マイエラ地方出身、マスター・ライラスの養女。
03:ポルトリンク編
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「みんな、ごめんなさい!」
アンジェリカは息も絶え絶えに、馬車へと駆け寄った。
「ゼシカさんは、どちらに?!」
「多分、港町ポルトリンクだと思う」
エイトが地図を確認しながら答えた。
「村で噂を聞いたんだ。なんでも、海の上を歩く道化師がいたって」
「海の上を歩けるくらいなら、本当に道化師になっちゃえば、一儲け出来るでしょうに」
アンジェリカは、肩を落として愚痴を溢した。また遠くへ逃げられてしまったのだ。
「まあまあ」
ヤンガスが、加減もせずに彼女の背中をバシリと叩いた。
「あのヘンテコ野郎が水の上を歩いている内は、人殺しも出来んでがすよ」
「ずっと歩いていてくれればね」
エイトが月並みの希望を述べて、溜息を吐いた。兎に角早く後を追わなければ。相手は何を仕出かすか分からない、狂人だ。
一行は連れ立って歩き出し、リーザス像の塔を右手に見ながら、また新しい道を進んだ。
「そういえば、アンジェはご飯を食べたの?」
エイトの質問に、アンジェリカは首を横に振った。
「すっかり忘れていたわ」
彼女が改めて調子を伺うと、どうやら腹のムシは相当不満があるらしい。グーっと間抜けな音が響いた。エイトは笑って、自分の荷物袋からパンを取り出した。
「はい、君の分。......本当はバスケット一杯にお弁当を貰ったんだけどーー」
「いやあ、すまんのう」
トロデが頭を掻きながら、にーっと笑った。
「てっきり殊勝な家臣が、わしに献上したと思うて、ホレ、この通り」
彼は自分の腹を、ポンっと叩いて見せた。アンジェリカは全く怒った素振りも見せずに、カラカラと笑った。
「では、私からの心付けと思って下さい。呪いが解けた暁には、是非、姫様のお世話をお任せくださいね?」
「おうおう、勿論じゃ! いや、こんなに優れた人材に出会えるのなら、魔物姿の旅も捨てたものではないわい!」
「じゃあ、いっそ、そのままの格好でいたらどうでがすか?」
ヤンガスは、余計な事を口走る悪癖があるらしい。勿論トロデはカンカンになって、暫し二人の口論が続いた。
アンジェリカは、急いでパンとミルクを飲み干した。歩きながら物を食べるのは、初めてだった。普段そんな事をすれば、必ずお節介な誰かが、口煩く注意をするのだ。
しかし、今はもう、それしきのことで小言を言う者はいない。全ての事が新鮮で、彼女はキラキラと瞳を輝かせていた。
やがて左手に砂浜が見えた。海風が髪を揺らし、潮の香りが漂う。
「ドルマゲスを捕まえたら、私、海の見える街に住みたいわ」
アンジェリカは、明るくそう言い、目を細めた。世界はこんなにも広いのだ。空と海と大地は、何処までも広がって行く。
人は、居心地の良い庭を飛び出せば、沢山の悲しみに触れる事になる。しかし、その分、素晴らしい事も沢山あるのだ。
「うわ! 出た!」
エイトが剣を抜いた。シマシマ模様の猫の様な魔物が二匹。正直、可愛くないとも言えない。倒すのは忍びないと感じたが、アンジェリカは確かに魔法の力を感じ、杖を振りかざした。
「マホカンタ!」
と、同時に、ヒャドを唱えた二匹。勝手に自滅。自らの氷に閉ざされ、身動きが取れなくなった。
一同は、上手いことそれを避けて、何とも言えない微妙な気持ちで通り過ぎた。
頭に傷を負ったザバンといい、今回のプリズニャンといい、何処か間抜けさを感じる魔物が多い。これでは、人間のドルマゲスの方がよっぽど邪悪だ。
「何というか......」
ヤンガスが、チラリと後ろを振り返りながら、頭を掻いた。
「あっしも頭を使うのは苦手な方でがすが、下には下がいるもんでげすな」
「馬鹿もんが! あんな化け物と張り合ってどうする!」
トロデの叱責に、ヤンガスはニヤニヤと笑いかえした。
「おっさんは良い勝負でがすよ」
「どういう意味じゃ!!」
勿論、外見だ。エイトとアンジェリカは一瞬視線を交わし、口端をひくつかせた。トロデの姿は、トロデの責任でそうなったワケでは無いのだが、不思議と性格とマッチしている様な気がする。
アンジェリカは、トロデ王の本来の姿を一生懸命想像した。
ミーティア姫は、美人と噂を聞いていたし、実際そうなのだろう。馬の姿でも、気品に満ちて、他の馬とは明らかに雰囲気が違う。
しかし、トロデは......。
「して、アンジェリカよ。おぬし、何を考えておる?!」
突然話を振られて、アンジェリカは飛び上がった。咄嗟に話題を考える。
「えっと......魔物って美味しいのかな......と」
「えぇ?!」
エイトが、至極真っ当な反応を示した。
アンジェリカは慌てて手を振り、弁明をする。
「だって、ほら! 私って庶民の出だし......修道院で暮らしていたものだから......。何だって、粗末にしたら勿体無いなっ......て! いえ、勿論、進んで食べたいワケじゃないわよ?! お魚の方が好きだし。......本当だってば!!」
ムキになって言い返す彼女の姿が、余りにも面白くて、エイトも、ヤンガスも、トロデも笑い声を上げた。
アンジェリカは、耳まで真っ赤になり、俯いた。人間、嘘なんか吐くものでは無いと、しみじみと思った。より状況が拗れるだけだ。
