03:救済
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ホメロス、エトワールを頼む」
グレイグは、エトワールの体をそっと引き離し、ホメロスの腕へ委ねた。
「エトワール」
ホメロスは、今にも泣き出しそうな声色で囁いた。
「エトワール⋯⋯お前は何も悪くない。悪いのはウルノーガだ」
それは、大樹での一件の後、エトワールがホメロスに掛けた言葉だ。彼女は嗚咽を堪えながら、ホメロスにしがみ付いた。
「ごめんなさい⋯⋯ごめんな⋯⋯さいっ。私⋯⋯貴方に触れる資格なんか無いのに!!私⋯⋯あいつに」
「戻ったら、すぐに綺麗にしてやる。安心しろ」
ホメロスはエトワールの頭にキスを落とし、彼女を座らせて剣を抜いた。
「ちょっと! さがっていなさいよ!」
すかさずシルビアが割り込んだ。
「ハッキリ言って、アナタの手には負えないわよ?」
「なっ──」
「シルビアの⋯⋯言う通りです」
間髪入れずエトワールは肯定し、壁際に投げ出されていた剣を取った。
「大丈夫です」
彼女はホメロスを見て、穏やかに笑った。痛々しい程の努力に、ホメロスは言葉を返せなかった。
「私が貴方を守ります」
エトワールは、集中して仲間全員にマホカンタを掛けた。アタッカーだったイレブン、グレイグ、マルティナ、シルビアが、ウルノーガに強烈なダメージを与えて行く。
セーニャは回復呪文を絶やさず、ベロニカは遠慮せずに巨大な火球を作り出し、お見舞いした。
埃と煙が立ち、視界が遮られる。
「やったの?!」
ベロニカが、警戒する様に声を上げ、目を細めた。煙が落ち着くと、そこにウルノーガの姿は無かった。
「⋯⋯何処にいる?!」
グレイグも、辺りに目を凝らした。
すると、不気味な笑い声が、何処からともなく響いて来た。
「ふははは。流石、ニズゼルファを倒しただけの事はある。しかし、此処までだ」
瞬間、ホメロスがガクッと膝を着いた。彼は喉を抑え、もがき苦しみ、ゆっくりと顔を上げた。額には汗が浮かんでいる。
「ホメロス⋯⋯様?」
エトワールが恐る恐る歩み寄ると、彼の瞳が赤く光った。
「力を返さぬというのなら、この体ごと貰い受けるまで! さあ、勇者たちよ! 斬れるものなら──」
「ごめんなさい!!」
エトワールは、ホメロスに抱き付き、彼の背中側から剣を突き刺した。それはホメロスの身体を貫くと共に、エトワールの胸にも突き刺さっていた。
「ホメロス様⋯⋯ごめんなさい⋯⋯。でも、今の貴方なら⋯⋯この道を⋯⋯選んだ⋯⋯はず⋯⋯」
ホメロスとエトワールは、同時に床へ崩れた。
「ホメロス!」
駆け寄って回復を施そうとしたグレイグの手を、血濡れたエトワールの手が弾いた。
「駄目」
命の灯火が徐々に小さくなって行く。魔法の力と、そこに取り憑いたウルノーガの魂が、消えて行く。
「⋯⋯くっ」
ホメロスが目を閉じ掛けたのと同時に、エトワールは剣を抜き、回復呪文を唱えた。
ほんの少しのタイミングで、間に合わなかっエトワールだけが、床に倒れ伏した。
少し離れた場所には、苦痛に顔を歪めたウルノーガが、杖に縋る様に立っていた。
「エトワール」
ホメロスは、元凶に一瞥もくれずに、エトワールを抱き寄せた。
「エトワール! 目を開けろ!!」
「動かさないでくださいませ! 今、回復を!!」
セーニャが歩み寄り、ザオリクを唱えた。エトワールの傷は癒え、呼吸も安定したが、彼女は目を覚まさなかった。出血量が多かったせいで、意識を保てなかったのだ。
「終わりにしよう。ウルノーガ」
