03:救済
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凛と冷たい夜風が頬に染みた。先日覚えたばかりのルーラを唱え、瞬きをする刹那にクレイモランの城下町に着地していた。
そのまま走って城へ向かい、慌てふためく門番を力任せに追いやって、玉座の前に駆け込んだ。
「シャール陛下!!」
ホメロスは迷わず膝を着き、低頭した。シャールは、心底驚いた様子で立ち上がった。そんな彼女を、リーズレットが押し留める。
仕方がない。ホメロスは魔物と通じていた。その事を、改心した魔女・リーズレットは知っている。
「手を貸してください!デルカダールが⋯⋯魔物の襲撃を受けて⋯⋯」
「まあ!」
「待ちなさいよ」
すぐに動き出そうとしたシャールを、リーズレットが引き止めた。
「貴方が襲わせたのでは無いかしら、色男さん。世界中の要人を集めて、一纏めに始末しようと──」
「助けてください!」
ホメロスは、土下座をしてみせた。シャールも、リーズレットも驚いて顔を見合わせていたが、彼は構わず、床に頭を付けた。
「手を貸してくれ!邪神を倒して以来、魔物達は弱体化し、皆剣を置いて久しい!」
「それは、この国も同じよ?」
リーズレットの言葉に、ホメロスは顔を上げ、彼女の腕を乱暴に掴んだ。
「それなら、エトワールだけで良い」
「なっ──」
「あいつだけでも、助けてくれ。俺は地獄に落ちても構わない」
ホメロスの暗い瞳を見据え、本気と悟ったリーズレットは、肩を竦めてため息を吐いた。
「恋敵の救出なんて真っ平だけれど、仕方がないわね。良いわ、手を貸してあげましょう」
氷の魔女は妖艶に笑い、シャールの肩をポンポンと叩いた。
「そういうワケで、ちょっと行ってくるわ。空き巣狙いには気を付けてね」
「どうか、気を付けて」
シャールは不安そうに頷いた。
「あ、そうだ」
外に出たところで、リーズレットは振り返った。
「助けてあげる代わりに、それ、ちょうだい?」
「な⋯⋯何?」
「その禍々しい魔法の力よ。安心して。街を氷漬けにしたりはしないわ。シャールを守るのに、もう少し力があればな⋯⋯と思っただけ。さあ、私の腕に捕まって?」
「あ⋯⋯ああ」
ホメロスがリーズレットの腕を掴んだ瞬間、転移魔法が唱えられた。二人はデルカダールの城下町に降り立ち、大通りを城へ向かって走った。
「妙だな。空気が沈んでいる」
ホメロスは、最悪の想像をしながら、零した。
城門に辿り着くと、複数の人影がホメロスの方へ駆け寄って来た。
「ホメロス!!」
マルティナが、涙目で駆け寄って来た。
「ホメロス! エトワールが⋯⋯エトワールが魔物に拐われてしまったの!!」
「何だと?!」
ホメロスは、愕然と立ち尽くした。まさか、並みの騎士など比にならない、剣と魔法の腕を持ったエトワールが拐われたとは、俄かに信じがたかった。
「抵抗すれば、皆殺しと脅されて⋯⋯。助けたくば、ホメロス⋯⋯貴方一人で神殿に来いと──」
「すぐに行く」
喰い気味に答えた瞬間、グレイグが彼を捕まえた。
「待て、ホメロス!一応聞くが、まだ魔物と手を組んでいるのでは──」
「そんなはずがあるか!!」
ホメロスは、かなり乱暴に答え、グレイグの手を振り払った。
「何故お前がいながら、エトワールが拐われた?! あいつは文官だぞ!!」
「⋯⋯返す言葉も無い。せめて、俺も一緒に──」
「ダメだってば!」
マルティナが、慌ててグレイグを捕まえた。
「正面から突撃なんて、絶対ダメ! エトワールが殺されちゃう!!」
「良い。俺一人で行く」
ホメロスは、造作もない事の様に告げ、踵を返した。
「待ちなさいよ!!」
リーズレットが、ホメロスの髪を掴んだ。
「っ!! 何だ?!」
ホメロスは、目を大きく見開き、振り返った。リーズレットは宙に浮き、ホメロスの前に回り込んで、彼の胸に指を突きつけた。
そこから、魔法の力が流れ込んで来るのを感じ、ホメロスはよろめいた。
「少しの間、貸してあげるわ。あとで倍にしてかえしてね」
リーズレットは、妖艶に微笑み、姿を消した。クレイモランへ帰った様だ。