そんな会話を交わしているうちに、陽は傾き、一同は漸く、港町ポルトリンクに辿り着く事が出来た。
アンジェリカは息も絶え絶えに、馬車へと駆け寄った。
「ゼシカさんは、どちらに?!」
「多分、港町ポルトリンクだと思う」
エイトが地図を確認しながら答えた。
「村で噂を聞いたんだ。なんでも、海の上を歩く道化師がいたって」
「海の上を歩けるくらいなら、本当に道化師になっちゃえば、一儲け出来るでしょうに」
アンジェリカは、肩を落として愚痴を溢した。また遠くへ逃げられてしまったのだ。
「まあまあ」
ヤンガスが、加減もせずに彼女の背中をバシリと叩いた。
「あのヘンテコ野郎が水の上を歩いている内は、人殺しも出来んでがすよ」
「ずっと歩いていてくれればね」
エイトが月並みの希望を述べて、溜息を吐いた。兎に角早く後を追わなければ。相手は何を仕出かすか分からない、狂人だ。
一行は連れ立って歩き出し、リーザス像の塔を右手に見ながら、また新しい道を進んだ。
「そういえば、アンジェはご飯を食べたの?」
エイトの質問に、アンジェリカは首を横に振った。
「すっかり忘れていたわ」
彼女が改めて調子を伺うと、どうやら腹のムシは相当不満があるらしい。グーっと間抜けな音が響いた。エイトは笑って、自分の荷物袋からパンを取り出した。
「はい、君の分。......本当はバスケット一杯にお弁当を貰ったんだけどーー」
「いやあ、すまんのう」
トロデが頭を掻きながら、にーっと笑った。
「てっきり殊勝な家臣が、わしに献上したと思うて、ホレ、この通り」
彼は自分の腹を、ポンっと叩いて見せた。アンジェリカは全く怒った素振りも見せずに、カラカラと笑った。
「では、私からの心付けと思って下さい。呪いが解けた暁には、是非、姫様のお世話をお任せくださいね?」
「おうおう、勿論じゃ! いや、こんなに優れた人材に出会えるのなら、魔物姿の旅も捨てたものではないわい!」
「じゃあ、いっそ、そのままの格好でいたらどうでがすか?」
ヤンガスは、余計な事を口走る悪癖があるらしい。勿論トロデはカンカンになって、暫し二人の口論が続いた。
アンジェリカは、急いでパンとミルクを飲み干した。歩きながら物を食べるのは、初めてだった。普段そんな事をすれば、必ずお節介な誰かが、口煩く注意をするのだ。
しかし、今はもう、それしきのことで小言を言う者はいない。全ての事が新鮮で、彼女はキラキラと瞳を輝かせていた。
やがて左手に砂浜が見えた。海風が髪を揺らし、潮の香りが漂う。
「ドルマゲスを捕まえたら、私、海の見える街に住みたいわ」
アンジェリカは、明るくそう言い、目を細めた。世界はこんなにも広いのだ。空と海と大地は、何処までも広がって行く。
人は、居心地の良い庭を飛び出せば、沢山の悲しみに触れる事になる。しかし、その分、素晴らしい事も沢山あるのだ。
「うわ! 出た!」
エイトが剣を抜いた。シマシマ模様の猫の様な魔物が二匹。正直、可愛くないとも言えない。倒すのは忍びないと感じたが、アンジェリカは確かに魔法の力を感じ、杖を振りかざした。
「マホカンタ!」
と、同時に、ヒャドを唱えた二匹。勝手に自滅。自らの氷に閉ざされ、身動きが取れなくなった。
一同は、上手いことそれを避けて、何とも言えない微妙な気持ちで通り過ぎた。
頭に傷を負ったザバンといい、今回のプリズニャンといい、何処か間抜けさを感じる魔物が多い。これでは、人間のドルマゲスの方がよっぽど邪悪だ。
「何というか......」
ヤンガスが、チラリと後ろを振り返りながら、頭を掻いた。
「あっしも頭を使うのは苦手な方でがすが、下には下がいるもんでげすな」
「馬鹿もんが! あんな化け物と張り合ってどうする!」
トロデの叱責に、ヤンガスはニヤニヤと笑いかえした。
「おっさんは良い勝負でがすよ」
「どういう意味じゃ!!」
勿論、外見だ。エイトとアンジェリカは一瞬視線を交わし、口端をひくつかせた。トロデの姿は、トロデの責任でそうなったワケでは無いのだが、不思議と性格とマッチしている様な気がする。
アンジェリカは、トロデ王の本来の姿を一生懸命想像した。
ミーティア姫は、美人と噂を聞いていたし、実際そうなのだろう。馬の姿でも、気品に満ちて、他の馬とは明らかに雰囲気が違う。
しかし、トロデは......。
「して、アンジェリカよ。おぬし、何を考えておる?!」
突然話を振られて、アンジェリカは飛び上がった。咄嗟に話題を考える。
「えっと......魔物って美味しいのかな......と」
「えぇ?!」
エイトが、至極真っ当な反応を示した。
アンジェリカは慌てて手を振り、弁明をする。
「だって、ほら! 私って庶民の出だし......修道院で暮らしていたものだから......。何だって、粗末にしたら勿体無いなっ......て! いえ、勿論、進んで食べたいワケじゃないわよ?! お魚の方が好きだし。......本当だってば!!」
ムキになって言い返す彼女の姿が、余りにも面白くて、エイトも、ヤンガスも、トロデも笑い声を上げた。
アンジェリカは、耳まで真っ赤になり、俯いた。人間、嘘なんか吐くものでは無いと、しみじみと思った。より状況が拗れるだけだ。
そんな会話を交わしているうちに、陽は傾き、一同は漸く、港町ポルトリンクに辿り着く事が出来た。