イレブンは、静かな怒りを湛えた瞳で、魔王を見据えた。その時、空中に大きな光の玉が浮かんだ。イレブンが手を伸ばすと、そこに、大樹に返したはずの勇者の剣が現れた。
彼は迷わずそれを取り、容赦なく、ウルノーガの心臓を貫いた。
「かっ⋯⋯馬鹿な⋯⋯」
死の闇へ引き込まれる事実から逃れる様に、彼は手を伸ばした。
「何度⋯⋯遡っても⋯⋯」
光が大きく膨張し、四散した。
訪れる静寂。
「エトワール⋯⋯」
ホメロスは、抜け殻の様にエトワールを見下ろした。まるで、死んだ様に眠っている彼女の姿に、底知れぬ不安が押し寄せて来た。
「エトワール.⋯⋯。どうしたら良い?!」
「失礼致します」
セーニャがすぐ側に膝を着き、エトワールの額に手を当てた。
「魔法の力が弱まっています。ここまで衰弱していると、自力での回復は難しいですわ。⋯⋯エルフの飲み薬を調合するまでの間、なんとか堪えていただかないと⋯⋯」
「そうだ!」
ホメロスは唐突に閃き、ぎゅっと力なく横たわるエトワールを抱き寄せた。
彼には今、大きな魔法の力があった。氷の魔女が預けてくれたものだ。
(この力⋯⋯返せそうにない)
ホメロスは、約束を反故にする決意をした。マホアゲルを唱え、持っている全てをエトワールに注いだ。
「エトワール⋯⋯エトワール!目を開けろ!!」
「⋯⋯⋯⋯ホメロス⋯⋯様」
エトワールは、ゆっくりと気怠げに目を開けた。ホメロスは、やっと肩の力が抜けた。
「エトワール⋯⋯。お前がいなければ、大樹で救われた意味など無い」
「そんな事をおっしゃると、国中の女性が泣きますよ」
エトワールは微笑み、なんとか自分の力で体を起こした。
「助けてくださって⋯⋯嬉しいです。私⋯⋯お別れも覚悟していたんです。でも、また貴方に会えて、本当に⋯⋯本当に良かった⋯⋯」
「もう心配ない。だから泣くな」
ホメロスは、エトワールの涙を拭った。
そして、ようやく一行は、リレミトで神殿の外へ出て、城へ戻る事が出来た。
グレイグは、エトワールの体をそっと引き離し、ホメロスの腕へ委ねた。
「エトワール」
ホメロスは、今にも泣き出しそうな声色で囁いた。
「エトワール⋯⋯お前は何も悪くない。悪いのはウルノーガだ」
それは、大樹での一件の後、エトワールがホメロスに掛けた言葉だ。彼女は嗚咽を堪えながら、ホメロスにしがみ付いた。
「ごめんなさい⋯⋯ごめんな⋯⋯さいっ。私⋯⋯貴方に触れる資格なんか無いのに!!私⋯⋯あいつに」
「戻ったら、すぐに綺麗にしてやる。安心しろ」
ホメロスはエトワールの頭にキスを落とし、彼女を座らせて剣を抜いた。
「ちょっと! さがっていなさいよ!」
すかさずシルビアが割り込んだ。
「ハッキリ言って、アナタの手には負えないわよ?」
「なっ──」
「シルビアの⋯⋯言う通りです」
間髪入れずエトワールは肯定し、壁際に投げ出されていた剣を取った。
「大丈夫です」
彼女はホメロスを見て、穏やかに笑った。痛々しい程の努力に、ホメロスは言葉を返せなかった。
「私が貴方を守ります」
エトワールは、集中して仲間全員にマホカンタを掛けた。アタッカーだったイレブン、グレイグ、マルティナ、シルビアが、ウルノーガに強烈なダメージを与えて行く。
セーニャは回復呪文を絶やさず、ベロニカは遠慮せずに巨大な火球を作り出し、お見舞いした。
埃と煙が立ち、視界が遮られる。
「やったの?!」
ベロニカが、警戒する様に声を上げ、目を細めた。煙が落ち着くと、そこにウルノーガの姿は無かった。
「⋯⋯何処にいる?!」
グレイグも、辺りに目を凝らした。
すると、不気味な笑い声が、何処からともなく響いて来た。
「ふははは。流石、ニズゼルファを倒しただけの事はある。しかし、此処までだ」
