マイエラ地方出身、マスター・ライラスの養女。
02:リーザス編
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とっぷり日の暮れたリーザス村に戻ると、宿屋の前にポルクが一人で立っていた。彼はエイト達の姿を捉えるなり、パッと顔を上げた。
「あ、帰って来たか! 遅いから心配したんだぞ!! ......で、ゼシカ姉ちゃんは?」
エイトが三人を代表して、事の次第を説明した。最も、過去の幻影を見たと言って、ポルクが納得するはずも無いので、その点は省き、ゼシカが花を手向けて祈っていたと伝える。
「ふんふん......」
ポルクは一応頷いた。
「まだちょっと心配だけど、ゼシカ姉ちゃんが帰って来るって言ったんなら、きっと大丈夫だ」
それから、彼は恥ずかしそうに俯き、頭を掻いた。
「と......とにかく、ありがとな。色々あったけど、おいらは、ちょっとだけ、お前らの事を尊敬したぞ!」
「ちょっとだけ?」
アンジェリカが悪戯っぽく聞き返すと、ポルクは明後日の方向を見て頬を膨らめた。
「そうだ! お前達が戻って来た時、宿屋に泊めてもらえる様に、丁度お願いして来たところだ!」
彼は質問の答えをはぐらかし、ビシッと人差し指を突き立てた。
「マルクと二人で、小遣いはたいたんだからな! しっかり感謝して泊まれよ!!」
「ありがとうね」
アンジェリカは、底なしの優しさでお礼を言った。ポルクは余程居心地が悪かったのか、くるりと踵を返して、お屋敷へ走り去ってしまった。
「まったく。捻くれた野郎でがすな」
ヤンガスは、呆れ返ってため息を吐いた。エイトも苦笑を浮かべる。
「きっと、根は良い子なんだろうね」
「まあ、そうでがすな。宿代が浮いたの助かるでげすよ」
ヤンガスは、こじんまりとした木の扉を押し開けた。受付にいた恰幅の良い女性が、三人を目にした途端、驚いた表情を見せた。
「ポルクから話は聞いているよ。......でも、まさか、女の子が一緒だったんだねぇ。こんな辺鄙な村だから一部屋しか無いし......どうしようかねぇ」
「お気遣いなさらず」
アンジェリカは、やんわりと首を横に振った。それから、ヤンガスとエイトを振り返る。
「ベッドが足りなかったら、私は、床で寝たって全然平気よ」
「いや、ベッドは足りているんだよ、お嬢さん」
女将は困った様子で口籠った。彼女が指摘したのは、ベッドの数では無く、男女が同じ部屋に泊まる点だ。
しかも、美少女一人に対して、ガラの悪い男が一人と、頼りなさそうな男が一人。
エイトもアンジェリカも、話が見えなかったが、ヤンガスだけは合点が行った。
「心配要らないでがす。この姐さんに手なんか出した日にゃ、骨まで残らず炭にされるでがすよ」
「え? えっと、それは少し難しいわね。炭も残らない事が殆どなの......」
的外れなアンジェリカの答えに、女将とエイトの表情が凍りついた。聞き間違えかと疑いたくなる程、物騒な言葉だ。
「......驚いたねぇ。ゼシカお嬢様より恐ろしい女の子がいるなんて」
女将は、さりげなく名門のお嬢様をけなした。その事にも気付かず、額を抑えて頷く。
「分かったよ。あんた達が構わないって言うなら、別に良いんだ。上の部屋をお使い。......ただし、万が一の時は、くれぐれも男だけを燃やしておくれ。この建物が無くなったら、あたしも旦那も、無職になっちまうからね」
「でも、火を使う必要は無いと思います」
アンジェリカは、やっと懸念を理解して、手をパタパタと振って見せた。
「だって、もう同じ部屋に泊まった事があるんですもの。二人ともすぐに寝てしまうし、ちっとも起きないから大丈夫です」
「それじゃあ、どうぞごゆっくり。大した食事も用意出来ないけれど、雨風は凌げるからね」
女将もとうとう諦めたらしく、呆れた笑みを浮かべて頷いた。
エイト達は、連れ立って二階へ上がり、こじんまりとした部屋に足を踏み入れた。
三人顔を見合わせ合い、一斉に自己主張をし始める。
「私は入り口側が良いわ。 だって一番早起きなんですもの!」
