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GS2若デジ

魔法 コンセプト:『理系の人』と『魔法使い』

 見上げた先、抜けるように晴れた青い空が広がっている。
「せんせぇ、すごいです!空!」
「はい見てますよ。そんなにはしゃいでたら転んじゃいますよ」
「はーい!大丈夫です!」
 踏みしめた砂が軋む感触、細かに色を変える冬の海が渦巻いて、頬を撫でるというより刺さるような海風が吹きつける。

 両手を広げて大はしゃぎで砂浜を駆ける後姿を眺めて目を細める。
「せんせぇ見て、飛行機!」
 背伸びして伸ばした人差し指の先、白い軌跡を描いて飛んでいく機体。
「空気が澄んでるから良く見えますね」
「はいっ」
 ファーつきコートの襟に埋もれながら微笑む顔が可愛らしくて思わず頬が緩む。

「ほら、おいで」
 広げた両手、白い息をついて転がるように飛び込んでくる体を抱きとめる。
 暖かい陽だまりのような優しい匂い、柔らかい髪が鼻先をくすぐって、コートに包まれた華奢な体に両腕を回す。
「そろそろ夕暮れですね」

 砂浜に腰を下ろし、後ろから抱えるように座った彼女がまた空を指差す。
「はい……あ、また飛行機」
「君は飛行機がとても好きなんですね」
「えへへ、昔読んだ本の影響かな」
「本?」
「夜間飛行っていう」
「先生も知ってます、サン=テグジュペリの著書ですね」
 
「はい、親に買ってもらった本で、今でも時々読み返すんです」
 腕の中、胸に寄りかかったまま。
「この本の頃は、まだ夜に飛行機を飛ばすことさえ命がけで、そんな中で郵便飛行の事業を開拓していく、そんな現場の最前線が見えてくるんですよ」 
 真っ直ぐに空を見上げたまま。
「でも今は夜中でも地球の裏側にでも飛んでいけて」
「……素敵ですね、とても」
「はいっ、次はもうちょっと先かな……またそんな風に開拓していくようになるのかも」
 
「え?」
 
「次は人が宇宙に飛ぶことさえ命がけだった頃がった……なんて話をおばあちゃんになった私がするんです、まだまだ先かな?」
 少しだけ、抱きかかえた腕に力を込めて。優しい匂いのする髪に顔をよせる。
「せんせぇ?」
「もうちょっとだけこうしててもいい?」
「はい……」
 
「そう、ささやかな夢、夢見がちな魔法のような、とても素敵な夢です。僕もそんな夢を見て居たかった」
「え?」
「君は本当に不思議です、実は魔法使いさんでしょう?ピンポンです」
「な、なんでですか」
「こうして君と話して過ごしているだけで、全て取り戻せる気がする、魔法です、本当に」

END
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