瞬間、ホメロスがガクッと膝を着いた。彼は喉を抑え、もがき苦しみ、ゆっくりと顔を上げた。額には汗が浮かんでいる。
「ホメロス⋯⋯様?」
エトワールが恐る恐る歩み寄ると、彼の瞳が赤く光った。
「力を返さぬというのなら、この体ごと貰い受けるまで! さあ、勇者たちよ! 斬れるものなら──」
「ごめんなさい!!」
エトワールは、ホメロスに抱き付き、彼の背中側から剣を突き刺した。それはホメロスの身体を貫くと共に、エトワールの胸にも突き刺さっていた。
「ホメロス様⋯⋯ごめんなさい⋯⋯。でも、今の貴方なら⋯⋯この道を⋯⋯選んだ⋯⋯はず⋯⋯」
ホメロスとエトワールは、同時に床へ崩れた。
「ホメロス!」
駆け寄って回復を施そうとしたグレイグの手を、血濡れたエトワールの手が弾いた。
「駄目」
命の灯火が徐々に小さくなって行く。魔法の力と、そこに取り憑いたウルノーガの魂が、消えて行く。
「⋯⋯くっ」
ホメロスが目を閉じ掛けたのと同時に、エトワールは剣を抜き、回復呪文を唱えた。
ほんの少しのタイミングで、間に合わなかっエトワールだけが、床に倒れ伏した。
少し離れた場所には、苦痛に顔を歪めたウルノーガが、杖に縋る様に立っていた。
「エトワール」
ホメロスは、元凶に一瞥もくれずに、エトワールを抱き寄せた。
「エトワール! 目を開けろ!!」
「動かさないでくださいませ! 今、回復を!!」
セーニャが歩み寄り、ザオリクを唱えた。エトワールの傷は癒え、呼吸も安定したが、彼女は目を覚まさなかった。出血量が多かったせいで、意識を保てなかったのだ。
「終わりにしよう。ウルノーガ」
イレブンは、静かな怒りを湛えた瞳で、魔王を見据えた。その時、空中に大きな光の玉が浮かんだ。イレブンが手を伸ばすと、そこに、大樹に返したはずの勇者の剣が現れた。
彼は迷わずそれを取り、容赦なく、ウルノーガの心臓を貫いた。
「かっ⋯⋯馬鹿な⋯⋯」
死の闇へ引き込まれる事実から逃れる様に、彼は手を伸ばした。
「何度⋯⋯遡っても⋯⋯」
光が大きく膨張し、四散した。
訪れる静寂。
「エトワール⋯⋯」
ホメロスは、抜け殻の様にエトワールを見下ろした。まるで、死んだ様に眠っている彼女の姿に、底知れぬ不安が押し寄せて来た。
「エトワール.⋯⋯。どうしたら良い?!」
「失礼致します」
セーニャがすぐ側に膝を着き、エトワールの額に手を当てた。
「魔法の力が弱まっています。ここまで衰弱していると、自力での回復は難しいですわ。⋯⋯エルフの飲み薬を調合するまでの間、なんとか堪えていただかないと⋯⋯」
「そうだ!」
ホメロスは唐突に閃き、ぎゅっと力なく横たわるエトワールを抱き寄せた。
彼には今、大きな魔法の力があった。氷の魔女が預けてくれたものだ。
(この力⋯⋯返せそうにない)
ホメロスは、約束を反故にする決意をした。マホアゲルを唱え、持っている全てをエトワールに注いだ。
「エトワール⋯⋯エトワール!目を開けろ!!」
「⋯⋯⋯⋯ホメロス⋯⋯様」
エトワールは、ゆっくりと気怠げに目を開けた。ホメロスは、やっと肩の力が抜けた。
「エトワール⋯⋯。お前がいなければ、大樹で救われた意味など無い」
「そんな事をおっしゃると、国中の女性が泣きますよ」
エトワールは微笑み、なんとか自分の力で体を起こした。
「助けてくださって⋯⋯嬉しいです。私⋯⋯お別れも覚悟していたんです。でも、また貴方に会えて、本当に⋯⋯本当に良かった⋯⋯」
「もう心配ない。だから泣くな」
ホメロスは、エトワールの涙を拭った。
そして、ようやく一行は、リレミトで神殿の外へ出て、城へ戻る事が出来た。