マイエラ地方出身、マスター・ライラスの養女。
04:マイエラ修道院編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
マイエラ修道院に辿り着いた。馬車とトロデ王は、例の如くお留守番。
聖堂内に踏み入れると、静かな空気と荘厳な雰囲気に、エイト達は圧倒され、押し黙った。
しかし、アンジェリカは違和感を覚えた。言葉で言い表す事は出来なかったが、幼い頃の記憶とは、何かが違う。
一行は情報収集の為、奥の中庭へと進んだ。その時、アンジェリカは聞いてしまった。仲間達はステンドグラスやら、彫像やらに気を取られて気づいてはいない様子だった。
ーー嗚呼、神様。一万ゴールドも寄付をしたんです。どうか願いをお聞き届け下さい。
確かに、修道院は昔から寄付金に支えられて来た。しかし、お金を払えば願いが叶うと言うのは、何かが違う。
「アンジェ?」
ゼシカの声に、アンジェリカは、ハッと我に返った。そうだ。自分が案内しなければならない。
「ごめんなさい。こっちよ」
彼女は背筋を正し、聖堂騎士団の宿舎へと向かった。しかし、その入り口には、まるで来訪者を拒むかの様に、二人の見張りが立ちはだかっていた。
アンジェリカ近づくと、彼らは突然、彼女の胸を押し飛ばした。アンジェリカは体勢を崩し、後ろへ転んでしまった。
「ちょっと! 何するのよ!!」
ゼシカが抗議すると、聖堂騎士団員は剣に手を掛けた。
「何だ、お前達は。怪しいヤツめ。中に入って何をする気だ?」
「何ってーー」
ゼシカの反論を、アンジェリカは、手で遮った。無礼を咎めた訳では無い。相手が話の通じぬ人間と判断したからだ。
アンジェリカは、わざとらしく聖堂騎士団員と同じ所作の礼の姿勢を見せた。
「至急、聖堂騎士団長様か、オディロ院長様にお伝えしたい事が御座います」
「この先は、許しを得た者しか、入れてはならぬと決められている。この聖堂騎士団の刃に掛かって、命を落としたくなくば、早々に立ち去るが良い!」
まるで噛み合わない会話。排他的で横柄な物言い。アンジェリカは、万が一の事態に備えて身構えた。
しかし、次の瞬間。二階の出窓が音を立てて開いた。
「入れるなとは言ったが、手荒な真似をしろとは言っていない」
黒髪に、深緑の瞳を持った男。アンジェリカは、息を呑んだ。間違いない。あの時の青年......マルチェロだ。
「我が聖堂騎士団の評判を落とすな」
彼の言葉に、見張り役を務めていた騎士団員は、慌てて傅いた。
「こ、これはマルチェロ様?! 申し訳ございません!」
マルチェロは、二階からエイト達一行を見下ろし、片方の口端を器用に吊り上げ、冷たく笑った。
「私の部下が、乱暴を働いたようですまない。だが、余所者は問題を起こしがちだ」
「余所者?」
アンジェリカは、冷静に返した。マルチェロは微かに目を細め、彼女の顔を見据えた。数秒の後、彼は口を開いた。
「......アンジェリカ・ライラスか」
「聖堂騎士団長様に、お話が御座います」
「今は内部の問題に手を焼いていてね。この建物は、修道士の宿舎。君たちには無縁の場所では無いかね? さあ、行くがいい」
「つまり貴方は」
アンジェリカは果敢にも立ち上がり、嘗ての恩人を見詰めた。
「オディロ院長が死んでも構わないと、そうおっしゃりたいのですね?」
「貴様ッ!」
「よせ」
レイピアを抜いた見張り役を、マルチェロは制した。それから、品定めをする様にアンジェリカを眺め、踵を返した。
「そのご令嬢は、私の知り合いだ。中に通せ」
出窓が閉まり、見張り役二人は顔を見合わせ合い、頷いた。
「マルチェロ様のお許しが出たのだ。入るが良い。」
その言葉に一行が歩みを進めると、騎士団員はエイト達の行く手を塞いだ。
「謁見を認められたのは、このご令嬢のみだ」
「行って」
アンジェリカは、仲間達を安心させる様に微笑んだ。
「道なりに進んだ先に、宿場町があるわ。其処で落ち合いましょう」
アンジェリカが扉を潜ろうとした瞬間、また騎士団員は彼女の行く手を遮った。流石のアンジェリカも、ウンザリした様子で肩を竦める。
「今度は何かしら? 禊が必要だとでも?」
「武器をお預け下さい」
アンジェリカは、呆れ返って何も言えなかった。これ以上石頭と揉めるのも面倒で、杖と扇、道具袋を丸ごと騎士団員の胸に押し付けた。
それでも、石頭は疑いの眼差しを向けたので、アンジェリカは、とうとう本性を露わにする羽目になった。
「目に見えるものは、間違いなくそれで全部。まさか服まで脱げと仰るのですか?」
それから妖艶に笑い、仰天するエイト達を遠目に見ながら、羽織っていた外套も脱ぎ棄て、ローブ一枚の姿になった。
アンジェリカは団員の制止も聞かず、扉の取っ手に手を掛けた。瞬間、溢れんばかりの魔力が放出され、扉全体が氷に包まれた。
かと思うと、今度はその氷が一気に剥がれ落ち、床に破片が突き刺さった。
「悪いけれど、目に見えない力までは、お預け出来ないわ」
後手を振って見せた彼女に、騎士団員は最早返す言葉が無かった。女だと思い見くびっていたのだ。しかし、相手はとんでもない人間だった。
