ファヌージュ出身の傭兵。
03:帰還
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荒涼とした景色を見回し、フランチェスカはポツリと呟く。
「セレスティアですか......」
彼女にとっては、傾国の剣を手に入れ損ねた、忌々しい地だ。
しかし、それよりも好奇心をそそられる。この地一帯には、不思議な力が漂っているのだ。
レイグルは既に間合いを取り、剣を抜いていた。
フランチェスカも、5年前に譲り受けた魔剣を抜き、空にかざした。
(魔剣エトワールよ。暗闇に沈む世界を切り拓いて)
「行きます!」
彼女は叱声を放ち、踏み込んだ。瞬間、レイグルの影が霞んだ。しかし、今のフランチェスカには、その姿が見えている。
「っ!」
首の横で剣を受け止め、後ろに飛び退ると、レイグルははっきりと笑った。
「受け止めたか」
「まだです!」
フランチェスカは、横薙ぎに剣を振るい、レイグルの剣を弾いた。そのまま踏み込み、鋭い突きを放つが、難なく受け止められてしまった。
レイグルは、何を思ったのか、急に後ろへ飛び、腕を上げた。黒い光が一点に集中し、次の瞬間、フランチェスカに向かって炸裂した。
周囲の地面を抉るほどの魔法。もうもうと土埃が舞い、一気に視界が悪くなった。
しかし、その煙の中から、矢のように人影が飛び出して来た。
魔法の直撃を受けたはずのフランチェスカは、無傷で剣を振り上げた。
レイグルは、益々機嫌を良くした。
「竜の力を手に入れたか」
「それだけではありません!!」
フランチェスカは、魔剣を振り下ろすと同時に、強烈なかまいたちを放った。
遠隔攻撃の出来る、傾国の剣は手に入らなかったが、代わりにあらかじめ自分の魔力を剣に込めておき、それを解き放つ術を見出したのだ。
勿論、レイグルはあっさりと魔法を跳ね除け、思い切り踏み込んだ。
(動きが!!)
フランチェスカは慌てて横に避け、剣を振った。どうやら彼は、本気を出す気になったらしい。
バチバチと、魔剣同士がぶつかり合う音が響いた。レイグルの放つ一撃は、どれも重く、常人なら吹き飛ばされて、全身骨折しているレベルだ。
しかし、今のフランチェスカは違う。互角と言えずとも、一応受け止めるくらいは出来る。つまり、生き延びること......逃げる事を勝ちとするなら、十分戦える。
「お前の力量は計れた。仕舞いにしよう」
レイグルは、さりげなく距離を取り、剣を収めてしまった。フランチェスカは、まだ戦う気満々だったのだが、仕方がない。彼は倒すべき敵ではないのだから。
「こちらへ来い」
レイグルは手を差し出した。
「お前は十分強いが、まだ強くなれる。望むのなら、更なる力を与えよう。......俺の信頼を勝ち得た、対価として」
彼はフランチェスカの表情を見て、最後の言葉を付け足した。彼女は、力は自分で手に入れなければ、意味が無いという考えを持っていると、分かったからだ。
フランチェスカは、素直に手を伸ばした。
「貴方をお護りするには、幾ら力があっても足りません。早く、ミュールゲニアを一つにしてください。バカな王侯貴族を排除し、真の平和を築いてください」
「誓おう」
レイグルは、極めて簡潔に返事をし、引っ張る様にフランチェスカの手を掴んだ。
瞬間、フランチェスカの中に、膨大な魔法の力が流れ込んで来た。
(な......何?! これは......っ!!)
まるで、体が丸ごと他人の物に置き換わったかの様な感覚だった。竜を討伐した時に似ているが、それをも凌駕する激しい力の波動。
「......っ?!」
あまりの変化に耐えきれず、フランチェスカは、一枚板の様に後ろへ倒れそうになった。レイグルが支えていなければ、脳震盪を起こしていたかも知れない。
「......これが......魔人の力ですか......? 使徒化というものでしょうか?」
「何処でその知識を得たかは知らんが、厳密には違う。お前が他人の付属物になる事を望むとは、思えん。俺の力の一部をお前に移しただけだ」
「一部......」
フランチェスカは額を摩りながら呟いた。一部でこのザマなら、全部移されていたら、死んでいただろう。
彼女が漸く自力で体制を立て直すと、レイグルは見たこともない程、複雑な表情を浮かべていた。
「一体お前は何を見てきた? お前ほどの戦士が、何故これまで埋もれていた? レインとやらの噂は時折耳にしていたが、傭兵フランチェスカの情報は、全くといって良い程流れていない」
「それには、ちょっと複雑な事情があるんです。......聞き耳を立てている者もいますし、城に戻ってから、お話しします。......メルキュール!!」
フランチェスカは、瓦礫の隙間に向かって叫んだ。すると、ひょっこりと黒髪の美青年が現れた。
「良かったー! 生きていたんですね!」
彼は呑気な口調で言い、ニコニコと歩み寄って来た。
「心配してたんですよ? もしかすると、別の世界に飛ばされちゃったんじゃないかって」
「それはどうも。私はこの通りピンピンしてるから、レインとやらの観察に戻ったらどう?」
フランチェスカの冷たい声に、メルキュールは苦笑した。
「そうしたい気も山々なんですけれど、ちょっと“入り口”を見つけてしまって。知らない人が迷い込まない様に僕が見ていないと」
「そう。......言っておくけれど、私の邪魔をしたら許さない!」
「あはは! そんな無謀な事はしませんよ。未来はもう、決まっているんですから。それじゃあ」
メルキュールは、霞の様にスッと消えてしまった。
