マイエラ地方出身、マスター・ライラスの養女。
03:ポルトリンク編
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船着き場に着いた。潮の香りと、賑やかな露店。アンジェリカは、何故だか、胸の奥が切なく燻った。
親を亡くした彼女は、この大陸にあるマイエラ修道院で育ち、マスター・ライラスの養女となった。
船着き場には、来た事がない。トラペッタへは、ライラスのルーラで連れられて行かれたからだ。あの日以来、初めてこの大陸の土を踏んだのだ。
船の中では、ゼシカを交えて色々な事を語り合った。トロデーン城の悲劇と、ヤンガスとエイトの馴れ初めなど。
ヤンガスは見た目通り、元々山賊だったらしい。一度は足を洗おうとしたものの、その厳つい外見故に、まともな職にも就けず、結局また、追剥ぎせざるを得なかったらしい。
トロデーン城近くの吊り橋の上で、ヤンガスはエイト達を襲撃するも、失敗。橋が壊れ、流れの早い皮に落ち掛けた所を、エイトが助けた。それに恩義を感じ、旅に連れ添う事となったそうだ。
そして、もう一つ。トロデ王は、とうとう練金釜の修復に成功した。早速アンジェリカが、手持ちの薬草を二つ放り込むと、あっという間に上薬草が完成した。これからの旅で、大いに役立つはずだ。
一通り露店を回り、装備を整え、一行はそのままマイエラ修道院を目指した。のんびりしている暇は無い。
「ねえ、聖堂騎士団って、イケメン揃いなんだって」
ゼシカが、噂話で得た情報を口にした。アンジェリカは苦笑し、首を横に振る。
「あまり期待しない方が良いわ。確かにカッコ良いけれど、半分は制服のお陰だから」
「期待なんかしてないわ。今はイケメンよりも、道化師の方が気になるもの」
ゼシカも、相当ドライな感想を返した。彼女もアンジェリカも、恋愛沙汰には全く興味を示さないという点に於いては、共通していた。
緩やかな坂道を歩む間にも、時折チーンと音が聞こえる。練金釜が品を製成し終えた合図だ。
「今度は何を作ったの?」
エイトの問いに、アンジェリカはニコリと微笑んだ。
「盗賊の鍵」
「え」
ゼシカが目を瞬いた。アンジェリカは一片の後ろめたさも無い様子で、幌へ向かった。中の主人から、商品を受け取り、その代わりに次の品を注文する。
「はい、どうぞ」
アンジェリカは、不恰好な鍵をエイトの手に押し付けた。
「家の扉や、その辺の宝箱くらいなら開けられるわ。一個あると何かと便利よ」
「僕に空き巣をやれって事?」
「勿論違うわ! ただ、何だって、無いよりあった方が良いでしょう?」
「......ありがとう」
エイトは仕方無く受け取り、道具袋へしまった。当分......と言うより、出来れば一生使わない心算で。
「それで、今度は何を作っているの?」
「特薬草。殆どの傷はコレで治せるわ。相手が生きているなら、だけれど」
アンジェリカは、様々な知識を有している。大抵は役に立つ事だが、知らなくても良さそうな事まで知っている。
暫く歩くと、立派な建物が見えて来た。石造りに、色鮮やかなステンドグラス。マイエラ修道院だ。
アンジェリカは、心を躍らせた。トラペッタの家を失い、今や家と呼べる場所といったら、彼処しか無い。
駆け出したい衝動を抑え、一歩一歩を踏みしめた。漸く、帰れるのだ。記憶に残る、あの騎士見習いも、立派な聖堂騎士団員になっている事だろう。探せば会えるだろうか?
