ファヌージュ出身の傭兵。
01:革命
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フランチェスカは、あまりの恐怖に立ち尽くしていた。眼前には、銀髪の麗人。足元には......
「うっ......あ......」
つい先ほどまで、この国の王だった男の首が転がっている。
フランチェスカは、救われたのだ。しかし、それを素直に喜べなかった。今目の前にいる男は、たった一人で大国の主城に攻め入り、片っ端から騎士たちを殺し回って、ここへ来たのだ。
「名は?」
男が訊ねた。フランチェスカは、死を覚悟した。それが故に、諦めにも似た落ち着きを手に入れ、口を開いた。
「貴方は、何者ですか? 何故王を殺したのです?」
「......魔人だ」
「魔人......」
信じられない様な言葉を聞いても、疑う気にはなれなかった。魔人なら、一人で数百人もの騎士を殺す事も可能だろう。説明がつく。
「魔人がザーマインに何の用ですか? 聖戦の忘れ物を取りに来たわけでもなさそうですね。......私も殺しますか?」
「それは、お前次第だ。少しは腕が立つ様だが......平民が何故、この男の元にいた?」
男はスッと目を細めた。フランチェスカは、出来るだけアラミス王の死体を見なくて済むように、彼を見つめた。
「私は元々ファヌージュ出身の傭兵です。この国にも仕事で来ました。......そして、ここの貴族に雇われたのです。“自分の娘のフリをして王の元へ行け”と命じられました」
「その様な仕事をやすやすと引き受けるほど、愚か者には見えんが」
「母が病気で、大金が必要だったのです。ですから、やむをえず......」
そこまで言い、ようやくフランチェスカは男に頭を下げた。
「貴方のお陰で助かりました。アラミス王は、私の好みではありませんでしたので。......内心“死んでくれ”と思いながら接していました」
その言葉を聞き、男はふっと笑みを浮かべた。
「肝の座った人間だ。......良いだろう」
彼は血に濡れた剣を鞘に収め、手を差し出した。
「俺の元で働け。強制はしないが、人手が必要だ。この城に残っている者は、ルミナスと幾人かの貴族、文官のジャギルに、お前だけだ。この国を立て直すのに、まともな戦力がいる」
「......ルミナス......。あの方は、王を裏切ったのですか?!」
「意外に思うか?」
「......いいえ。あの方は、良識のある人でした。私の様な身分の卑しい者にも、礼を尽くしてくださいました。......そうですね。アラミス王より、貴方の方が、良い支配者になるかも知れません。私がそんな希望を持つくらい、アラミス王は最悪の君主でした。でも」
フランチェスカは膝を折って、新しい王に頭を垂れた。
「貴方の元では働けません! 母が心配なのです。私はファヌージュの人間ですし、病気の母を独りにしておけません! だからーー」
「城掃除を手伝えば、俸給を支払い、お前を故郷まで送ろう。我が転移魔法を頼れば......少なくともファヌージュ王都までは、一瞬で戻れる。悪い話では無かろう。一晩も動けば、始末も終わる」
男は手を差し出したまま、じっとフランチェスカを見据えた。しばし考え、彼女はその手を取った。
「かしこまりました、陛下」
あと一日働けば、上等の肉や野菜、薬を買って帰れるだろう。
「貴方にお仕えします。......フランチェスカと申します。なんとお呼びすれば良いでしょうか?」
「俺はレイグル。呼びたい様に呼べ。......一階にルミナスがいる。細かい指示は、奴に仰げ」
「承知致しました」
フランチェスカは、今一度深く頭を下げ、部屋を去ろうとした。
扉の前まで歩き、ふと、思い立って振り返る。
「助けてくださって、ありがとうございました。陛下がいらして......本当に良かったです」
レイグルは何も言わなかった。フランチェスカは踵を返し、部屋を後にした。
静かな廊下に出た所で、涙が頬を伝った。安堵の涙だ。
(良かった......本当に良かった......)
