GSその他
新春行事(新名×バンビ)
明るい日差しが照りつける。年末頃に崩れていた空もすっかり晴れて抜けるような青い空が広がっている。だが日向は暖かく感じても吹き付ける風は切るように冷たい。
普段はさほど人の来ない神社も新年初日は人波が切れ目なく続き、参拝を待つ行列が長々と伸びている。
「足元だいじょぶ?」
「うん」
「ほら、手」
「ふふ、はーい」
着付けてもらった晴れ着にまだ慣れない下駄履き姿で少し危なっかしく歩く美奈子の手を握る。参拝の行列は神社の外まで伸びて、二人が並んだ後も既に最後列が見えないくらい程伸びている。
「すごい行列だね」
「ホント、すっげもう後ろ見えないし。あ、寒くない?遠慮なくくっついちゃっていいからさ」
「ふふっ、ありがと新名くん。今日は日も照ってるから平気だよ」
「えー、そこはさむーいってくっつくとこでしょー?」
「もうっ、じゃあ……ちょっとだけくっついちゃおっかな」
「オッケー!おいでおいで」
長い行列の中、手を握って身を寄せ合う。
間近で見る鮮やかな色の晴れ着姿は普段の制服姿や私服とはまたちょっと違う大人びた雰囲気で、普段から手を繋いだり寄り添ったりしているはずなのに少し緊張してしまう。
「列中々進まないね」
「うん。でもなんか、このままずっと二人でいいかも、なんて思っちゃったり」
顔を寄せて囁く言葉を聞いていたのかいないのか。
「あ、新名くん見て。じゃがバターのお店あるよ!お参り済んだら食べよう?」
「あー」
がっくりと肩を落とす。
「ちょっとー、せーっかく綺麗な晴れ着でキメてんだからさ、もっと艶っぽく~とかしちゃおうよ」
「え?つやっぽく……うーん、だっていい匂いしてたし……ダメかな?」
「はいはい、もーこの子は。まずはお参り済ませてからでしょ」
「はーい」
袖をぱたぱた揺らして頷く、小奇麗に着飾っていても中身は全然変わっていない。
「けど、そーいう可愛いとこに弱いんだよなぁ、ハァ……マジ反則」
「え?」
「何でもありませーん」
「あ、列動いた!早くいこ」
「はいはい、手ちゃんと繋いで転ばないようにね」
石畳の続く境内、ずらりと並んだ行列に押し流されるようにしてようやくたどり着いた賽銭箱の前で願いをこめて小銭を投げ込み両手を合わせた。
お参りを済ませて、道沿いにずらりと並んだ屋台の色とりどりののぼりを眺めて嬉しそうに新名の袖を引く。
「焼きソバに、大判焼きも、あーチョコバナナもいいかも。ベビーカステラかぁ」
「お店逃げないからそんなにはしゃがなーいの、どっちが年上だかわかんねーし」
「だってさ、こういう時に屋台で食べるのってすごく美味しいんだもん」
「そこはさぁ、俺と一緒だからもっと美味しい~って言うとこなんじゃないのー」
「あ、もちろん新名くんと一緒に食べるのも美味しいよ?」
「なーんか、ついでっぽいんですどー」
「ごめんごめん、ほら、チョコバナナ一緒に食べよ?おごってあげる」
「……食べ物でごまかされるお子様じゃないっての、ハァ」
こっちこっちと手を引かれながら、内心小さく溜息をつく。
彼女と最初出会った時からいつもこんな調子で、高校に入ってから二人で出かけるようになってからもまるで変わらない。一見可愛らしくて真面目そうな彼女だが、一旦口を開くと持ち前の子供っぽさと食いしん坊っぷりのギャップがすごい。だが、そんな子供らしい真っ直ぐなところにすっかりやられているわけだけど。
「えーっと、じゃこのイチゴのチョコのください」
「はい、500円だよ」
こうして嬉しそうにチョコバナナを受け取る姿はやっぱり可愛い。
「新名くんはどれにする?」
「あー、えーっとじゃあ普通のチョコの奴で」
甘いものはあまり得意ではないけれど、さっきの自分の言葉通り彼女と一緒に食べるなら苦手も気にならない、むしろ悪くない。惚れた弱み、とはよく言ったものかもしれない。
「はいっ新名くん」
「どーも」
差し出されたチョコバナナを受け取ろうとするが、不意に彼女の手が止まる。
「あーん」
目の前に差し出したままにこっと笑って。
これが無意識なんだから性質が悪い。
「……あー」
「おいしい?」
ちょっと頬を赤くしたままこくこくと頷いて。
「ね、これ食べたらあっちで甘酒飲もう?お正月はね~神社にお参りにいって甘酒を飲まないと年が明けたって気がしないんだよね」
「はいはい、お付き合いします。もうホント降参」
「ん?」
「何でもありませーん」
END