「あっしは、窓際だけは勘弁して欲しいでがす。コレでも繊細なんで、慣れない場所で、慣れない明かりに照らされながら寝るってのは、ちょっと体に良く無いでげす」
「でも、ヤンガスの隣はイビキが凄いからなぁ。真ん中に寝られちゃうと、被害者が二人になっちゃう」
まるで意見が噛み合わない。
「こういう時こそ、実力勝負でがすよ!」
ヤンガスが拳を振り上げた。エイトもアンジェリカも、負けじと腕を掲げる。
「「「じゃんけんほい!!!!」」」
「ああ、そんな!」
「あーあ」
アンジェリカとエイトは、肩を落とした。ヤンガスの一人勝ちだ。
「それじゃ、あっしは一番壁際で!」
彼の真ん丸の身体が、専用のベッドに飛び込んだ。
「アンジェは、真ん中と窓際、どっちが良い?」
エイトは一応、女性の意見を尊重したいと思い、訊ねた。しかし、アンジェリカも譲り合いの心では負けていない。
「そうね......。窓際なら星が見えるし、真ん中なら安心して眠れそう。............でも、今日は星が見たいわ」
「じゃあ、僕は真ん中にする」
エイトは武器を外してベッド脇に置くと、大きく伸びをした。
「疲れたね」
「......そうね」
アンジェリカは、月光を浴びて何処か虚ろに応えた。彼女は、夜と月と星が大好きだった。泰然と輝く星を見ていると、強くなれる。そんな気がしたから。
しかし、彼女は夜が嫌いになりそうだった。マスター・ライラスが殺されたのも、星の綺麗な日だった。悲しみが押し寄せて来る。
薄暗い部屋で、心配そうな表情を浮かべているエイトは、何処となくサーベルトに似ていた。だからアンジェリカは、振り返る事も出来ずに、空を眺めているより、他に無いのだ。
ものの数分も経たない内に、食事が運ばれて来た。ふかふかの大きなパンが一個に、お野菜のスープ。質素だが、どちらも味はよく、三人はあっという間に平らげてしまった。
エイトとヤンガスは、早々に横になってしまい、やがてイビキが鳴り響いた。
アンジェリカは、直ぐに眠る事が出来ずに、星を見上げていた。胸の奥底に鳴響くのは、冬のある日の記憶。肌を刺す様な北風が冷たく、それでいて夜空は晴れていた。
凍てついた星の煌めきが、滲んで見えたあの日......母が亡くなった日の事を。
「あ、帰って来たか! 遅いから心配したんだぞ!! ......で、ゼシカ姉ちゃんは?」
エイトが三人を代表して、事の次第を説明した。最も、過去の幻影を見たと言って、ポルクが納得するはずも無いので、その点は省き、ゼシカが花を手向けて祈っていたと伝える。
「ふんふん......」
ポルクは一応頷いた。
「まだちょっと心配だけど、ゼシカ姉ちゃんが帰って来るって言ったんなら、きっと大丈夫だ」
それから、彼は恥ずかしそうに俯き、頭を掻いた。
「と......とにかく、ありがとな。色々あったけど、おいらは、ちょっとだけ、お前らの事を尊敬したぞ!」
「ちょっとだけ?」
アンジェリカが悪戯っぽく聞き返すと、ポルクは明後日の方向を見て頬を膨らめた。
「そうだ! お前達が戻って来た時、宿屋に泊めてもらえる様に、丁度お願いして来たところだ!」
彼は質問の答えをはぐらかし、ビシッと人差し指を突き立てた。
「マルクと二人で、小遣いはたいたんだからな! しっかり感謝して泊まれよ!!」
「ありがとうね」
アンジェリカは、底なしの優しさでお礼を言った。ポルクは余程居心地が悪かったのか、くるりと踵を返して、お屋敷へ走り去ってしまった。
「まったく。捻くれた野郎でがすな」
ヤンガスは、呆れ返ってため息を吐いた。エイトも苦笑を浮かべる。
「きっと、根は良い子なんだろうね」
「まあ、そうでがすな。宿代が浮いたの助かるでげすよ」
ヤンガスは、こじんまりとした木の扉を押し開けた。受付にいた恰幅の良い女性が、三人を目にした途端、驚いた表情を見せた。
「ポルクから話は聞いているよ。......でも、まさか、女の子が一緒だったんだねぇ。こんな辺鄙な村だから一部屋しか無いし......どうしようかねぇ」
「お気遣いなさらず」
アンジェリカは、やんわりと首を横に振った。それから、ヤンガスとエイトを振り返る。
