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01:トラペッタ編

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マイエラ地方出身、マスター・ライラスの養女。
夢主様
夢主様あだ名

「おお、戻ったか!!」

トロデは、食べ掛けの缶詰めを放り出し、ひょこひょことエイト達の元へやって来た。

「して、水晶球は手に入ったのか?!」

「これです」

エイトは道具袋から、実物を取り出して見せた。日の光の下で見るそれは、一段と輝きを増して見えた。

「良くやったぞ! では早速、それをルイネロとかいう奴に届けるとしよう!」

トロデの一言で皆が一斉に歩き出した。しかし、ミーティアが、短く嘶き、歩むのを拒んだ。

「なんじゃ、ミーティアや?」

ミーティアは首を横に振った。トロデは改めて三人組の姿を省み、弾かれた様に地面に着地した。

「お主、無理をしておるのではないか?」

彼の問いに、アンジェリカは弱々しく微笑んだ。

「ご心配には及びません。ただ、呪いの霧を受けてしまったもので......数刻も経てば良くなるでしょう。ご配慮頂き、本当にありがとう御座います」

「どう見ても顔色が良くないわい!」

「おっさんほどじゃあ無いでげすよ!」

ヤンガスの余計な一言に、エイトは彼の脛のあたりを思い切り蹴飛ばした。

「失礼な輩は放っておいて、そうじゃのう。お前さん、街まで馬車に乗って休んではどうじゃ?」

「とんでもございません! それでは姫様のご負担にーー」

ヒヒィーン!!

ミーティアは怒った様に嘶き、後ろへ下がった。アンジェリカに、乗る様促している。

「......では、お言葉に甘えさせて頂きますね」

アンジェリカは馬車に乗り込み、動き出した所で体を横にした。

呪いのせいもそうだが、恐怖心から来る緊張に、心が悲鳴をあげていたのだ。身体が重く、苦しい。心臓がバクバクと音を立てている。

あんなに強い魔物と戦ったのは、初めてだった。きっと、マスター・ライラスを殺したくらいなのだから、ドルマゲスはもっと強い。1人では、勝てない。

アンジェ、大丈夫?」

エイトの声が幌越しに聞こえて来た。

アンジェリカは、スッと心が軽くなるのを感じ、微笑んだ。

「ええ、大丈夫」

一人では駄目でも、三人ならきっと。

彼女は身体を起こし、そして、自分の直ぐ頭の上にあった、あるものに気が付いた。

「トロデ王! これはもしかして、練金釜ではありませんか?!」

「おお! 流石ライラスの弟子じゃ! その釜の価値に気がつくとは......。しかし、あのドルマゲスの大馬鹿者のせいで、ちいとばかり壊れておってな」

「では、私が修理を手掛けても宜しいでしょうか?」

「お主、そんな事まで出来るのか! だが、良い良い。それくらいの事はワシがやろう。どうせお主らが街にいる間、暇なのでな」

アンジェリカはクスリと笑った。緑色の国王は、尊大な態度の割に、気を使うし、手先も器用らしい。

「では、お言葉に甘えさせて頂きます」

「甘えるも何も、それはワシの釜じゃからの!」

ワザとらしいツンとした言葉に、エイトとヤンガスの笑い声が聞こえて来た。

「なんじゃ、お前たち!!! 家臣の分際で馬鹿にしおって!!」

トロデはムキになって騒いだ。

「あっしは、おっさんの家臣になった覚えは無いでげすよ!」

ヤンガスの主張は、完全に無視された。トロデはぶつぶつと文句を言い続けた。

やがて馬車が動きを止めたので、アンジェリカは飛び降りた。もうすっかり気分は落ち着いていた。

「大丈夫?」

声を掛けてくれたエイトに、彼女は微笑んだ。

「ええ、元気いっぱいよ! ユリマの家まで案内するわね」

アンジェリカは先頭に立って街の中に入った。エイトとヤンガスは、先刻の騒ぎの事もあり、ビクビクしていたが、特に咎められる事はなかった。緑のおっさんのインパクトが、余りにも強過ぎて、その他の人間の事なんて記憶に残らなかったらしい。