明るい日差しが照りつける。年末頃に崩れていた空もすっかり晴れて抜けるような青い空が広がっている。だが日向は暖かく感じても吹き付ける風は切るように冷たい。
普段はさほど人の来ない神社も新年初日は人波が切れ目なく続き、参拝を待つ行列が長々と伸びている。
「足元だいじょぶ?」
「うん」
「ほら、手」
「ふふ、はーい」
着付けてもらった晴れ着にまだ慣れない下駄履き姿で少し危なっかしく歩く美奈子の手を握る。参拝の行列は神社の外まで伸びて、二人が並んだ後も既に最後列が見えないくらい程伸びている。
「すごい行列だね」
「ホント、すっげもう後ろ見えないし。あ、寒くない?遠慮なくくっついちゃっていいからさ」
「ふふっ、ありがと新名くん。今日は日も照ってるから平気だよ」
「えー、そこはさむーいってくっつくとこでしょー?」
「もうっ、じゃあ……ちょっとだけくっついちゃおっかな」
「オッケー!おいでおいで」
長い行列の中、手を握って身を寄せ合う。
間近で見る鮮やかな色の晴れ着姿は普段の制服姿や私服とはまたちょっと違う大人びた雰囲気で、普段から手を繋いだり寄り添ったりしているはずなのに少し緊張してしまう。
「列中々進まないね」
「うん。でもなんか、このままずっと二人でいいかも、なんて思っちゃったり」
顔を寄せて囁く言葉を聞いていたのかいないのか。
「あ、新名くん見て。じゃがバターのお店あるよ!お参り済んだら食べよう?」
「あー」
がっくりと肩を落とす。
「ちょっとー、せーっかく綺麗な晴れ着でキメてんだからさ、もっと艶っぽく~とかしちゃおうよ」
「え?つやっぽく……うーん、だっていい匂いしてたし……ダメかな?」
「はいはい、もーこの子は。まずはお参り済ませてからでしょ」
「はーい」
袖をぱたぱた揺らして頷く、小奇麗に着飾っていても中身は全然変わっていない。
「けど、そーいう可愛いとこに弱いんだよなぁ、ハァ……マジ反則」
「え?」
「何でもありませーん」
「あ、列動いた!早くいこ」
「はいはい、手ちゃんと繋いで転ばないようにね」
石畳の続く境内、ずらりと並んだ行列に押し流されるようにしてようやくたどり着いた賽銭箱の前で願いをこめて小銭を投げ込み両手を合わせた。
お参りを済ませて、道沿いにずらりと並んだ屋台の色とりどりののぼりを眺めて嬉しそうに新名の袖を引く。
「焼きソバに、大判焼きも、あーチョコバナナもいいかも。ベビーカステラかぁ」
「お店逃げないからそんなにはしゃがなーいの、どっちが年上だかわかんねーし」
「だってさ、こういう時に屋台で食べるのってすごく美味しいんだもん」
「そこはさぁ、俺と一緒だからもっと美味しい~って言うとこなんじゃないのー」
「あ、もちろん新名くんと一緒に食べるのも美味しいよ?」
「なーんか、ついでっぽいんですどー」
「ごめんごめん、ほら、チョコバナナ一緒に食べよ?おごってあげる」
「……食べ物でごまかされるお子様じゃないっての、ハァ」
こっちこっちと手を引かれながら、内心小さく溜息をつく。
彼女と最初出会った時からいつもこんな調子で、高校に入ってから二人で出かけるようになってからもまるで変わらない。一見可愛らしくて真面目そうな彼女だが、一旦口を開くと持ち前の子供っぽさと食いしん坊っぷりのギャップがすごい。だが、そんな子供らしい真っ直ぐなところにすっかりやられているわけだけど。
「えーっと、じゃこのイチゴのチョコのください」
「はい、500円だよ」
こうして嬉しそうにチョコバナナを受け取る姿はやっぱり可愛い。
「新名くんはどれにする?」
「あー、えーっとじゃあ普通のチョコの奴で」
甘いものはあまり得意ではないけれど、さっきの自分の言葉通り彼女と一緒に食べるなら苦手も気にならない、むしろ悪くない。惚れた弱み、とはよく言ったものかもしれない。
「はいっ新名くん」
「どーも」
差し出されたチョコバナナを受け取ろうとするが、不意に彼女の手が止まる。
「あーん」
目の前に差し出したままにこっと笑って。
これが無意識なんだから性質が悪い。
「……あー」
「おいしい?」
ちょっと頬を赤くしたままこくこくと頷いて。
「ね、これ食べたらあっちで甘酒飲もう?お正月はね~神社にお参りにいって甘酒を飲まないと年が明けたって気がしないんだよね」
「はいはい、お付き合いします。もうホント降参」
「ん?」
「何でもありませーん」
END
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