03:救済
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デルカダール城が魔物の襲撃を受けてから、一週間。石工が設計図を元に、城の修復を始め、漸く平穏が取り戻されていた。
重症だったエトワールも、鍛錬を再開し、すっかり元気になっていた。
ホメロスはクレイモランに行き、リーズレットに魔法の力を使い果たしてしまった事を平謝りしたが、魔女は愉快そうに笑い飛ばした。
「やあねえ! 代わりに命を貰おうだなんて言わないわよ。でも、貴方の力をこの身に宿せないのは、ちょっとガッカリだわ」
彼女の言葉に、ホメロスは背筋がゾクリとして、逃げるように帰って来た。
⋯⋯エトワールは、すっかり元通りになり、嫌な記憶など忘れたかの様に見えた。
ホメロスは、何度か話し掛けようと思ったが、何を言えば良いのか分からず、結局遠目に見守る事しか出来なかった。
「姫様。色は決まりましたか?」
エトワールは、マルティナの結婚式用のドレスを選ぶのを手伝っていた。
「いいえ、全然。グレイグに聞いても、無駄だし。彼ったら、どれでも似合うって言うの。全く乙女心が分かっていないんだから!」
マルティナは文句を言いつつも、楽しそうに、色んな種類の布を手に取っていた。
「⋯⋯ねえ、エトワール。貴女は結婚を考えないの?」
「はい。結婚をすれば、騎士でいる事は難しくなると思います。家を守り、家事をして過ごす毎日を想像すると、息が詰まりそうで⋯⋯。何より、私はホメロス様の部下でいたいから──」
「貴女、頭が硬すぎるのよ! この城に住んで、家事はメイドに任せれば良いでしょう? それに、ホメロスは貴女のことを──」
マルティナが全部言い終えぬ内に、エトワールは勢い良く立ち上がった。
「申し訳御座いません、姫様。少しお休みをください」
返事を聞かずに、エトワールは部屋を飛び出していた。自室に戻り、ベッドに飛び込んだ瞬間、涙が溢れて来た。
湧き上がる恐怖が抑えきれず、強くシーツを握り皺を作った。
(消えない⋯⋯消えない! もう忘れたい!)
ホメロスの姿をしたウルノーガに触れられた事が、汚らわしく思え、少しでも感じてしまった自分の身体を許せなかった。
否定しても、押し殺そうとしても、あの時の光景が目に浮かぶ。
最初は唇を⋯⋯そして⋯⋯
「エトワール」
突然名前を呼ばれ、エトワールは肩を震わせた。そっと身体を起こすと、側にホメロスが立っていた。
「涙が」
ホメロスはエトワールに手を伸ばしたが、彼女は反射的に振り払ってしまった。
「嫌! やめて!! 怖い!!!」
全身で拒絶を表現する姿に、ホメロスは言葉が出なかった。普段、顔にも言葉にも出さずに、彼女はたった一人で恐怖と戦っていたのだ。
「エトワール、しっかりしろ!! オレだ!!ホメロスだ!!」
我に返り、彼はエトワールの細い手首を掴み、無理矢理自分の方を向かせた。
「ウルノーガではない!! ホメロスだ!!!」
「⋯⋯ホメロス⋯⋯様」
エトワールは、ハッと正気を取り戻し、困った様にホメロスを見返した。
「も⋯⋯申し訳御座いません! 私⋯⋯ホメロス様に酷い事を──」
「酷いのはオレの方だ。一週間も放って置くべきでは無かった」
ホメロスは、ゆっくりとエトワールの背に腕を回して抱き寄せた。
デルカダール城が魔物の襲撃を受けてから、一週間。石工が設計図を元に、城の修復を始め、漸く平穏が取り戻されていた。
重症だったエトワールも、鍛錬を再開し、すっかり元気になっていた。
ホメロスはクレイモランに行き、リーズレットに魔法の力を使い果たしてしまった事を平謝りしたが、魔女は愉快そうに笑い飛ばした。
「やあねえ! 代わりに命を貰おうだなんて言わないわよ。でも、貴方の力をこの身に宿せないのは、ちょっとガッカリだわ」
彼女の言葉に、ホメロスは背筋がゾクリとして、逃げるように帰って来た。
⋯⋯エトワールは、すっかり元通りになり、嫌な記憶など忘れたかの様に見えた。
ホメロスは、何度か話し掛けようと思ったが、何を言えば良いのか分からず、結局遠目に見守る事しか出来なかった。
「姫様。色は決まりましたか?」
エトワールは、マルティナの結婚式用のドレスを選ぶのを手伝っていた。
「いいえ、全然。グレイグに聞いても、無駄だし。彼ったら、どれでも似合うって言うの。全く乙女心が分かっていないんだから!」
マルティナは文句を言いつつも、楽しそうに、色んな種類の布を手に取っていた。
「⋯⋯ねえ、エトワール。貴女は結婚を考えないの?」
「はい。結婚をすれば、騎士でいる事は難しくなると思います。家を守り、家事をして過ごす毎日を想像すると、息が詰まりそうで⋯⋯。何より、私はホメロス様の部下でいたいから──」
「貴女、頭が硬すぎるのよ! この城に住んで、家事はメイドに任せれば良いでしょう? それに、ホメロスは貴女のことを──」
マルティナが全部言い終えぬ内に、エトワールは勢い良く立ち上がった。
「申し訳御座いません、姫様。少しお休みをください」
返事を聞かずに、エトワールは部屋を飛び出していた。自室に戻り、ベッドに飛び込んだ瞬間、涙が溢れて来た。
湧き上がる恐怖が抑えきれず、強くシーツを握り皺を作った。
(消えない⋯⋯消えない! もう忘れたい!)
ホメロスの姿をしたウルノーガに触れられた事が、汚らわしく思え、少しでも感じてしまった自分の身体を許せなかった。
否定しても、押し殺そうとしても、あの時の光景が目に浮かぶ。
最初は唇を⋯⋯そして⋯⋯
「エトワール」
突然名前を呼ばれ、エトワールは肩を震わせた。そっと身体を起こすと、側にホメロスが立っていた。
「涙が」
ホメロスはエトワールに手を伸ばしたが、彼女は反射的に振り払ってしまった。
「嫌! やめて!! 怖い!!!」
全身で拒絶を表現する姿に、ホメロスは言葉が出なかった。普段、顔にも言葉にも出さずに、彼女はたった一人で恐怖と戦っていたのだ。
「エトワール、しっかりしろ!! オレだ!!ホメロスだ!!」
我に返り、彼はエトワールの細い手首を掴み、無理矢理自分の方を向かせた。
「ウルノーガではない!! ホメロスだ!!!」
「⋯⋯ホメロス⋯⋯様」
エトワールは、ハッと正気を取り戻し、困った様にホメロスを見返した。
「も⋯⋯申し訳御座いません! 私⋯⋯ホメロス様に酷い事を──」
「酷いのはオレの方だ。一週間も放って置くべきでは無かった」
ホメロスは、ゆっくりとエトワールの背に腕を回して抱き寄せた。