「ベッドが足りなかったら、私は、床で寝たって全然平気よ」
「いや、ベッドは足りているんだよ、お嬢さん」
女将は困った様子で口籠った。彼女が指摘したのは、ベッドの数では無く、男女が同じ部屋に泊まる点だ。
しかも、美少女一人に対して、ガラの悪い男が一人と、頼りなさそうな男が一人。
エイトもアンジェリカも、話が見えなかったが、ヤンガスだけは合点が行った。
「心配要らないでがす。この姐さんに手なんか出した日にゃ、骨まで残らず炭にされるでがすよ」
「え? えっと、それは少し難しいわね。炭も残らない事が殆どなの......」
的外れなアンジェリカの答えに、女将とエイトの表情が凍りついた。聞き間違えかと疑いたくなる程、物騒な言葉だ。
「......驚いたねぇ。ゼシカお嬢様より恐ろしい女の子がいるなんて」
女将は、さりげなく名門のお嬢様をけなした。その事にも気付かず、額を抑えて頷く。
「分かったよ。あんた達が構わないって言うなら、別に良いんだ。上の部屋をお使い。......ただし、万が一の時は、くれぐれも男だけを燃やしておくれ。この建物が無くなったら、あたしも旦那も、無職になっちまうからね」
「でも、火を使う必要は無いと思います」
アンジェリカは、やっと懸念を理解して、手をパタパタと振って見せた。
「だって、もう同じ部屋に泊まった事があるんですもの。二人ともすぐに寝てしまうし、ちっとも起きないから大丈夫です」
「それじゃあ、どうぞごゆっくり。大した食事も用意出来ないけれど、雨風は凌げるからね」
女将もとうとう諦めたらしく、呆れた笑みを浮かべて頷いた。
エイト達は、連れ立って二階へ上がり、こじんまりとした部屋に足を踏み入れた。
三人顔を見合わせ合い、一斉に自己主張をし始める。
「私は入り口側が良いわ。 だって一番早起きなんですもの!」
「あっしは、窓際だけは勘弁して欲しいでがす。コレでも繊細なんで、慣れない場所で、慣れない明かりに照らされながら寝るってのは、ちょっと体に良く無いでげす」
「でも、ヤンガスの隣はイビキが凄いからなぁ。真ん中に寝られちゃうと、被害者が二人になっちゃう」
まるで意見が噛み合わない。
「こういう時こそ、実力勝負でがすよ!」
ヤンガスが拳を振り上げた。エイトもアンジェリカも、負けじと腕を掲げる。
「「「じゃんけんほい!!!!」」」
「ああ、そんな!」
「あーあ」
アンジェリカとエイトは、肩を落とした。ヤンガスの一人勝ちだ。
「それじゃ、あっしは一番壁際で!」
彼の真ん丸の身体が、専用のベッドに飛び込んだ。
「アンジェは、真ん中と窓際、どっちが良い?」
エイトは一応、女性の意見を尊重したいと思い、訊ねた。しかし、アンジェリカも譲り合いの心では負けていない。
「そうね......。窓際なら星が見えるし、真ん中なら安心して眠れそう。............でも、今日は星が見たいわ」
「じゃあ、僕は真ん中にする」
エイトは武器を外してベッド脇に置くと、大きく伸びをした。
「疲れたね」
「......そうね」
アンジェリカは、月光を浴びて何処か虚ろに応えた。彼女は、夜と月と星が大好きだった。泰然と輝く星を見ていると、強くなれる。そんな気がしたから。
しかし、彼女は夜が嫌いになりそうだった。マスター・ライラスが殺されたのも、星の綺麗な日だった。悲しみが押し寄せて来る。
薄暗い部屋で、心配そうな表情を浮かべているエイトは、何処となくサーベルトに似ていた。だからアンジェリカは、振り返る事も出来ずに、空を眺めているより、他に無いのだ。
ものの数分も経たない内に、食事が運ばれて来た。ふかふかの大きなパンが一個に、お野菜のスープ。質素だが、どちらも味はよく、三人はあっという間に平らげてしまった。
エイトとヤンガスは、早々に横になってしまい、やがてイビキが鳴り響いた。
アンジェリカは、直ぐに眠る事が出来ずに、星を見上げていた。胸の奥底に鳴響くのは、冬のある日の記憶。肌を刺す様な北風が冷たく、それでいて夜空は晴れていた。
凍てついた星の煌めきが、滲んで見えたあの日......母が亡くなった日の事を。