03:救済
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「エトワール?」
「ホメロス様、剣をお借りします」
エトワールは壁に立て掛けてあった、埃の被った剣を装備し、振り返った。
「行きましょう」
彼女は騎士の顔でホメロスを促した。彼は、双剣の一振りを手にしたものの、何処かぎこちなかった。無理もない。もう一年は、文官として、剣を持たずに生活して来たのだ。まともに戦えるとは思えなかった。
「ご心配無く。私が貴方を必ず守ります」
エトワールは落ち着いた声で言葉を掛け、扉を開けた。廊下へ出ると、左右からホークマンが襲い掛かって来た。彼女はホメロスを部屋に押し返し、自分も一旦後退した。二匹同時に襲い掛かって来れない様、部屋に戻り、一体ずつ確実に仕留めた。
「一体、何故こんな⋯⋯」
彼女は最悪の状況も想定した。あたりには邪悪な気が漂い、ガタガタと激しい物音も聞こえる。
マルティナは戦える王女だったが、彼女も実戦から離れて久しい。イレブンも、イシの村で幼馴染と暮らし始めてから、剣を置いている。セーニャは咄嗟の対応を苦手とする。
あてに出来るのは、ベロニカ、現役で旅を続けているカミュとマヤ、グレイグ。
デルカダールの兵は、決して弱いわけでは無いが、魔王ウルノーガの様な化け物レベルの魔物には、対処出来ない。
不運な事に、邪悪な気配は、ウルノーガ並みに大きな物だった。
「エトワール!!」
ホメロスが、鋭く叫んだ。階段の方から、スライムナイトの団体が押し寄せて来た。
「イオグランデ」
エトワールは最上級の呪文をいとも簡単に唱え、魔物たちを爆死させた。はたからみれば、どちらが化け物か分かったものでは無い。
「ホメロス様、陛下の元へ参らねばなりません。城の地下牢から外へ出られます」
「⋯⋯何を言っている?」
「外へ出たら、クレイモランへ行き、リーズレットに助力をお願いしてください」
「嫌だ!」
ホメロスは、駆け出そうとしたエトワールの腰に抱きついた。
「断る! お前をていや、陛下を見捨ててここを離れるわけには行かない!」
「⋯⋯分かりました。私の背中を離れないでください」
エトワールは、渋々頷き、走り出した。ホメロスもその後を追う。
「一体何者だ?!」
「何者かよりも、何が目的か⋯⋯その方が重要です」
エトワールは、驚くほど冷静だった。
「ホメロス様。味方の姿を見たからといって、安易に近付かないでください。ユグノアの二の舞で、誰かが取り憑かれていないとは、言い切れませんから」
「っ⋯⋯分かった」
ホメロスは、なんとかしてエトワールを支える術が無いか考えたが、何も浮かばなかった。彼は悲しいほど無力だった。
エトワールは、真っ直ぐ大広間へと向かった。
「何てことを!!」
彼女は、悲鳴に近い叫びをあげた。魔物の軍勢が大広間に溢れかえり、無防備な貴族と、駆けつけたデルカダール兵を攻撃しようとしている。
案の定、辛うじてベロニカが結界を張り、全員を守っていた。
「エトワール!」
彼女は助けを求める様に叫んだ。
「ホメロス様。私の背中を離れないでください」
エトワールは、抜剣し、鞘を投げ捨て思い切り良く踏み込んだ。並みの騎士よりずっと鮮やかな手つきで、魔物たちを仕留めていく。
「グレイグ!!昼寝でもしているの?!」
「起きている!!」
グレイグも、ようやく控えていた部下から大剣を受け取り、戦闘に加わった。
そのやり取りを聞いていたホメロスは、些か胸を痛めていた。グレイグとエトワールは、旅を通じて、名前を呼び合う対等な仲間となっていた。二人は、息の合った動きで、敵を倒す。
「姫様!」
グレイグが叫んだ。マルティナ姫と国王に、ホークマンが切り掛かっていた。
「私の事は放っておいて、グレイグ!」
マルティナは、華麗な蹴り技を繰り出し、魔物たちを跳ね飛ばした。
「ホメロス様!」
呆然と立ち尽くしていたホメロスの手首を、(夢主)が掴み、引き寄せた。一秒前まで彼が立っていた床は、黒く焼け焦げていた。
「ホメロス様。私はどんな貴方でも愛せますが、流石に炭になってしまったら、困ります。貴方は、貴方にしか出来ない事をなさって下さい!」
「エトワール⋯⋯」
「行ってください!正直⋯⋯コレはキツイっ」
エトワールは、巨大なブラックドラゴンを斬り伏せ、ホメロスを出口へ誘導した。彼は、まだ一瞬躊躇いを見せたが、彼女をぎゅっと抱き寄せ、離した。
「すぐ戻る」