ホメロスは、勇者の仲間たちの引き止める声も無視し、適当な馬に乗ると、矢の如く走り出した。
そのまま走って城へ向かい、慌てふためく門番を力任せに追いやって、玉座の前に駆け込んだ。
「シャール陛下!!」
ホメロスは迷わず膝を着き、低頭した。シャールは、心底驚いた様子で立ち上がった。そんな彼女を、リーズレットが押し留める。
仕方がない。ホメロスは魔物と通じていた。その事を、改心した魔女・リーズレットは知っている。
「手を貸してください!デルカダールが⋯⋯魔物の襲撃を受けて⋯⋯」
「まあ!」
「待ちなさいよ」
すぐに動き出そうとしたシャールを、リーズレットが引き止めた。
「貴方が襲わせたのでは無いかしら、色男さん。世界中の要人を集めて、一纏めに始末しようと──」
「助けてください!」
ホメロスは、土下座をしてみせた。シャールも、リーズレットも驚いて顔を見合わせていたが、彼は構わず、床に頭を付けた。
「手を貸してくれ!邪神を倒して以来、魔物達は弱体化し、皆剣を置いて久しい!」
「それは、この国も同じよ?」
リーズレットの言葉に、ホメロスは顔を上げ、彼女の腕を乱暴に掴んだ。
「それなら、エトワールだけで良い」
「なっ──」
「あいつだけでも、助けてくれ。俺は地獄に落ちても構わない」
ホメロスの暗い瞳を見据え、本気と悟ったリーズレットは、肩を竦めてため息を吐いた。
「恋敵の救出なんて真っ平だけれど、仕方がないわね。良いわ、手を貸してあげましょう」
氷の魔女は妖艶に笑い、シャールの肩をポンポンと叩いた。
「そういうワケで、ちょっと行ってくるわ。空き巣狙いには気を付けてね」
「どうか、気を付けて」
シャールは不安そうに頷いた。
「あ、そうだ」
外に出たところで、リーズレットは振り返った。
「助けてあげる代わりに、それ、ちょうだい?」
「な⋯⋯何?」
「その禍々しい魔法の力よ。安心して。街を氷漬けにしたりはしないわ。シャールを守るのに、もう少し力があればな⋯⋯と思っただけ。さあ、私の腕に捕まって?」
「あ⋯⋯ああ」
ホメロスがリーズレットの腕を掴んだ瞬間、転移魔法が唱えられた。二人はデルカダールの城下町に降り立ち、大通りを城へ向かって走った。
「妙だな。空気が沈んでいる」
ホメロスは、最悪の想像をしながら、零した。
城門に辿り着くと、複数の人影がホメロスの方へ駆け寄って来た。
「ホメロス!!」
マルティナが、涙目で駆け寄って来た。
「ホメロス! エトワールが⋯⋯エトワールが魔物に拐われてしまったの!!」
「何だと?!」
ホメロスは、愕然と立ち尽くした。まさか、並みの騎士など比にならない、剣と魔法の腕を持ったエトワールが拐われたとは、俄かに信じがたかった。
「抵抗すれば、皆殺しと脅されて⋯⋯。助けたくば、ホメロス⋯⋯貴方一人で神殿に来いと──」
「すぐに行く」
喰い気味に答えた瞬間、グレイグが彼を捕まえた。
「待て、ホメロス!一応聞くが、まだ魔物と手を組んでいるのでは──」
「そんなはずがあるか!!」
ホメロスは、かなり乱暴に答え、グレイグの手を振り払った。
「何故お前がいながら、エトワールが拐われた?! あいつは文官だぞ!!」
「⋯⋯返す言葉も無い。せめて、俺も一緒に──」
「ダメだってば!」
マルティナが、慌ててグレイグを捕まえた。
「正面から突撃なんて、絶対ダメ! エトワールが殺されちゃう!!」
「良い。俺一人で行く」
ホメロスは、造作もない事の様に告げ、踵を返した。
「待ちなさいよ!!」
リーズレットが、ホメロスの髪を掴んだ。
「っ!! 何だ?!」
ホメロスは、目を大きく見開き、振り返った。リーズレットは宙に浮き、ホメロスの前に回り込んで、彼の胸に指を突きつけた。
そこから、魔法の力が流れ込んで来るのを感じ、ホメロスはよろめいた。
「少しの間、貸してあげるわ。あとで倍にしてかえしてね」
リーズレットは、妖艶に微笑み、姿を消した。クレイモランへ帰った様だ。
ホメロスは、勇者の仲間たちの引き止める声も無視し、適当な馬に乗ると、矢の如く走り出した。