「なんだ、あれは」
レイグルの問いに、フランチェスカは真顔で答える。
「異邦人」
「セレスティアですか......」
彼女にとっては、傾国の剣を手に入れ損ねた、忌々しい地だ。
しかし、それよりも好奇心をそそられる。この地一帯には、不思議な力が漂っているのだ。
レイグルは既に間合いを取り、剣を抜いていた。
フランチェスカも、5年前に譲り受けた魔剣を抜き、空にかざした。
(魔剣エトワールよ。暗闇に沈む世界を切り拓いて)
「行きます!」
彼女は叱声を放ち、踏み込んだ。瞬間、レイグルの影が霞んだ。しかし、今のフランチェスカには、その姿が見えている。
「っ!」
首の横で剣を受け止め、後ろに飛び退ると、レイグルははっきりと笑った。
「受け止めたか」
「まだです!」
フランチェスカは、横薙ぎに剣を振るい、レイグルの剣を弾いた。そのまま踏み込み、鋭い突きを放つが、難なく受け止められてしまった。
レイグルは、何を思ったのか、急に後ろへ飛び、腕を上げた。黒い光が一点に集中し、次の瞬間、フランチェスカに向かって炸裂した。
周囲の地面を抉るほどの魔法。もうもうと土埃が舞い、一気に視界が悪くなった。
しかし、その煙の中から、矢のように人影が飛び出して来た。
魔法の直撃を受けたはずのフランチェスカは、無傷で剣を振り上げた。
レイグルは、益々機嫌を良くした。
「竜の力を手に入れたか」
「それだけではありません!!」
フランチェスカは、魔剣を振り下ろすと同時に、強烈なかまいたちを放った。
遠隔攻撃の出来る、傾国の剣は手に入らなかったが、代わりにあらかじめ自分の魔力を剣に込めておき、それを解き放つ術を見出したのだ。
勿論、レイグルはあっさりと魔法を跳ね除け、思い切り踏み込んだ。
(動きが!!)
フランチェスカは慌てて横に避け、剣を振った。どうやら彼は、本気を出す気になったらしい。
バチバチと、魔剣同士がぶつかり合う音が響いた。レイグルの放つ一撃は、どれも重く、常人なら吹き飛ばされて、全身骨折しているレベルだ。
しかし、今のフランチェスカは違う。互角と言えずとも、一応受け止めるくらいは出来る。つまり、生き延びること......逃げる事を勝ちとするなら、十分戦える。
「お前の力量は計れた。仕舞いにしよう」
レイグルは、さりげなく距離を取り、剣を収めてしまった。フランチェスカは、まだ戦う気満々だったのだが、仕方がない。彼は倒すべき敵ではないのだから。
「こちらへ来い」
レイグルは手を差し出した。
「お前は十分強いが、まだ強くなれる。望むのなら、更なる力を与えよう。......俺の信頼を勝ち得た、対価として」
彼はフランチェスカの表情を見て、最後の言葉を付け足した。彼女は、力は自分で手に入れなければ、意味が無いという考えを持っていると、分かったからだ。
フランチェスカは、素直に手を伸ばした。
「貴方をお護りするには、幾ら力があっても足りません。早く、ミュールゲニアを一つにしてください。バカな王侯貴族を排除し、真の平和を築いてください」
「誓おう」
レイグルは、極めて簡潔に返事をし、引っ張る様にフランチェスカの手を掴んだ。
瞬間、フランチェスカの中に、膨大な魔法の力が流れ込んで来た。
(な......何?! これは......っ!!)
まるで、体が丸ごと他人の物に置き換わったかの様な感覚だった。竜を討伐した時に似ているが、それをも凌駕する激しい力の波動。
「......っ?!」
あまりの変化に耐えきれず、フランチェスカは、一枚板の様に後ろへ倒れそうになった。レイグルが支えていなければ、脳震盪を起こしていたかも知れない。
「......これが......魔人の力ですか......? 使徒化というものでしょうか?」
「何処でその知識を得たかは知らんが、厳密には違う。お前が他人の付属物になる事を望むとは、思えん。俺の力の一部をお前に移しただけだ」
「一部......」
フランチェスカは額を摩りながら呟いた。一部でこのザマなら、全部移されていたら、死んでいただろう。
彼女が漸く自力で体制を立て直すと、レイグルは見たこともない程、複雑な表情を浮かべていた。
「一体お前は何を見てきた? お前ほどの戦士が、何故これまで埋もれていた? レインとやらの噂は時折耳にしていたが、傭兵フランチェスカの情報は、全くといって良い程流れていない」
「それには、ちょっと複雑な事情があるんです。......聞き耳を立てている者もいますし、城に戻ってから、お話しします。......メルキュール!!」
フランチェスカは、瓦礫の隙間に向かって叫んだ。すると、ひょっこりと黒髪の美青年が現れた。
「良かったー! 生きていたんですね!」
彼は呑気な口調で言い、ニコニコと歩み寄って来た。
「心配してたんですよ? もしかすると、別の世界に飛ばされちゃったんじゃないかって」
「それはどうも。私はこの通りピンピンしてるから、レインとやらの観察に戻ったらどう?」
フランチェスカの冷たい声に、メルキュールは苦笑した。
「そうしたい気も山々なんですけれど、ちょっと“入り口”を見つけてしまって。知らない人が迷い込まない様に僕が見ていないと」
「そう。......言っておくけれど、私の邪魔をしたら許さない!」
「あはは! そんな無謀な事はしませんよ。未来はもう、決まっているんですから。それじゃあ」
メルキュールは、霞の様にスッと消えてしまった。
「なんだ、あれは」
レイグルの問いに、フランチェスカは真顔で答える。
「異邦人」