01:出会い編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
──
「さあ、此処でお別れだ」
教会の前で、ホメロスはエトワールの手を離した。エトワールは、少し寂しそうな表情で口を開いた。
「また、会えますか?」
「お前が騎士になれば、毎日会えるさ」
──
その言葉を胸に、エトワールは歩いて来た。
魔物の前から、王子様の様に自分を連れ出してくれた、ホメロスの背中を追いかけて。
だから、彼の副官に任命された時には、嬉しくてたまらなかった。それなのに⋯⋯。
「確かめなきゃ」
エトワールは、ポツリと呟いた。今なら、まだ解任を文書で受け取っていない。今なら、ホメロスの副官として、地下牢に出入り出来るだろう。
彼女は、そっと部屋の外へ出た。周囲に人影は無い。出来るだけ足音を立てずに、地下牢へ向かった。
イシの村の住人たちは、いくつかの牢に分けられて閉じ込められていた。エトワールは、早足で”あの”少女の姿を探す。
エマは、一等雨漏りの酷い小さな牢に、一人で閉じ込められていた。恐らく随分抵抗したのだろう。髪の毛が乱れている。
「エマさん⋯⋯エマさん!」
「⋯⋯っ?! 貴女は!」
エマは泣き腫らした目を上げて、牢の鉄格子に駆け寄った。
「イレブンは⋯⋯イレブンは無事なの?!」
「今のところは。お願い、時間が無いの。彼について知っている事を教えて」
「イレブンは、優しくて、強くて、とても頼りになる人だわ」
「どうして彼が”悪魔の子”と呼ばれるのか、心当たりは無い?」
「⋯⋯多分、あの手にあった痣のせいよ! 私が襲われた時、彼の痣が光って、魔物を追い払ってくれた⋯⋯。でもそれが悪い力だなんて思えないわ!」
エマの言葉に、エトワールは覚悟を決めた。あとは⋯⋯
「エマさん。彼の事はなんとかする。問題は貴女たちの事よ。悪魔の子が逃げ出せば、貴女たちが餌として利用されるかもしれない。その覚悟は──」
「あります!! お願いします!! イレブンを助けてください!!!」
「⋯⋯分かった。やってみる」
そう言ってエトワールが立ち上がった瞬間。
「悪魔の子が逃げたぞ!!!」
兵士の声が響き渡った。イシの村の住人たちは、一斉に顔を見合わせ、口元に笑みを浮かべた。それだけ、あのイレブンという少年は、皆に好かれていたのだろう。
「行くわね」
「気を付けて⋯⋯」
エマの声を背に、エトワールは走り出した。地下牢の更に下層へ。外面的には、悪魔の子を捕らえる為に。
彼が捕らえられていた向かいの牢に、大きな穴が空いていた。そこから、更に下へと逃げたのだろう。エトワールは、躊躇なく飛び込んだ。
水道エリアでは、デルカダール兵が次々と同じ方向へと走り出していた。
エトワールも、それを追い掛けて走る。
しかし、しばらく進んで広い空間に出ると、尋常ではない悲鳴が聞こえて来た。その理由はすぐに判明した。
巨大なブラックドラゴンが、二人の青年を追い掛けている。いや⋯⋯デルカダール兵も襲われて、バラバラと倒れ伏していた。
「なに⋯⋯コレ」
青年たちが逃げている所を見るに、彼らの味方では無いだろう。という事は、城の地下で飼われていたのだろうか?