レイグルが、なんの目的でアラミス王を殺したのかは分からない。けれど、アラミス王のモノになるより、レイグルの元で血塗れの城内を掃除して回る方が、百倍マシだった。
「うっ......あ......」
つい先ほどまで、この国の王だった男の首が転がっている。
フランチェスカは、救われたのだ。しかし、それを素直に喜べなかった。今目の前にいる男は、たった一人で大国の主城に攻め入り、片っ端から騎士たちを殺し回って、ここへ来たのだ。
「名は?」
男が訊ねた。フランチェスカは、死を覚悟した。それが故に、諦めにも似た落ち着きを手に入れ、口を開いた。
「貴方は、何者ですか? 何故王を殺したのです?」
「......魔人だ」
「魔人......」
信じられない様な言葉を聞いても、疑う気にはなれなかった。魔人なら、一人で数百人もの騎士を殺す事も可能だろう。説明がつく。
「魔人がザーマインに何の用ですか? 聖戦の忘れ物を取りに来たわけでもなさそうですね。......私も殺しますか?」
「それは、お前次第だ。少しは腕が立つ様だが......平民が何故、この男の元にいた?」
男はスッと目を細めた。フランチェスカは、出来るだけアラミス王の死体を見なくて済むように、彼を見つめた。
「私は元々ファヌージュ出身の傭兵です。この国にも仕事で来ました。......そして、ここの貴族に雇われたのです。“自分の娘のフリをして王の元へ行け”と命じられました」
「その様な仕事をやすやすと引き受けるほど、愚か者には見えんが」
「母が病気で、大金が必要だったのです。ですから、やむをえず......」
そこまで言い、ようやくフランチェスカは男に頭を下げた。
「貴方のお陰で助かりました。アラミス王は、私の好みではありませんでしたので。......内心“死んでくれ”と思いながら接していました」
その言葉を聞き、男はふっと笑みを浮かべた。
「肝の座った人間だ。......良いだろう」
彼は血に濡れた剣を鞘に収め、手を差し出した。
「俺の元で働け。強制はしないが、人手が必要だ。この城に残っている者は、ルミナスと幾人かの貴族、文官のジャギルに、お前だけだ。この国を立て直すのに、まともな戦力がいる」
「......ルミナス......。あの方は、王を裏切ったのですか?!」
「意外に思うか?」
「......いいえ。あの方は、良識のある人でした。私の様な身分の卑しい者にも、礼を尽くしてくださいました。......そうですね。アラミス王より、貴方の方が、良い支配者になるかも知れません。私がそんな希望を持つくらい、アラミス王は最悪の君主でした。でも」
フランチェスカは膝を折って、新しい王に頭を垂れた。
「貴方の元では働けません! 母が心配なのです。私はファヌージュの人間ですし、病気の母を独りにしておけません! だからーー」
「城掃除を手伝えば、俸給を支払い、お前を故郷まで送ろう。我が転移魔法を頼れば......少なくともファヌージュ王都までは、一瞬で戻れる。悪い話では無かろう。一晩も動けば、始末も終わる」
男は手を差し出したまま、じっとフランチェスカを見据えた。しばし考え、彼女はその手を取った。
「かしこまりました、陛下」
あと一日働けば、上等の肉や野菜、薬を買って帰れるだろう。
「貴方にお仕えします。......フランチェスカと申します。なんとお呼びすれば良いでしょうか?」
「俺はレイグル。呼びたい様に呼べ。......一階にルミナスがいる。細かい指示は、奴に仰げ」
「承知致しました」
フランチェスカは、今一度深く頭を下げ、部屋を去ろうとした。
扉の前まで歩き、ふと、思い立って振り返る。
「助けてくださって、ありがとうございました。陛下がいらして......本当に良かったです」
レイグルは何も言わなかった。フランチェスカは踵を返し、部屋を後にした。
静かな廊下に出た所で、涙が頬を伝った。安堵の涙だ。
(良かった......本当に良かった......)
レイグルが、なんの目的でアラミス王を殺したのかは分からない。けれど、アラミス王のモノになるより、レイグルの元で血塗れの城内を掃除して回る方が、百倍マシだった。
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