ホメロスは、血眼になって城の地下牢へ走り、勇者が逃走した道を辿って、外へ飛び出した。
「ホメロス様、剣をお借りします」
エトワールは壁に立て掛けてあった、埃の被った剣を装備し、振り返った。
「行きましょう」
彼女は騎士の顔でホメロスを促した。彼は、双剣の一振りを手にしたものの、何処かぎこちなかった。無理もない。もう一年は、文官として、剣を持たずに生活して来たのだ。まともに戦えるとは思えなかった。
「ご心配無く。私が貴方を必ず守ります」
エトワールは落ち着いた声で言葉を掛け、扉を開けた。廊下へ出ると、左右からホークマンが襲い掛かって来た。彼女はホメロスを部屋に押し返し、自分も一旦後退した。二匹同時に襲い掛かって来れない様、部屋に戻り、一体ずつ確実に仕留めた。
「一体、何故こんな⋯⋯」
彼女は最悪の状況も想定した。あたりには邪悪な気が漂い、ガタガタと激しい物音も聞こえる。
マルティナは戦える王女だったが、彼女も実戦から離れて久しい。イレブンも、イシの村で幼馴染と暮らし始めてから、剣を置いている。セーニャは咄嗟の対応を苦手とする。
あてに出来るのは、ベロニカ、現役で旅を続けているカミュとマヤ、グレイグ。
デルカダールの兵は、決して弱いわけでは無いが、魔王ウルノーガの様な化け物レベルの魔物には、対処出来ない。
不運な事に、邪悪な気配は、ウルノーガ並みに大きな物だった。
「エトワール!!」
ホメロスが、鋭く叫んだ。階段の方から、スライムナイトの団体が押し寄せて来た。
「イオグランデ」
エトワールは最上級の呪文をいとも簡単に唱え、魔物たちを爆死させた。はたからみれば、どちらが化け物か分かったものでは無い。
「ホメロス様、陛下の元へ参らねばなりません。城の地下牢から外へ出られます」
「⋯⋯何を言っている?」
「外へ出たら、クレイモランへ行き、リーズレットに助力をお願いしてください」
「嫌だ!」
ホメロスは、駆け出そうとしたエトワールの腰に抱きついた。
「断る! お前をていや、陛下を見捨ててここを離れるわけには行かない!」
「⋯⋯分かりました。私の背中を離れないでください」
エトワールは、渋々頷き、走り出した。ホメロスもその後を追う。
「一体何者だ?!」
「何者かよりも、何が目的か⋯⋯その方が重要です」
エトワールは、驚くほど冷静だった。
「ホメロス様。味方の姿を見たからといって、安易に近付かないでください。ユグノアの二の舞で、誰かが取り憑かれていないとは、言い切れませんから」
「っ⋯⋯分かった」
ホメロスは、なんとかしてエトワールを支える術が無いか考えたが、何も浮かばなかった。彼は悲しいほど無力だった。
エトワールは、真っ直ぐ大広間へと向かった。
「何てことを!!」
彼女は、悲鳴に近い叫びをあげた。魔物の軍勢が大広間に溢れかえり、無防備な貴族と、駆けつけたデルカダール兵を攻撃しようとしている。
案の定、辛うじてベロニカが結界を張り、全員を守っていた。
「エトワール!」
彼女は助けを求める様に叫んだ。
「ホメロス様。私の背中を離れないでください」
エトワールは、抜剣し、鞘を投げ捨て思い切り良く踏み込んだ。並みの騎士よりずっと鮮やかな手つきで、魔物たちを仕留めていく。
「グレイグ!!昼寝でもしているの?!」
「起きている!!」
グレイグも、ようやく控えていた部下から大剣を受け取り、戦闘に加わった。
そのやり取りを聞いていたホメロスは、些か胸を痛めていた。グレイグとエトワールは、旅を通じて、名前を呼び合う対等な仲間となっていた。二人は、息の合った動きで、敵を倒す。
「姫様!」
グレイグが叫んだ。マルティナ姫と国王に、ホークマンが切り掛かっていた。
「私の事は放っておいて、グレイグ!」
マルティナは、華麗な蹴り技を繰り出し、魔物たちを跳ね飛ばした。
「ホメロス様!」
呆然と立ち尽くしていたホメロスの手首を、(夢主)が掴み、引き寄せた。一秒前まで彼が立っていた床は、黒く焼け焦げていた。
「ホメロス様。私はどんな貴方でも愛せますが、流石に炭になってしまったら、困ります。貴方は、貴方にしか出来ない事をなさって下さい!」
「エトワール⋯⋯」
「行ってください!正直⋯⋯コレはキツイっ」
エトワールは、巨大なブラックドラゴンを斬り伏せ、ホメロスを出口へ誘導した。彼は、まだ一瞬躊躇いを見せたが、彼女をぎゅっと抱き寄せ、離した。
「すぐ戻る」
ホメロスは、血眼になって城の地下牢へ走り、勇者が逃走した道を辿って、外へ飛び出した。