか響いていなかったというのに。モーター音が機動する音を始めとして、段々と機械音が騒がしくなった。
外の騒々しさと反比例して彼女の意識は段々と薄くなっていった。
ボコボコボコッと一気に泡沫が体中を撫で上げていく。体を包んでいた水が抜かれていく。感覚の上の方から外気に晒されていくのがぼんやりと分かった。
__ねむ……
周りで動きがあるというのに彼女はどんどんと沈んでいった。
意識が沈み切る直前に、
「仲良くやろうね。紅桜。」
__にぞ、う……さん……?
聞こえるはずの無い声が聞こえた。
__……
最初はぼんやりと曇った目の前の景色を眺めているだけだった。
目の前に映るのが人間だと分かるには大分時間がかかった。それも、大雑把に男だという事、長めの髪の毛が生えている。そういう事しか分からない。
生まれたばかりの彼女の意識がすっかりと覚めるにはまだ時間がかかる。
その男が誰で、自分は一体何処に居て、一体何者か、それを思考するまで頭はハッキリとしていなかった。
吸い込まれるように、彼女の意識はまた消えていく。
*
次に意識が浮かんだのは、耳元をボコボコッと何かが通り過ぎた音が皮切りであった。
身を包む浮遊感に、夏に遊びに行ったプールを思い出す。
ボコボコッと再び泡沫が体を撫でながら昇っていく。
目の前の景色は薄いピンク一色で何も見えない。
__……どこ、ここ。
まだ靄がかる頭でどうにか状況を把握しようとした。
重たい瞼を擦ろうと右腕を上げた。つもりだった。
__あれ?
しかし右腕は上がらない。それと同時に左腕が上がらない事にも気が付く。
どうやら体の自由が利かないようだ。
__困ったな……。
彼女は驚く程に冷静であった。
もう一度言うが、彼女は平和ボケしたごく普通の人間だ。
身体の自由が利かない状況など軽くパニックに陥ってもおかしくはないのだが、今彼女の意識は混濁していて自分の置かれている状況をいまいち理解していないのだった。彼女としては幸運だろう。
__眠い……。
そんな彼女の周りは先ほどまで静寂で、泡沫の立てる音しか響いていなかったというのに。モーター音が機動する音を始めとして、段々と機械音が騒がしくなった。
外の騒々しさと反比例して彼女の意識は段々と薄くなっていった。
ボコボコボコッと一気に泡沫が体中を撫で上げていく。体を包んでいた水が抜かれていく。感覚の上の方から外気に晒されていくのがぼんやりと分かった。
__ねむ……
周りで動きがあるというのに彼女はどんどんと沈んでいった。
意識が沈み切る直前に、
「仲良くやろうね。紅桜。」
__にぞ、う……さん……?
聞こえるはずの無い声が聞こえた。