階段を降り、酒場の前を通り過ぎ、井戸の前に辿り着く。その横にあるのが、ユリマの家だ。

「ユリマ? 私よ!」

扉を叩くと、直ぐに鍵が外された。待ち兼ねた様にユリマが飛び出してきた。

「良かった!! 無事だったのね?!」

「勿論。私はマスター・ライラスの娘よ?」

アンジェリカは戯けて返した。エイトが、徐に水晶を取り出す。

「これ。間違いないかな?」

戦利品を目にし、ユリマは目を見開いた。

「まあ! やっぱり本物は、ガラス玉とまるで違う......」

「なんだ、ユリマ。客人か?」

部屋の奥から、いかにも酔っ払いの怒鳴り声が聞こえて来た。

「ルイネロさん、こんにちは!」

アンジェリカは勇気を出して、部屋の中に踏み入った。アルコールの匂いが鼻についた。

ルイネロはガラス玉の前に座り、これ以上無いと言うほど不機嫌な顔をしていた。しかし、彼はエイトの持つ水晶玉を目にした途端、更に醜悪な顔付きになった。

「娘に何を頼まれたか知らんが、わしは別に困っていない! 余計な御世話だ!!! 無駄な事よ!!!! また、捨てるのみ!!!」

「ダメです!」
「やめて!」
「ダメでがす!」

アンジェリカ、エイト、ヤンガスが、示し合わせた様に叫んだ。思い浮かべたのは、古傷を抱えたザバンの姿。次に同じ水晶玉が投げ込まれたら、犯人は間違いない無く殺される。絶対。

流石の酔っ払いも、三人の迫力に気圧されたのか、ならば、と言って水晶玉を奪い取った。

「こんなもの、粉々にしてるくれるわ!!!」

「やめて、お父さん!!!」

寸手の所で、ユリマがルイネロの腕を抑えた。

「私、もう知っているから! ......お父さんがなんで水晶玉を捨てたのか......私......」

彼女の声に、ルイネロは雷に打たれたかの様に動きを止めた。

「......お前......じゃあ......本当の親の事を......」

「知っているわ。でも、お父さんは悪く無い。」

ユリマは、酔った父親から水晶玉を引き取り、笑った。

「お父さんは、ただ占いをしただけだもの。私は知らないけど、お父さんの占いってとってもすごかったんでしょ? だから、どこに逃げたのか分らなかった、私の両親の居場所も、あっさりと当ててしまったんだよね?」

ルイネロは、優しい言葉に、ふらふらと椅子に座り直した。俯き、過ぎ去りし時を思い返す。

「自分に占えないものなど無いと思っていた。自分の事ばかり考えて、頼んで来る連中が、悪人か善人かなど......考えもしなかった。」

その結果、罪の無い人間が殺されてしまった。もう、同じ過ちを繰り返さない為に、彼は水晶玉を捨てたのだ。

「もう良いの」

ユリマは健気に訴える。

「だってお父さんは、赤ちゃんの私を引き取って、育ててくれたじゃない。それに......私、見てみたいな。高名だった頃の、自信に満ちたお父さんを。何でも占えるお父さんを」

この手の話に弱いのか、ヤンガスが盛大に鼻を啜った。ルイネロはテーブルに縋りながら立ち上がり、フラフラと家を出て行ってしまった。

「ユリマ......」

「大丈夫。きっとお父さんは、分かってくれたわ」

ユリマは親友の手を取り、奥の部屋へと招いた。

「みなさん、お腹は空いていないかしら? 夕飯をご用意しました」

「気がきくでがすな! あっしはもう、今日の昼から何も食べてないでげすよ!」

「当たり前だろ?」

エイトは苦笑した。

「ありがとう。僕もお腹減っちゃって......」

ユリマと三人は、大きなテーブルを囲んで楽しいひと時を過ごした。

野菜のたっぷり入ったスープに、ふかふかのパン。干し肉に、フルーツ。どれも美味しくて、心が温まった。

エイトとヤンガスは、お腹が一杯になると、早々に二階の部屋を借りて寝てしまった。

少し寂しくなったキッチンで、アンジェリカは遠慮がちに、ユリマに声を掛ける。

「ねえ、残ったお料理を、少し頂いても良いかしら?」

「良いわよ。......ああ、すっかり忘れてたわ。緑のおじさんの分!」

「あのおじさん、トロデーン国の偉い人なの。ドルマゲスに呪いを掛けられて、魔物の姿になってしまったって。街にも入れないから......今日なんか、缶詰を食べていらっしゃったわ」

