マイエラ地方出身、マスター・ライラスの養女。
05:アスカンタ編
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もうじき、夕焼け空が広がる頃、アンジェリカは、唐突に目を覚ました。
元々寝覚めは良い方だったのだが、旅を始めてから眠りが浅くなった様な気がした。
簡素なベッドから起き上がり、ブラウスのシワを伸ばし、ふと横を見ると、気の毒な神父が、まだ眠りこけていた。
教台のある部屋まで行くと、シスターが疲れ切った表情で胸を撫で下ろした。
「お目覚めですか。お身体の調子は?」
「どこも悪くありません。あの⋯⋯みんなは?」
アンジェリカが尋ねると、シスターは眉を釣り上げた。
「貴女はまず、神父様が無事かどうかを尋ねるべきですわ。それから、反省をするべきです」
「ごめんなさい」
アンジェリカは、恥ずかしさのあまり耳まで真っ赤になって、頭を下げた。
「でも、神父様は大丈夫です。眠らせただけですから。迷惑を掛けてごめんなさい」
「そういう問題ではありません」
シスターは、アンジェリカの側に歩み寄り、両肩に手を置いた。
「大抵の大人は、18歳の少女に死んで欲しくは無いのですよ! 貴女に万が一の事があれば、ご家族がどれほど心を痛めるか⋯⋯」
「私には」
言いかけ、アンジェリカは口を噤んだ。家族はいない。けれど、どんな言葉も言い訳にしか聞こえないだろう。
「ごめんなさい」
「それに、聖堂騎士団に護衛をされる程、身分の高い方が、万が一にも命を落とせば、神父様も、あの幼い修道士見習いも、ただでは済まされないのですよ!」
シスターは、敢えて現実的な事を刺々しく言った。アンジェリカを傷付け様と思ったのでは無い。彼女が話の通じる人間と踏んだから、説教をしたのだ。
「⋯⋯先日、マイエラ修道院の院長になられたお人は、大変厳しい方と聞いております。貴女も社会でそれなりの地位をいただいて生きるのなら、もう少し周りの事をよく見るべきです!!」
「私を貴族娘みたいに呼ぶのは、やめてください!」
辛抱ならず、アンジェリカは大声で返した。
「私はドニの領主に仕えていた、しがないメイドの娘です。両親が死んでからは、孤児としてマイエラ修道院に預けられ、その後トラペッタの魔法使いに引き取られ、そこで暮らしていました。煤だらけになって大掃除をしたり、真冬に井戸へ水を汲みに行ったりもしたわ! ずっと、麻の服を着て過ごし、藁を敷いたベッドで眠っていたの。この上等の服は、友達のゼシカっていう子に借りたのよ!! さっきの聖堂騎士団員は、友人よ。彼らとの付き合いは浅いから、私が死んでも暫くすれば立ち直れるはず。私は、私が信じたことの為になら、命を懸けるわ!! 何度でも!!」
「まあ、呆れた!」
シスターは、溜息を零し渋い表情を浮かべた。
「それなら、思う存分生きなさいな。でも、どんなに後悔しても、死んでしまえば、この人生をやり直す事は出来ないのですよ。貴女が棺桶の中で、終わらない悪夢を見ない事を祈っております!」
ピシャリとした口調で言い終えると、彼女はやんわりとアンジェリカの背を押した。
アンジェリカは、ほんの少し捻くれた気分になりながら、振り返って頭を下げた。
「お世話になりました。ありがとうございます」
それから、足を踏みならして扉まで進むと、勢い良く外へ飛び出した。
丁度、仲間たちが橋を渡ってこちら側に来ようとしている。
「待って!! そっちに行くわ!!」
アンジェリカは手を振って駆け出した。
元々寝覚めは良い方だったのだが、旅を始めてから眠りが浅くなった様な気がした。
簡素なベッドから起き上がり、ブラウスのシワを伸ばし、ふと横を見ると、気の毒な神父が、まだ眠りこけていた。
教台のある部屋まで行くと、シスターが疲れ切った表情で胸を撫で下ろした。
「お目覚めですか。お身体の調子は?」
「どこも悪くありません。あの⋯⋯みんなは?」
アンジェリカが尋ねると、シスターは眉を釣り上げた。
「貴女はまず、神父様が無事かどうかを尋ねるべきですわ。それから、反省をするべきです」
「ごめんなさい」
アンジェリカは、恥ずかしさのあまり耳まで真っ赤になって、頭を下げた。
「でも、神父様は大丈夫です。眠らせただけですから。迷惑を掛けてごめんなさい」
「そういう問題ではありません」
シスターは、アンジェリカの側に歩み寄り、両肩に手を置いた。
「大抵の大人は、18歳の少女に死んで欲しくは無いのですよ! 貴女に万が一の事があれば、ご家族がどれほど心を痛めるか⋯⋯」
「私には」
言いかけ、アンジェリカは口を噤んだ。家族はいない。けれど、どんな言葉も言い訳にしか聞こえないだろう。
「ごめんなさい」
「それに、聖堂騎士団に護衛をされる程、身分の高い方が、万が一にも命を落とせば、神父様も、あの幼い修道士見習いも、ただでは済まされないのですよ!」
シスターは、敢えて現実的な事を刺々しく言った。アンジェリカを傷付け様と思ったのでは無い。彼女が話の通じる人間と踏んだから、説教をしたのだ。
「⋯⋯先日、マイエラ修道院の院長になられたお人は、大変厳しい方と聞いております。貴女も社会でそれなりの地位をいただいて生きるのなら、もう少し周りの事をよく見るべきです!!」
「私を貴族娘みたいに呼ぶのは、やめてください!」
辛抱ならず、アンジェリカは大声で返した。
「私はドニの領主に仕えていた、しがないメイドの娘です。両親が死んでからは、孤児としてマイエラ修道院に預けられ、その後トラペッタの魔法使いに引き取られ、そこで暮らしていました。煤だらけになって大掃除をしたり、真冬に井戸へ水を汲みに行ったりもしたわ! ずっと、麻の服を着て過ごし、藁を敷いたベッドで眠っていたの。この上等の服は、友達のゼシカっていう子に借りたのよ!! さっきの聖堂騎士団員は、友人よ。彼らとの付き合いは浅いから、私が死んでも暫くすれば立ち直れるはず。私は、私が信じたことの為になら、命を懸けるわ!! 何度でも!!」
「まあ、呆れた!」
シスターは、溜息を零し渋い表情を浮かべた。
「それなら、思う存分生きなさいな。でも、どんなに後悔しても、死んでしまえば、この人生をやり直す事は出来ないのですよ。貴女が棺桶の中で、終わらない悪夢を見ない事を祈っております!」
ピシャリとした口調で言い終えると、彼女はやんわりとアンジェリカの背を押した。
アンジェリカは、ほんの少し捻くれた気分になりながら、振り返って頭を下げた。
「お世話になりました。ありがとうございます」
それから、足を踏みならして扉まで進むと、勢い良く外へ飛び出した。
丁度、仲間たちが橋を渡ってこちら側に来ようとしている。
「待って!! そっちに行くわ!!」
アンジェリカは手を振って駆け出した。