本当に、マルチェロの知人であっても不思議では無い程、強い。
アンジェリカは、仲間達の視線を背中に感じながら、扉の向こうに消えた。
聖堂内に踏み入れると、静かな空気と荘厳な雰囲気に、エイト達は圧倒され、押し黙った。
しかし、アンジェリカは違和感を覚えた。言葉で言い表す事は出来なかったが、幼い頃の記憶とは、何かが違う。
一行は情報収集の為、奥の中庭へと進んだ。その時、アンジェリカは聞いてしまった。仲間達はステンドグラスやら、彫像やらに気を取られて気づいてはいない様子だった。
ーー嗚呼、神様。一万ゴールドも寄付をしたんです。どうか願いをお聞き届け下さい。
確かに、修道院は昔から寄付金に支えられて来た。しかし、お金を払えば願いが叶うと言うのは、何かが違う。
「アンジェ?」
ゼシカの声に、アンジェリカは、ハッと我に返った。そうだ。自分が案内しなければならない。
「ごめんなさい。こっちよ」
彼女は背筋を正し、聖堂騎士団の宿舎へと向かった。しかし、その入り口には、まるで来訪者を拒むかの様に、二人の見張りが立ちはだかっていた。
アンジェリカ近づくと、彼らは突然、彼女の胸を押し飛ばした。アンジェリカは体勢を崩し、後ろへ転んでしまった。
「ちょっと! 何するのよ!!」
ゼシカが抗議すると、聖堂騎士団員は剣に手を掛けた。
「何だ、お前達は。怪しいヤツめ。中に入って何をする気だ?」
「何ってーー」
ゼシカの反論を、アンジェリカは、手で遮った。無礼を咎めた訳では無い。相手が話の通じぬ人間と判断したからだ。
アンジェリカは、わざとらしく聖堂騎士団員と同じ所作の礼の姿勢を見せた。
「至急、聖堂騎士団長様か、オディロ院長様にお伝えしたい事が御座います」
「この先は、許しを得た者しか、入れてはならぬと決められている。この聖堂騎士団の刃に掛かって、命を落としたくなくば、早々に立ち去るが良い!」
まるで噛み合わない会話。排他的で横柄な物言い。アンジェリカは、万が一の事態に備えて身構えた。
しかし、次の瞬間。二階の出窓が音を立てて開いた。
「入れるなとは言ったが、手荒な真似をしろとは言っていない」
黒髪に、深緑の瞳を持った男。アンジェリカは、息を呑んだ。間違いない。あの時の青年......マルチェロだ。
「我が聖堂騎士団の評判を落とすな」
彼の言葉に、見張り役を務めていた騎士団員は、慌てて傅いた。
「こ、これはマルチェロ様?! 申し訳ございません!」
マルチェロは、二階からエイト達一行を見下ろし、片方の口端を器用に吊り上げ、冷たく笑った。
「私の部下が、乱暴を働いたようですまない。だが、余所者は問題を起こしがちだ」
「余所者?」
アンジェリカは、冷静に返した。マルチェロは微かに目を細め、彼女の顔を見据えた。数秒の後、彼は口を開いた。
「......アンジェリカ・ライラスか」
「聖堂騎士団長様に、お話が御座います」
「今は内部の問題に手を焼いていてね。この建物は、修道士の宿舎。君たちには無縁の場所では無いかね? さあ、行くがいい」
「つまり貴方は」
アンジェリカは果敢にも立ち上がり、嘗ての恩人を見詰めた。
「オディロ院長が死んでも構わないと、そうおっしゃりたいのですね?」
「貴様ッ!」
「よせ」
レイピアを抜いた見張り役を、マルチェロは制した。それから、品定めをする様にアンジェリカを眺め、踵を返した。
「そのご令嬢は、私の知り合いだ。中に通せ」
出窓が閉まり、見張り役二人は顔を見合わせ合い、頷いた。
「マルチェロ様のお許しが出たのだ。入るが良い。」
その言葉に一行が歩みを進めると、騎士団員はエイト達の行く手を塞いだ。
「謁見を認められたのは、このご令嬢のみだ」
「行って」
アンジェリカは、仲間達を安心させる様に微笑んだ。
「道なりに進んだ先に、宿場町があるわ。其処で落ち合いましょう」
アンジェリカが扉を潜ろうとした瞬間、また騎士団員は彼女の行く手を遮った。流石のアンジェリカも、ウンザリした様子で肩を竦める。
「今度は何かしら? 禊が必要だとでも?」
「武器をお預け下さい」
アンジェリカは、呆れ返って何も言えなかった。これ以上石頭と揉めるのも面倒で、杖と扇、道具袋を丸ごと騎士団員の胸に押し付けた。
それでも、石頭は疑いの眼差しを向けたので、アンジェリカは、とうとう本性を露わにする羽目になった。
「目に見えるものは、間違いなくそれで全部。まさか服まで脱げと仰るのですか?」
それから妖艶に笑い、仰天するエイト達を遠目に見ながら、羽織っていた外套も脱ぎ棄て、ローブ一枚の姿になった。
アンジェリカは団員の制止も聞かず、扉の取っ手に手を掛けた。瞬間、溢れんばかりの魔力が放出され、扉全体が氷に包まれた。
かと思うと、今度はその氷が一気に剥がれ落ち、床に破片が突き刺さった。
「悪いけれど、目に見えない力までは、お預け出来ないわ」
後手を振って見せた彼女に、騎士団員は最早返す言葉が無かった。女だと思い見くびっていたのだ。しかし、相手はとんでもない人間だった。
本当に、マルチェロの知人であっても不思議では無い程、強い。
アンジェリカは、仲間達の視線を背中に感じながら、扉の向こうに消えた。