「ちょっと待ってね」

ユリマは、戸棚の奥から藤で編まれたバスケットを取り出し、チーズを入れた。パンと、お椀に入れた熱々のスープ、それからフルーツも。

「あ、あのお馬さんには、お野菜が良いわね」

ユリマは麻のふくろに、人参と林檎を詰め込んだ。

「こんなに貰って良いの?」

アンジェリカは心苦しくなり、訊ねた。ユリマの家も決して裕福では無い。主にルイネロの酒代のせいで。

ユリマは、今までに無いくらい、明るい笑顔だった。

「大丈夫よ。明日からはお父さんに、しっかり稼いで貰うんだから! ......さあ、スープが冷めないうちに、持って行ってあげて」

「ありがとう」

アンジェリカは、バスケットと袋を手に、家を飛び出した。思いの他、寒い。陽が落ちると、こんなにも気温が違うのかと、彼女は身震いした。

街の門を潜ろうとすると、見張りの兵士がビックリした表情で引き止めた。

アンジェリカさん?! こんな時間に、お一人で何処へ行かれるのですか?!」

「まんげつ草を集めに。この辺の魔物じゃ、全然平気です。 私、マイエラで修行してたんですから」

修道院近くの魔物は、トラペッタ周辺よりも遥かに強い。

門番は、渋々扉を開けてくれた。

星が綺麗な夜だった。少しも怖くは無かった。明日、待ち合わせを決めていたはずの茂みを進むと、美しい馬の姿が浮かび上がった。そして、微かに、カンカンという音が聞こえる。

「トロデ王!」

アンジェリカが呼び掛けると、幌の入り口の幕が、バサッと開いた。

「おお! お前さん、こんな時間に一人でどうしたんじゃ?」

「これを、もし良ければ」

アンジェリカが、バスケットを差し出す。トロデはそれを開けて、丸々三秒間、言葉を失った。

「冷めないうちに、食べて下さいね?」

「冷めないうちに、食べて下さいね?」

(夢主)はクスリと笑い、今度は白馬の方へ駆け寄った。

「ミーティア姫。寒くはありませんか?」

白馬は首を横に振った。(夢主)は林檎を取り出し、彼女の口元に運んでやった。白馬は、それをしゃりしゃりと頬張り、そして顔をめいいっぱいアンジェリカに摺り寄せて来た。

「く......くすぐったいです、姫様! 」

(夢主)は笑いながら、人参を取り出した。白馬はそれも綺麗に平らげた。

「ええっと、姫様にも、私たちと同じお食事をご用意したかったのですが......お馬さんなので、お腹を壊してしまっては大変ですし......」

「お前さんは、本当によう気がきくのう」

トロデが、お椀と匙を持ったまま、ひょこひょこと(夢主)の所までやって来た。

「じゃがの、姫は普段、草を食うておる。気の毒じゃが、馬の姿である以上仕方の無い事じゃ」

「では、美味しい果物や、野菜は食べられますね? 出来る限り、お持ち致します。勿論、トロデ王にもお食事を」

(夢主)の優しさに、ミーティアとトロデは、救われた。

トロデは音を立ててスープを飲み干すと、満足そうに伸びをした。

「お前さんのお陰で、元気が出たわい!」

「畏れ入ります。寒くはありませんか? 火を焚いた方が宜しければ、薪を集めてまいります」

「いや、良い! それよりお前さん、はよ戻って休まんかい! 明日、寝坊したら承知せんぞ!!」

それでも、置いていくと言わないあたり、トロデなりの好意の表れなのだろう。

「では、失礼いたしますね」

(夢主)は、空のバスケットと麻袋を抱えて、茂みの向こうへ姿を消した。

「......やれやれ」

トロデはミーティア姫の毛並みを整えてやりながら、溜息を吐いた。

「世の中には、色んな奴がいるものよ。......それにしても、夜間に一人きりで歩き回って、恐ろしくは無いのかーー」

瞬間、どーんという地響きと、木の向こう側から立ち上る火柱。どう考えても、この辺りの魔物のなせる技では無い。

「心配は無用の様じゃ」

トロデは、震え上がり、ミーティアにしがみついた。月が昇り、夜が更けて行く。はクスリと笑い、今度は白馬の方へ駆け寄った。

「ミーティア姫。寒くはありませんか?」

白馬は首を横に振った。「冷めないうちに、食べて下さいね?」

(夢主)はクスリと笑い、今度は白馬の方へ駆け寄った。

「ミーティア姫。寒くはありませんか?」

白馬は首を横に振った。(夢主)は林檎を取り出し、彼女の口元に運んでやった。白馬は、それをしゃりしゃりと頬張り、そして顔をめいいっぱいアンジェリカに摺り寄せて来た。