「危ない!!」
巨大な鉤爪が、ツンツンヘアーの青年を引っ掻こうとしたのを見て、エトワールは叫んでいた。背後から、ブラックドラゴンの背に火球を叩き込む。
勿論、硬い皮の鎧にダメージを与える事は出来ず、どうやら怒らせてしまった様だ。獰猛な牙がエトワールに襲い掛かる。
青年たちは、足を止めていた。
「行って!!」
エトワールは、声を枯らして叫んだ。
「逃げて!!」
彼女は短剣を抜き、臨戦態勢に入った。ドラゴンの尻尾が、叩きつける様に振られ、エトワールは反動で宙に浮き、地面に叩きつけられた。
「うぁっ⋯⋯」
頭を強かに打ち、視界が滲んだ。ピントがズレて、巨体が霞む。全身が軋む様に痛み、指一本動かす事が出来なかった。
エトワールは、ついに死を覚悟して、意識を手放した。
「さあ、此処でお別れだ」
教会の前で、ホメロスはエトワールの手を離した。エトワールは、少し寂しそうな表情で口を開いた。
「また、会えますか?」
「お前が騎士になれば、毎日会えるさ」
──
その言葉を胸に、エトワールは歩いて来た。
魔物の前から、王子様の様に自分を連れ出してくれた、ホメロスの背中を追いかけて。
だから、彼の副官に任命された時には、嬉しくてたまらなかった。それなのに⋯⋯。
「確かめなきゃ」
エトワールは、ポツリと呟いた。今なら、まだ解任を文書で受け取っていない。今なら、ホメロスの副官として、地下牢に出入り出来るだろう。
彼女は、そっと部屋の外へ出た。周囲に人影は無い。出来るだけ足音を立てずに、地下牢へ向かった。
イシの村の住人たちは、いくつかの牢に分けられて閉じ込められていた。エトワールは、早足で”あの”少女の姿を探す。
エマは、一等雨漏りの酷い小さな牢に、一人で閉じ込められていた。恐らく随分抵抗したのだろう。髪の毛が乱れている。
「エマさん⋯⋯エマさん!」
「⋯⋯っ?! 貴女は!」
エマは泣き腫らした目を上げて、牢の鉄格子に駆け寄った。
「イレブンは⋯⋯イレブンは無事なの?!」
「今のところは。お願い、時間が無いの。彼について知っている事を教えて」
「イレブンは、優しくて、強くて、とても頼りになる人だわ」
「どうして彼が”悪魔の子”と呼ばれるのか、心当たりは無い?」
「⋯⋯多分、あの手にあった痣のせいよ! 私が襲われた時、彼の痣が光って、魔物を追い払ってくれた⋯⋯。でもそれが悪い力だなんて思えないわ!」
エマの言葉に、エトワールは覚悟を決めた。あとは⋯⋯
「エマさん。彼の事はなんとかする。問題は貴女たちの事よ。悪魔の子が逃げ出せば、貴女たちが餌として利用されるかもしれない。その覚悟は──」
「あります!! お願いします!! イレブンを助けてください!!!」
「⋯⋯分かった。やってみる」
そう言ってエトワールが立ち上がった瞬間。
「悪魔の子が逃げたぞ!!!」
兵士の声が響き渡った。イシの村の住人たちは、一斉に顔を見合わせ、口元に笑みを浮かべた。それだけ、あのイレブンという少年は、皆に好かれていたのだろう。
「行くわね」
「気を付けて⋯⋯」
エマの声を背に、エトワールは走り出した。地下牢の更に下層へ。外面的には、悪魔の子を捕らえる為に。
彼が捕らえられていた向かいの牢に、大きな穴が空いていた。そこから、更に下へと逃げたのだろう。エトワールは、躊躇なく飛び込んだ。
水道エリアでは、デルカダール兵が次々と同じ方向へと走り出していた。
エトワールも、それを追い掛けて走る。
しかし、しばらく進んで広い空間に出ると、尋常ではない悲鳴が聞こえて来た。その理由はすぐに判明した。
巨大なブラックドラゴンが、二人の青年を追い掛けている。いや⋯⋯デルカダール兵も襲われて、バラバラと倒れ伏していた。
「なに⋯⋯コレ」
青年たちが逃げている所を見るに、彼らの味方では無いだろう。という事は、城の地下で飼われていたのだろうか?
「危ない!!」
巨大な鉤爪が、ツンツンヘアーの青年を引っ掻こうとしたのを見て、エトワールは叫んでいた。背後から、ブラックドラゴンの背に火球を叩き込む。
勿論、硬い皮の鎧にダメージを与える事は出来ず、どうやら怒らせてしまった様だ。獰猛な牙がエトワールに襲い掛かる。
青年たちは、足を止めていた。
「行って!!」
エトワールは、声を枯らして叫んだ。
「逃げて!!」
彼女は短剣を抜き、臨戦態勢に入った。ドラゴンの尻尾が、叩きつける様に振られ、エトワールは反動で宙に浮き、地面に叩きつけられた。
「うぁっ⋯⋯」
頭を強かに打ち、視界が滲んだ。ピントがズレて、巨体が霞む。全身が軋む様に痛み、指一本動かす事が出来なかった。
エトワールは、ついに死を覚悟して、意識を手放した。