「何だか嬉しそうね?」
ゼシカがニコリと笑ってアンジェリカの顔を覗き込んだ。アンジェリカは、頷き、こう思った。生きていて、良かったと。
悲しみのせいで、会いたい人がまだいる事を、忘れる所だった。もしもあの時、エイト達がトラペッタにやって来なければ、ずっと忘れていたかも知れない。
これからも、きっと沢山の出会いがあるだろう。生きていれば。だから、生きようと思った。
親を亡くした彼女は、この大陸にあるマイエラ修道院で育ち、マスター・ライラスの養女となった。
船着き場には、来た事がない。トラペッタへは、ライラスのルーラで連れられて行かれたからだ。あの日以来、初めてこの大陸の土を踏んだのだ。
船の中では、ゼシカを交えて色々な事を語り合った。トロデーン城の悲劇と、ヤンガスとエイトの馴れ初めなど。
ヤンガスは見た目通り、元々山賊だったらしい。一度は足を洗おうとしたものの、その厳つい外見故に、まともな職にも就けず、結局また、追剥ぎせざるを得なかったらしい。
トロデーン城近くの吊り橋の上で、ヤンガスはエイト達を襲撃するも、失敗。橋が壊れ、流れの早い皮に落ち掛けた所を、エイトが助けた。それに恩義を感じ、旅に連れ添う事となったそうだ。
そして、もう一つ。トロデ王は、とうとう練金釜の修復に成功した。早速アンジェリカが、手持ちの薬草を二つ放り込むと、あっという間に上薬草が完成した。これからの旅で、大いに役立つはずだ。
一通り露店を回り、装備を整え、一行はそのままマイエラ修道院を目指した。のんびりしている暇は無い。
「ねえ、聖堂騎士団って、イケメン揃いなんだって」
ゼシカが、噂話で得た情報を口にした。アンジェリカは苦笑し、首を横に振る。
「あまり期待しない方が良いわ。確かにカッコ良いけれど、半分は制服のお陰だから」
「期待なんかしてないわ。今はイケメンよりも、道化師の方が気になるもの」
ゼシカも、相当ドライな感想を返した。彼女もアンジェリカも、恋愛沙汰には全く興味を示さないという点に於いては、共通していた。
緩やかな坂道を歩む間にも、時折チーンと音が聞こえる。練金釜が品を製成し終えた合図だ。
「今度は何を作ったの?」
エイトの問いに、アンジェリカはニコリと微笑んだ。
「盗賊の鍵」
「え」
ゼシカが目を瞬いた。アンジェリカは一片の後ろめたさも無い様子で、幌へ向かった。中の主人から、商品を受け取り、その代わりに次の品を注文する。
「はい、どうぞ」
アンジェリカは、不恰好な鍵をエイトの手に押し付けた。
「家の扉や、その辺の宝箱くらいなら開けられるわ。一個あると何かと便利よ」
「僕に空き巣をやれって事?」
「勿論違うわ! ただ、何だって、無いよりあった方が良いでしょう?」
「......ありがとう」
エイトは仕方無く受け取り、道具袋へしまった。当分......と言うより、出来れば一生使わない心算で。
「それで、今度は何を作っているの?」
「特薬草。殆どの傷はコレで治せるわ。相手が生きているなら、だけれど」
アンジェリカは、様々な知識を有している。大抵は役に立つ事だが、知らなくても良さそうな事まで知っている。
暫く歩くと、立派な建物が見えて来た。石造りに、色鮮やかなステンドグラス。マイエラ修道院だ。
アンジェリカは、心を躍らせた。トラペッタの家を失い、今や家と呼べる場所といったら、彼処しか無い。
駆け出したい衝動を抑え、一歩一歩を踏みしめた。漸く、帰れるのだ。記憶に残る、あの騎士見習いも、立派な聖堂騎士団員になっている事だろう。探せば会えるだろうか?
「何だか嬉しそうね?」
ゼシカがニコリと笑ってアンジェリカの顔を覗き込んだ。アンジェリカは、頷き、こう思った。生きていて、良かったと。
悲しみのせいで、会いたい人がまだいる事を、忘れる所だった。もしもあの時、エイト達がトラペッタにやって来なければ、ずっと忘れていたかも知れない。
これからも、きっと沢山の出会いがあるだろう。生きていれば。だから、生きようと思った。