「く......くすぐったいです、姫様! 」

(夢主)は笑いながら、人参を取り出した。白馬はそれも綺麗に平らげた。

「ええっと、姫様にも、私たちと同じお食事をご用意したかったのですが......お馬さんなので、お腹を壊してしまっては大変ですし......」

「お前さんは、本当によう気がきくのう」

トロデが、お椀と匙を持ったまま、ひょこひょこと(夢主)の所までやって来た。

「じゃがの、姫は普段、草を食うておる。気の毒じゃが、馬の姿である以上仕方の無い事じゃ」

「では、美味しい果物や、野菜は食べられますね? 出来る限り、お持ち致します。勿論、トロデ王にもお食事を」

(夢主)の優しさに、ミーティアとトロデは、救われた。

トロデは音を立ててスープを飲み干すと、満足そうに伸びをした。

「お前さんのお陰で、元気が出たわい!」

「畏れ入ります。寒くはありませんか? 火を焚いた方が宜しければ、薪を集めてまいります」

「いや、良い! それよりお前さん、はよ戻って休まんかい! 明日、寝坊したら承知せんぞ!!」

それでも、置いていくと言わないあたり、トロデなりの好意の表れなのだろう。

「では、失礼いたしますね」

(夢主)は、空のバスケットと麻袋を抱えて、茂みの向こうへ姿を消した。

「......やれやれ」

トロデはミーティア姫の毛並みを整えてやりながら、溜息を吐いた。

「世の中には、色んな奴がいるものよ。......それにしても、夜間に一人きりで歩き回って、恐ろしくは無いのかーー」

瞬間、どーんという地響きと、木の向こう側から立ち上る火柱。どう考えても、この辺りの魔物のなせる技では無い。

「心配は無用の様じゃ」

トロデは、震え上がり、ミーティアにしがみついた。月が昇り、夜が更けて行く。は林檎を取り出し、彼女の口元に運んでやった。白馬は、それをしゃりしゃりと頬張り、そして顔をめいいっぱいアンジェリカに摺り寄せて来た。

「く......くすぐったいです、姫様! 」

アンジェリカは笑いながら、人参を取り出した。白馬はそれも綺麗に平らげた。

「ええっと、姫様にも、私たちと同じお食事をご用意したかったのですが......お馬さんなので、お腹を壊してしまっては大変ですし......」

「お前さんは、本当によう気がきくのう」

トロデが、お椀と匙を持ったまま、ひょこひょことアンジェリカの所までやって来た。

「じゃがの、姫は普段、草を食うておる。気の毒じゃが、馬の姿である以上仕方の無い事じゃ」

「では、美味しい果物や、野菜は食べられますね? 出来る限り、お持ち致します。勿論、トロデ王にもお食事を」

アンジェリカの優しさに、ミーティアとトロデは、救われた。

トロデは音を立ててスープを飲み干すと、満足そうに伸びをした。

「お前さんのお陰で、元気が出たわい!」

「畏れ入ります。寒くはありませんか? 火を焚いた方が宜しければ、薪を集めてまいります」

「いや、良い! それよりお前さん、はよ戻って休まんかい! 明日、寝坊したら承知せんぞ!!」

それでも、置いていくと言わないあたり、トロデなりの好意の表れなのだろう。

「では、失礼いたしますね」

アンジェリカは、空のバスケットと麻袋を抱えて、茂みの向こうへ姿を消した。

「......やれやれ」

トロデはミーティア姫の毛並みを整えてやりながら、溜息を吐いた。

「世の中には、色んな奴がいるものよ。......それにしても、夜間に一人きりで歩き回って、恐ろしくは無いのかーー」

瞬間、どーんという地響きと、木の向こう側から立ち上る火柱。どう考えても、この辺りの魔物のなせる技では無い。

「心配は無用の様じゃ」

トロデは、震え上がり、ミーティアにしがみついた。月が昇り、夜が更けて行く。
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